まりはなの、のんきでありたい日々

地方都市で、清貧生活  

迷宮

2003年10月07日 22時17分00秒 | 日々雑感
やっと結婚式に着て行く服が決まった。

一週間くらい前に上下は決まっていたのだけど、中に着るものが決まらなくて。

普段、自分の店でしか洋服は買わない。

でも、こういうときに着る「いい服」って、うちの店にはないのだな。

で、また丸井に行ってつらつら眺めていると店員さんが声をかけてきた。

このつかみが絶妙で、普通「よろしかったら、ご試着下さい」とか

「何かお探しですか」とか「鏡はこちらです」とかでしょ。

それが、わたしがキャミソールを手に取った瞬間、

「どちらが前だか後ろだか、ですよね~」とにこやかに話しかけてきたのだ。

別にそう思って見ていたわけではないのだが、言われてみればそんなデザインだ。

思わず「どちらが前でしょうね」と答えるとテテッとやってきて

この、「テテッと」はポイント高い。

わたしはのろのろ歩く人が嫌いだ。

落ち着いてスタスタ歩くのも良いけれど、お客さんのもとに行くときは小走り、これ大事。

美人というより、可愛い感じのその人は「こちらが前ですね」と笑ってみせた。

いい笑顔だ。

結婚式のインナーを探していると伝えると

「どんなお洋服なんですか」

「上下とも黒で上はフリフリのボレロ、下はパンツです」

彼女はハッと閃いた顔になり「ちょっとお待ち下さい」と言うや否や

奥から小走りで、まだ袋に入ったままの商品を持ってきた。

中から出てきたのは黒い半袖。

袖の部分がレースになっていて、いかにもわたし好み。

いい感じに紫の花柄が織り込まれていてオリエンタルな感じもわたし好み。

手触りの良い生地は、アセテート。

いいなと思ったが、設定していた値段より少し高い。

うーん。

彼女はわたしが気に入ったのを察知し、嬉々としてアクセサリーなど合わせ始める。

それも可愛い。

ただ、着た感じがよく分からないなと考えていると

「何か気にかかることがございますか」と言う。

気に入った様子なのに悩んでいるのはなぜかと遠まわしに尋ねているのだ。

値段のことはちょっと伏せて、着た感じがちょっとどうかなと言ってみた。

かぶりものだし試着はできないと思っていたのだ。

しかし彼女は「気付かなくてすみませんでした。どうぞ、ご試着下さい」

不織布の使い捨ての袋が手渡された。

ははあ、これは便利。うちの店でもこういうの使えばいいんだよな。

しょっちゅう、ファンデーション付けられて騒いでるんだから。

で、着てみるとまあまあいい感じだった。

しかし・・・

まだ迷うわたしに店員さんが

「他になにか気にかかることが?」

うーん、言いづらいが言ってしまおう。

「他の店にもいいものがあるかなって。ごめんなさいね」

「もっともでございます。どうぞ、よそもごらん下さいませ」

先ほど取り置きは出来ないと彼女は言ったのだが

「一時間ほど取り置きさせて頂きます。ただ、ご不要なときは一言お声をかけて下さいませ」

いってらっしゃいませと見送られてとりあえずその店を離れた。

また別の店に入り、店員さんとあれこれ。

ああ、だんだん疲れてきた。

わたしはええかっこしいなので、誰かと一緒の時には優柔不断のそぶりも見せないが

一人だとひどく迷うのだ。

丸井の近くには駅ビルもあり、そこにも店がいっぱいある。

わたしは丸井を出て駅ビルに向かった。

ふと入った店で、なんだかいい感じのノースリーブを見つけた。

胸元にきれいなドレープが寄っていて袖ぐりに細かなレース、素材はベルベット風。

裾にもオーガンジーのようなレース、ありそうでないデザイン。

「着てご覧になりますか?」

あ、これも着られるんだ。

この店員さんは、ちょっとくだけた感じだが笑顔はいい。

どんなに商品が気に入っても店員が気に入らなかったら絶対に買わない。

反対に、どうしようかなと思っているときに感じよく接客されると買っちゃったりする。

着てみるとすごくいい感じ。

即決。

ああ、ごめん、さっきの店員さん。

とりあえず戻ってキャンセルしに行くと、休憩中で、さっきの彼女はいなかった。

店長らしき人に用件を伝え、ちょっとホッとしたけどなんだか悪い気もして。

あのネックレスだけでも買おうかな。

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他愛もない話

2003年10月06日 21時07分00秒 | 日々雑感
わたしより早く帰るKさんが、帰り際に

「薬局に寄ってまた戻って買い物するから、なんでこんな時間にいるのって・・・」

