Fish On The Boat

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『森と日本人の1500年』

2018-11-21 01:50:44 | 読書。
読書。
『森と日本人の1500年』 田中淳夫
を読んだ。

その土地に住む人々や文化は、風土によって作られる、
という考え方って一般的にあるものだと思うのですが、
では、日本人とともにあった自然、そのうち森というものは、
いったいどういう変遷を遂げてきたのか、
そこを見ていくような本です。

実は、日本の森林の99%は人によって手を加えられたものであって、
自然そのままの自然林ではないそうです。

古くから木材や燃料として木は用いられ伐られてきました。
そのため、大和政権のころから、
植樹などの森林の手入れについての記述が古文書に残っているそうです。
さらに、近代に入ると製紙業も加わりますし、
産業革命によって木材の需要は軒並み上昇していく。
よって、明治期の山々にははげ山も多かったとか。
そこで政府はドイツから学んだ林学を政策に取り入れ、
計画的な林業を本格的におこなうようになったとか。
しかし、時代は下り、太平洋戦争によってまた林業は荒れ、
戦後また立てなおされはするものの、
現代に続いてきた日本の林業は、
かつての欧州のやり方のように、
力によって自然を支配するという思想を
今でもその根本の思想として持っているようで、
あまりうまくいっていないようです。
逆に、欧州では自然に逆らわないように、
自然と共存するような形での林業が主流になってきているとか。
それは、ずっと昔の日本の林業の精神だったものでもあるのだそう。

森林の手入れについても、
間伐、つまり間引いたり、
枝払いをすることによって、
他の木々によりよく陽が当たるようになり、
成長を促し、森林自体が健康になっていくことや、
一斉林といって同じ種類の木をその土地すべてに植えず、
針葉樹や広葉樹をバランスよく植えて多様性を保つことで、
病気や害虫などで森林丸ごとが一気にだめになるリスクを抑えることができることなど、
森林の分野のみならず、他の分野にも応用できそうな話になっていました。

最後の方では、
森林浴、森林セラピーといった、
科学的には立証されてはいませんが、
ヒーリング的な森林の利用の仕方についての記述があり、
また、食育ならぬ木育というものも
最近興っている分野だとして紹介されていたりと、
230ページそこらの新書でも広く知れますし、
ところどころはけっこう深い話もあり、
この分野の入門書としては、
読み応えがあるものなんじゃないかなあと思いました。

最近では漁業のほうで、
魚が乱獲によって減っているからなんとかしないと、
という意見が出ているようですが、
日本の林業でも同じように考えていくべきことが、
本書では示唆されていました。


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