続き


(写真後方、コロナ観測所)
登山靴に履き替え展望台から南に向かう、今までの喧騒がうその様に静寂な世界
凍てついた道の斜面は良く滑った
車道に出ると富士見岳の山腹を水平に巻けばコロナ観測所への道と肩の小屋への分岐だ
しかし、案内板が凍りついて判読できず私達は観測所方向に歩を進めてしまっていた
実はこの道、観測所で行き止まり
肩の小屋へは分岐を左に取らなければならなかったのだ


(振り返り見た畳平駐車場)

分岐まで引き返すのも面倒だったので肩の小屋を目指し
ハイマツの急斜面を遮二無二下る


肩の小屋も閉鎖されヒッソリしている
ここから、いよいよ登りとなり暫くはハイマツ帯の中を行くが
やがてハイマツも消えザレの斜面と変わった




風で雪は飛ばされているものの全てが凍り付き滑りやすい事この上なく
しかも急勾配ときているのでスピードは次第にダウン
振り返り振り返り一歩ごとに競り上がってくる来る穂高連峰を眺めながら
強風と戦い朝日岳と剣ヶ峰の分岐に出た
右下に権現池が神秘な藍を湛え、その彼方に真っ白な雪を頂いて
神々しく聳えている白山の姿もはっきり遠望できた
剣ヶ峰はもう目と鼻の先だ

(エビのシッポにがぶりつく)

(本宮神社)

(乗鞍神社)
小石の一つ一つにもしがみ付くエビのシッポに感激しながら終に剣ヶ峰に着いた
周囲は遮るものの無い360度の展望だ
本宮神社にリュックを預けそこで登頂祝いの乾杯をしていると
岡崎から来たと言う夫婦が雄大な裾を引く山を挿して
木曽の御嶽山である事を教えてくれた
体は細いが何処となく落ち着きがあり傍らで笑顔を絶やさない奥さん如何にも優しそう
暫く会話を交わし別れた後、雄さんは「いぶし銀の様な人だったな」と言った
この後、本宮神社と背中合わせに建つ乗鞍神社に移動し改めて展望に目を向けた




コロナ観測所や駐車場、売店が見えるのは艶消しだったが
さすが主峰・剣ヶ峰からの展望は素晴らしかった
真っ青な空の下に広がる北・南・中央アルプス群、富士山、白山と言った
日本の名山が四方八方に連なっているのだ
ここに居る限り乗鞍はやはり「鯛」の貫録十分の山である
何時の間にか雲海が崩れ雲間に一塊の街が覗いた
「あのオオきなマチは松本市ですか?」
ちょうどやって来た男性が「オオマチですよ」と洒落を・・・
そして私達に前に坐るとリュックからおもむろにワインを出しラッパ飲みした
聞いてみれば偶然にも伊勢崎市から来た同郷の人だった
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まさか登るつもりは無かった雄さんは一万尺の感動に
「来年は白山にしようか、立山にしようか」と鬼も笑う様な事を言っている
山頂を後にするには、あまりに素晴らし過ぎて腰が中々上がらないが
この後、滝を見に行く予定も入っている
山頂直下の肩の小屋を経由し融け始めた山道を足を滑らせながらも
満ちたりた気分で駆け下る あれほど喘いだ道もアッと言う間だった
斜面の大雪渓では若者たちがスキーを楽しんでいる
嘗て限られたアルピニストだけの山だった乗鞍も私を始め誰もが雲上散歩出来る山となり
街で擦違う様な軽装の男女までも、はしゃぎながら山頂を目指している
天気も下り坂、注意しても聞き入れそうもないヤンキーに
私達は苦笑して通り過ぎた
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昨夜、通った時には暗くて気付かなかったが林道周辺は紅葉も終わり
黄金色に煌いたであろう白樺の葉も悉く散り幹だけが午後の陽を浴びて
白く輝いているばかりだった
雲の流れは増々激しく雲の中に突入していく様な場面を繰り返し
三本滝レストハウスに着いたのは14時近くだっただろうか




レストハウスに車を停め滝まで0・9kの案内板を確認し進むと
僅かに聞こえていた沢音が次第に大きくなり木立の中に渓谷が見えてきた
吊り橋を渡り山道を少し行くと前方に落差45mの二段に落ちる滝が
白布を垂らした様に流れ落ちているのが見えた
その先の岩場を巻くと修験者の行場に相応しい霊場の雰囲気の中
今見た二段の滝と黄褐色の岩を流れる60mの滝、細い糸を垂らした様な滝
三本が一望される場所に出た それぞれが個性豊かに、そして白い飛沫となって
流れる豊かな水の動きは優美で、さすが名瀑百選に選ばれるだけの価値ある滝だった

再び車を走らせて鈴蘭橋近くの駐車場から善五郎滝に向った
白樺林に入ると早くも水音が聞こえ滝が近い事を知らせている
善五郎の滝は白いレースのカーテンを掛けた様な落差15m程の滝であるが
滝そのものよりも包み込むような針葉樹と紅葉の素晴らしさに目を奪われた気がする
脇の説明板には釣ったイワナに滝壺へ引き込まれた善五郎が命からがら
逃げ帰ったと言う様な事が書いてあった
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紅葉も麓まで降りて来た様で民宿や土産屋が並ぶ沿道沿いが丁度ピークを迎えていた
その中に建つ喫茶店で
はからずも冬山の一端を味わわせて貰った満足をコーヒーと共に味わった

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