Fish On The Boat

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『人を見捨てない国、スウェーデン』

2021-12-18 19:42:54 | 読書。
読書。
『人を見捨てない国、スウェーデン』 三瓶恵子
を読んだ。

幸福度調査でいつも上位にランクインする北欧の国々。スウェーデンはそんな国々のなかでも、ひと昔もふた昔も前からその高福祉社会のありかたが日本でも注目されている国です。本書は、スウェーデン在住30年以上(本書執筆時の2012年当時)の著者による、子どもたちの生活を中心にスウェーデンを紹介してくれる本です。

スウェーデンはいろいろとタダなことが多いそう。それだけ多くの税金が取られてはいるのですが、国や地方の税金の使い道がはっきりしており、そのことにスウェーデン人たちが納得しているとのこと。たとえば、大学に至るまで学費や入学金がかからず、さらに返済不要な奨学金や教育手当がある。医療の分野でも日本よりもお金がかからない(しかしながらちゃんとした医師に診てもらうまで長い時間がかかりはします)。

障害者への福祉も手厚く、障害者手当は月額19万円、28万円、36万4千円、など大きく分けて3段階あるそうです。これ、日本ですと障害者一級の年金で年額97万4,125円ですから、月額でいうと約8万1千円です。だいぶ違うのがお分かり頂けると思います。さらに障害者が働くための仕組みもしっかりしているということです(おもに派遣社員としてはじまり、うまくいくと派遣先で採用される)。

これだけ福祉に手厚くとも、スウェーデンは自立・自律の気風の国なのでそれ相応の厳しさはあり、就職についていえば、若いうちはスキルが足りなくて思った職につけないことが多いのだと。すこしずつ短期の仕事をこなしつつ(スウェーデンにアルバイトはない)、キャリアアップしていくものだそう。このことについては、多くの人が同じ条件なので、少しずつ積み重ねていく向上のやりがいみたいなものがあるかもしれません。つまりは、頑張ろうとする気持ちになりやすいかもしれないです。

また、入試なんてどうなってるの? と好奇心が働く方もいるかと思いますが、小学校から大学まで入試はなく内申点で進路の合否は決まります。授業内容や選択科目も、様々な職業について生きていけることを第一にプログラムが組まれているみたいです。

本書を読むことで人を大事にしているがゆえの強い国の有り様がみてとれるのでした。こういった仕組みの国は、長く続いていく種類の強さがあると思います。人が自立していてこその社会だから厳しさはあるだろうけれど、生きている実感に満ちていそう。日本のような一発勝負の社会ではないので、学び直しはふつうだし雇用流動性も高い。

あとは、ハラスメントやいじめだとかの人間関係面はどうなんだろうと思いながら読み進めると、サポートの仕組みもあるみたいでした。自分から働きかけねばならないけど、行動にレスポンスがきちんとあるようです。それと、親の体罰を禁止する法律がありながらも、親などからの虐待はそれなりにあることも隠さず書かれていました。幸福な国といえど、すべてを克服しうるシステムではないということです。

そんなところですが、他所の国の仕組みや気質などを知るのはおもしろいですね。日本に居続けると固定観念に縛られやすくなりますから、こういったのもありなんだな、と知れるのはありがたかったです。


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