“それは純粋の日本ブドウで粒は大きく、色は薄紫色で全体に粉がふいている。その粒がまたきわめて大粒で一房一房がきっちりと生っていた。
口の中に入れるとトタンに口の中でとけてしまうその美味といったらたとえるものがない。“なんといっても甲州の日本ブドウが一番好物である。”
これは村岡花子のエッセーの一部ですが、「花子とアン」のオープニングのタイトルバックに出てくるあのブドウは、これだと思うんですね。
タイトルバックの前半はプリンスエドワード島、そして後半にこの日本のブドウが出てきます。村岡花子さんは、青春時代を甲府で過ごしていますが、薄紫のブドウにはさまざまの若い歳月の思い出がこもっていて、これを味わうとその当時の喜び!悲しみ!がまざまざとよみがえってくると言っているんですね。甲州ブドウは花子の青春そのものなんです。
このエッセーは1969年(昭和44年)に書かれたものですが、村岡花子さんが青春時代を過ごしたのは明治から大正にかけて、ブドウといったら甲州という時代だったのでしょう。
林真理子は28年前に「葡萄が目にしみる」という本をだしています。勝沼を舞台にした自身の甘酸っぱい青春時代を書いたものですが、青春小説の最高傑作などと言われています。この”目にしみた“ブドウもきっと甲州にちがいありません。Umeさんもこの甲州ブドウのある風景が大好きです。やっぱりumeさんにとっても葡萄は青春でしょうか。