ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

自動運転に関するまとめ その6(最終)

2015年02月02日 | 自動運転
承前

6.完全自動運転実現後の世界

クルアがすべて自動運転となり,免許がなくてもだれでもいつでもどこにでも行ける。そして交通事故死がゼロになる。
その実現への道のりは遠いが、いずれそうした世界は来る。
その際には自動車産業を取り巻く環境はどうかわるのだろうか?

先に指摘したとおり,車の性能差がなくなると車という商品に対する考え方が変わるだろう。
走行性能は購買判断基準から外れる。また,Fun to Driving がなくなれば,商品に対する愛着だって薄れるだろう。
そして,車は使いたいときに玄関まで来てくれ,目的地で降りたら勝手に車庫に入ってくれるとなれば,車を所有するということにあまり意味がなくなってくる。

車が単なる移動手段ということになり,且つ車が玄関まで来てくれるなら,カーシェアリングで十分だと考えるのが普通だろう。

一人で移動する時と大人数で移動するときで違う大きさの車が使える。
長距離移動なら,寝台のような車も使える。
ちょっとお金を出せばファーストクラスのようなシートの車が来る。

世の中の車がすべてカーシェアになるとどうなるのか?

まず,一般ユーザーを対象とした自動車販売店がなくなり、販売員は不要となる。
事故ゼロの世界では,板金修理業もなくなる。
定期的な整備はカーシェア会社が行うことなるので,整備工場も淘汰される。
カーシェアの車をドレスアップすることはなくなるので,自動車用品産業もなくなる。
こうした、バリューチェーンと呼ばれるアフターマーケットはほとんど消滅する。

これによっておそらく相当数の雇用が失われることになる。
(もっとも、これが実現する頃にはその他の産業構造も激変しているだろう)

実はカーメーカーの収益は新車よりもアフターマーケットから多く得られている。
カーメーカーの収益源は新車販売だけ,それもカーシェア会社若しくは自治体へのフリート販売だけになり,利益率は当然悪くなる。
フリート客は趣味趣向で車を選ばない。コスト競争は非常に厳しくなる。
実際,現在でもタクシーやレンタカーといったフリートへの販売ではカーメーカーは殆ど儲かっていない。

ということは薄利多売しか生き残る道がないということになる。
製造販売だけに限って言えばカーメーカーは世界で数社しか生き残らない。

だから、アフターマーケットに変わる製造販売以外の収益源を確保するがが課題となる。
そういった意味では、どれだけオペレーションシステムにカーメーカーが関与できるかがポイントになるのだろう。
ある面ではスマホと似ている。アップルのようにハードとソフトを垂直統合しエコシステエムと築かなければ、製造業が市場のキャスティングボードを握る事はできない。アンドロイドを採用した他社は結局製造者以上のことはできず、大手以外は市場から出て行った。

人間のモビリティは殆どこのシステムに依存することになる。どこに行って何をするかを何処かの会社が一括して管理できるわけで、そこには当然ビジネスチャンスがあるし、その利益を獲得するためには自動運転のノウハウを早く積み上げて先駆するしかない。
大手カーメーカーが自動運転の研究を進める最終的なゴール、というか危機感はここにある。
Googleが開発した自動運転プラットフォームの採用では、結局のところ製造者で終わってしまうのだ。

以上


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