Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『夜』

2016-03-08 22:11:42 | 読書。
読書。
『夜』 橋本治
を読んだ。

女の側からの視点で、
男の背中を描いた短篇集。

女性の側の心理がわからなくては、
この小説群は書けないです。
そして、愛憎が絡んでいるから、
なお、難しい表現なのでは?と思ってしまいますが、
著者の橋本さんはそんな苦労を一言もあとがきで発していない。

やっぱりこの小説を書いた50代の半ばになって、
わかることなのか、それとももっと若いころから
「わかっていた」ことなのか。
知りたいのはそのあたりでしたが、ようわかりまへん。
橋本さんは若い頃に『恋愛論』という本も書かれていて、
ぼくの本棚ににもたぶん復刻版なのかな、
それが積読になっています。
それを読めば、この謎は解き明かされるような気がする。
つまり、若いころからもう女性の心理は喝破していた、という。

本書の最後の章は、なんとゲイ話。
うげえと思って、最初は気色悪いな、
なんて感じて読んだのですが、
読んでいくうちにちゃんと読めていく。
一度休止して再度読み返すと、またうげえと思うのですが、
また読み進めるとちゃんと読める。
不思議なもので、
ぼくのなかにも同性愛気質みたいなものがあるんでしょうね。
共感まではいきませんでしたが、想像はできてしまう。

三人称で進んでいきますが、
それでも心理描写は見事で、
それでこそ、浮き彫りになった男の後ろ姿が生きてくる。
おもしろいものだなあと思った小説でした。


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