ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

NOTTV撤退、デスマーチの終了

2015年11月30日 | モバイル・ウエアラブル
このブログでも何回も取り上げてきたNOTTV、やっと撤退を決断したようだ。始まる前から散々無理だと言われ、実際に大きな赤字を計上してきた事業としてはむしろ遅すぎる決定かもしれない。
似たような失敗例にモバHOがある。これらの普通に考えれば成立せず、おそらく中の人もそう思っていたであろうプロジェクトは何故止められないのか?

モバHOは企画時点では地デジの登場を予想できず、専用衛星を打ち上げてしまった時点で後戻りができなくなった。

しかしNOTTVはその失敗を知っていた筈なのになぜ同じような失敗をしたのか?
その裏には地デジ化に伴うアナログ電波空き地利用が絡んでいる。
地デジ化によるアナログ波停止にはかなりな世論の反対があり、総務省としては国民が納得し、かつ海外メディアや海外通信関連にその空き地を渡さずに済む方法として、携帯端末への放送や高度交通システム、災害対策と言った誰からも反対されない分野への割当を決めた。

携帯端末放送はその電波割当をドコモとアメリカのクアルコムと組んだKDDIが争ったが、結果ドコモが勝利した。国内企業への意図的な割当という批判もあったようだが、実際には2010年秋の決定時点でクアルコムは少なくとも北米でのMediaFLO事業撤退を決めていた。
最後の望みを日本市場にかけたという見方もできるが、私はむしろKDDIは勝ちに行かなかったのではないかと思う。
地デジというコンペティターがいない米国でもMediaFLOはうまく行かなかった訳で、事業が成立しない事はこの時点で明白だった。

一方で民放各社はこの帯域を海外メディア関係にはどうしても渡したくないという思いがあったと思う。実際NOTTVには民放各社が出資している。これは攻めではなく、守りの投資だろう。

いずれにしても国策絡みで始まり、また多くの関連企業からの出資を受けていることもあり誰もその新事業立上げに対して責任を取るリーダーがいなかった。また事情は明確なのでこの事業に失敗しても評価は下がらない。
成功の見込がない事はわかっていても「見込みがないからやめよう」とは言えないし、ドコモの収益を考えれば言う必要もない。

ドコモにとってはわかって引き受けた捨て金だったとも言えるが、その赤字は携帯料金で補填されている事をお忘れなく。