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『行動分析学入門』

2015-04-26 15:32:51 | 読書。
読書。
『行動分析学入門』 杉山尚子
を読んだ。

心理学の一種である「行動分析学」の入門書。
専門用語もでてきますが、なかなかどうして読みやすいです。

どういった種類の心理学かというと、
本書から例を出せば、
冬場にこたつで朝食を取る家族のなかで、
高校生の男の子が左手をこたつにいれたまま、
ごはんを食べているというのがあります。
それで両親は男の子を「行儀が悪い」「だらしがない」のを理由にして、
両手で食べるように叱るのですが、
実は「行儀が悪い」「だらしがない」というのは理由と考えるべきではなく、
実際に理由でもないというのが、行動分析学の捉え方。
本当の理由は、男の子の席はドアの近くで、他の家族の席よりも2℃も室温が低く、
寒いのが理由で左手をこたつに入れたままごはんを食べるようになっている。
実験では、この弟の近くにストーブをもってきてやると、
ちゃんと左手をこたつから出してごはんを食べるようになっています。

このように、「こたつに左手をいれたままごはんを食べる」という行動の、
その随伴性を考えていくのが行動分析学です。
本書の大事なキーワードである行動随伴性とは、
<行動の原因を分析する枠組みで、行動とその直後の状況の変化との関係をさす>
とされています。

よって、さっきの例のように、
「行儀が悪い」「だらしがない」だとか、
「意志が弱い」「やる気がない」「欲求不満」
などの理由づけは本当の意味ではなくて、
それは行動にラベルを貼ったにすぎない、となる。
タバコをやめられないのは意志が弱いからだ、
と、心というものに原因を持たせるのは間違いだということ。
ただ行動にラベルを貼ったにすぎないものを、原因としてとらえるのが
不幸の始まりなんですね。

____

「意志」や「やる気」や「性格」は行動に対してはられたラベルであり、
実体はそれが指し示す行動と同じであるから、
これらが行動を説明する原因ではないのである。
ラベルを使えば、いちいち実体である具体的な行動を言及せずに、
ある程度の情報を伝えることができるし、便利な場合も少なくないから、
そのこと自体は問題ではない。
しかし、それを行動の原因と考えてしまうことには大いに問題がある。

ラベリングの危険性はこれ以外にもまだある。
行動にラベルをはる時、多くの場合、人は無意識のうちに
「こころ」を想定し、その「こころ」が問題行動を引き起こしている
と考えてしまう
____

と引用しましたが、そういうことになります。
そして、ラベルを貼ってそれを原因だとしてしまい、
非難するというのが問題なんですよね。
そんな個人攻撃の罠にはまらないための新しい見方を持とうというのも、
本書のねらいのひとつでした。

と、簡単な感想ですが、すごく面白かったです。
おすすめ。


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