Fish On The Boat

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精神疾患を地域で看るまでのその一歩は。

2023-05-03 11:32:09 | 考えの切れ端
精神疾患を地域で看る、というやり方は、精神疾患は自己責任や家庭の責任というよりも、どうやら社会の在り方が生むものだ、という気づきが、そのことについて市民が思索や議論をしてみたその果てに得られたから、というのはあるのではないかなあと思うんです。社会の在り方にはもちろん「秩序による排除作用」も含まれます。秩序って、それに沿わないものを矯正したり排除したりして保とうとする性質がありますから。

ヨーロッパでは精神疾患を地域で看るといいますし、日本の精神医療は何十年も遅れているといいますし、そのあたりの違いは、市民の間で、社会の在り方や権力、秩序に対する思索・議論がどれだけなされたか、という部分での民度がものを言っているように思います。フランスでは難しい現代思想の本が、思いのほか売れるなどし、そこがフランスという国のすごいところだ、と『現代思想入門』に書いてあったのを思い出します。20世紀の哲学者、フーコーなんかは、権力についていろいろ考えていて、それを知っているヨーロッパの人たちは市民階級にも比較的多いのかもしれない。

民度って言っても、いろんな面、いろんな軸でのものがありますよね。たとえば日本人のここの民度は世界的にもすごく高いのだけど、この部分の民度は最低だ、みたいに。国民性って言っちゃったらそれで終わってしまいそうだけれど、それで済まない種類の物事もあるんじゃないだろうか。それは権力についてがそうだろうし、落ち着いた態度で注意深くなされる洞察や思索、議論は、ゆっくりとであったとしてもなされたほうがいいでしょう。

そういった話をしても恥ずかしくない雰囲気が出来上がるまでには、けっこうな時間がかかるかもしれません。それでも、志ある人たちは、一歩一歩、やっていくんだと思います。僕もそうありたいです。
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