前のエントリーで、自動運転はひいてはカーシェアにつながり、それは自動車産業に破滅的な構造変化をもたらすだろうと書いた。
同じ趣旨のレポートが英国バークレイ銀行のアナリストにより提示されているので、内容的には繰り返しになるが参考に上げておこう。
曰く、将来自動運転が実現し通常家庭の車両が自動運転車になるだけで、家人の間で車を共有できるので車の複数保有が減少しデトロイトスリーの需要は40%近く減ることになるとしている。
さらにカーシェアになると1台の車が現在の9台分、最終的にカーシェアでかつ同じ方向の旅客を拾って運行する「Poolタイプ」になると1台で18台に匹敵するという。
自動運転に関しては、その将来出現するであろう新市場に対する希望的な見方がある(実際に株式市場では自動運転関連株、というのがすでに囃されている)が、実際はカーメーカーにとって極めて深刻な事態が起こりうるのだ。
このレポートにも、ロボットカーの時代にはカーメーカーは低コストメーカーが選ばれるということが書かれている。それは当然で、車はロボットカー事業者が選定するわけだからブランドだのニッチマーケットだのはもはや意味をなさない。
さらに伝統的なカーメーカーにとっての逆風は、今まで培ってきたノウハウが無価値になるということ。
どういうことかといえば、完全自動運転車にはドライバビリティが要らない。加減速、コーナリグは決められたロジックで行うからドライバビリティは商品としての評価対象外となる。電車の加速やコーナリングに乗客が関心を持たないのと同じだ。実際この部分はカーメーカーのテストドライバーとエンジン、サスペンション制御技術によるノウハウの塊で、新興メーカーが真似できない分野だった。
あとは衝突安全。これもボティ構造やエアバック等についてカーメーカーに多大なノウハウの蓄積があるが、自動運転車は原則事故を起こさない。ノウハウばかりではなく、衝突安全を考えなくて良くなれば車のコストは劇的に下がる。新興メーカーや、場合によっては日立のような運輸車両を作っているメーカーでも車が作れる様になる。これらの要素をすべて勘案すれば、自動運転車のハードウエアは付加できる価値が少なくなることから今まで以上に厳しいコスト競争に晒され、結果世界で生き残るのは数社ということになるかもしれない。
私は、ドイツ車メーカーはここまで読んで自動運転に参入し、今のうちに出来る限り先手を打とうとしているのだと思う。