言いかけたところを遮り、

「分かった、『なんでまだいるの!』って驚けばいいのね」

そうそう、と笑うKさん。

長い付き合いなので、ツーと言えばカーである。

わたしが帰る時間になり、店から出ると、もしやと思ってはいたが

本当にKさんがまだ買い物をしていた。

後ろからそっと近付き、

「どうしたの、こんな時間に!」

振り向いたKさんと二人で大笑い。

書いちまうと、ただこれだけの話なんだけど。

この、のん気なおかしさ伝わったかな。
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のどか

2003年10月05日 20時48分00秒 | 日々雑感
スーパーでレジに並ぶと、わたしの前にビニール袋いっぱいのさんまを持った人がいた。

ふ~ん、今年は豊漁というではないか。安いからか大家族だからか結構な買いっぷりだ。

わたしもさんまは好きである。

焼いてよし、甘露煮にしてよし、フライも意外にうまい。

そんなことを考えていると、レジ係の人がさんまの客に

「何匹ですか?」と尋ねた。

えっ、自己申告?

「十匹よ」

やっぱり自己申告。

確かに、数えようがないわな。
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悪寒

2003年10月04日 22時08分00秒 | 日々雑感
前に、わたしには人を見る目があると自慢げに書いたが

それは洞察力のなせるわざというより「勘」のようなものではないかと思えるときがある。

ある休みの日に駅の近くで信号待ちをしていた。

平日の昼間だが、大勢の人が同じ場所で立ち止まっていた。

間に数人をはさんで女子高生がひとり立っていた。

その姿を見たときなんともいえない嫌な気分になった。

その女子高生の全身から、だらしなく堕落した気配が漂っていた。

見ればスカートの丈こそ今風に短いが、髪も黒いし髪形だって普通である。

濃い化粧をしているわけでもないし口汚い言葉で話しているわけでもない。

もっとひどい様子をした女の子なんていくらでもいる。

すさんでいるというのとも違う、何かこう言葉では説明できないような嫌悪感を

なぜか彼女から感じた。

もうすぐ信号が青に変わるというとき、彼女がいきなりその場に唾を吐いた。

普通、女の子は道路で唾を吐いたりしない。

まして衆人環視の前で。

いきがって吐いているのとも違う、ただれた感じの吐き方だった。

ああ、やっぱりこの子はこういう子だったんだとめまいさえ覚えたわたしは

もう彼女のほうを向けなかった。

怖くて。



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思いとどまるらせるもの

2003年10月02日 22時12分00秒 | 日々雑感
「因果応報」とか「因果はめぐる風車」とか「情けは人のためならず」とか

「天につば吐けば自分にかかる」とか、いいにしろ悪いにしろ(悪い方が多いか)

自分のしたことが自分にはね返る・・・という言葉は多い。

その中でわたしが一番強烈だと思うのは「人を呪わば穴ふたつ」という言葉だ。

穴ふたつ・・・ひとつは相手を陥れる穴。もうひとつは自分が落ちる穴。

呪った相手と同じような目に遭うという考え方もあるし

人を呪ってひどい目に遭わせた以上、一生その罪悪感から逃れられないともいえるし。

性格のいい人はそんなこと夢にも思わないかもしれないが

誰かを呪ってやりたいとか不幸にしてやりたいとか、

そういう鬼にも蛇にもなるときが、人にはある。

さっき読み終えた小説の登場人物も、人に裏切られ自暴自棄になり

井戸に石見銀山を入れることを思いつく。(時代小説ね)

しかし、ふと目にしたびーどろの青い色に心が安らぎ、はっと我にかえる。

鬼になった人を我にかえらせる何か、思いとどまらせる何かがあれば

誰も穴に落ちないで済むのだ。

きれいな音楽や気持ちのいい風に吹かれること、花や空を見ること。

きっと、誰にでも「青いびーどろ」はあるのだから。

※蛇足ですが仕事中、散らかった倉庫でイライラしながら探し物をしていました。

すると箱の中から青いビー玉がふたつ出てきました。売り物が紛れ込んだのでしょう。

あ、きれい・・・意外な見つけ物にふっと肩の力が抜けました。

ちょっと出来すぎた話ですが「なるほど、青いびーどろ効果だ」と納得しました。


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