読書。
『その日のまえに』 重松清
を読んだ。
主に、「死」というものを眼前にぶらさげられた人たちがでてくるお話。
連作短編集という形式です。
死期が迫ったひとたちの悲しみや絶望、無念さというものもありますが、
そうしたひとたちの家族なり友達なりといった周囲の人の心理、
悲しみのほかにも、思いやりも見られるし、死を前にした本人よりも
戸惑いを感じさせられるところがある。
死にざまにもよるのでしょうけれど、新聞のお悔やみ欄に、飾り気なく
載せられる名前と住所と年齢と葬儀の日程などがありますよね。
そういうのは事務的で無味乾燥なものですが、
この本を読んだ後ですと、亡くなった人の周囲も大変だったんだろうなぁ
と感じさせられます。
この本では若くして死期を考えなければならなくなる人たちがでてきます。
そうなると、余計に、老いた人がそうではないとは言いませんが、
まだ生々しい、青い「生」が摘まれるという喪失感、
それに先だった胸をえぐる悲しみ、そんなことを抱えて
非日常になった生活でちょっと成長する子供。
そんなようなことが、無理なく描かれています。
まず不幸ってものをドーンと前面にだして、読者の一番目につくところに
掲げてしまってからお話がはじまるようなところがあります。
なので、もはやフィクションフィクションした記述だと、
物語がしらけてしまうんだと思われます。
そこを重松さんは読んでいて痛いところは痛いまま、書き連ねています。
ミステリーとか戦争映画だとかに出てくる死とは
比べ物にならない死がこの本にはあります。
おどろおどろしいとか、血なまぐさいとかそういうことではありません。
いや、普通のドラマ映画の死よりも、リアルな死がそこにあるかもしれません。
作者が丹念に想像したか経験したかによって、登場人物の死の当事者であれ
周囲のものであれ、死を前にした葛藤や苦悩などが細かく描写されています。
たとえば、母子家庭の話。
自分の母が健康診断の再検査を受けることになったという、さりげない
一言を聞いたチャラチャラした男子高生が、勇気がなくていろいろ母親に訊けなくて、
想像をふくらませたり、「家庭の医学書」を調べてみたりして不安を募らせていく。
母親が重い病気で、もしかすると自分の前からいなくなるかもしれないという不安。
そういった内面の描写なんかに、よく書けるもんだなぁ、という感想を持ちました。
あまり書くとネタバレになりますが、
重いといえば重い内容の小説ですが、面白くないことはないです。
途中、「またこんな話か」とため息が漏れそうにもなりますが、
最後の3連作、これはひとまとまりの同じ話なのですが、
そこまで行きつくと、辛い話でも、それほどストレスを感じない読書体勢に
なっていると思います。それは、もうすぐこの本も終わるぞという、ほっとした
気持ちによるのかもしれませんが…。
休日を鼻歌まじりに楽しみたいという方にはおすすめできない本です。
日常の、普段は見ないけど確実にある暗い運命、それに見舞われた
人の話なので、明るい部分はあっても、やっぱり暗い雰囲気というか、
そこはかとない悲しみが小説全体に通奏低音のように流れています。
そういったものを正面から見据えてやるぞという心構えのあるかたは
読んでみるといいかもしれません。
こう、ね、さびしい冬なんかにはよく合う話だとは思います。
僕は読み終わって、夢にもちょっと影響がでたくらいなのですが、
そんなイヤな夢でもなかったです。
たまには胸を締め付けられそうな読書体験もいいのかもしれないですねぇ。
『その日のまえに』 重松清
を読んだ。
主に、「死」というものを眼前にぶらさげられた人たちがでてくるお話。
連作短編集という形式です。
死期が迫ったひとたちの悲しみや絶望、無念さというものもありますが、
そうしたひとたちの家族なり友達なりといった周囲の人の心理、
悲しみのほかにも、思いやりも見られるし、死を前にした本人よりも
戸惑いを感じさせられるところがある。
死にざまにもよるのでしょうけれど、新聞のお悔やみ欄に、飾り気なく
載せられる名前と住所と年齢と葬儀の日程などがありますよね。
そういうのは事務的で無味乾燥なものですが、
この本を読んだ後ですと、亡くなった人の周囲も大変だったんだろうなぁ
と感じさせられます。
この本では若くして死期を考えなければならなくなる人たちがでてきます。
そうなると、余計に、老いた人がそうではないとは言いませんが、
まだ生々しい、青い「生」が摘まれるという喪失感、
それに先だった胸をえぐる悲しみ、そんなことを抱えて
非日常になった生活でちょっと成長する子供。
そんなようなことが、無理なく描かれています。
まず不幸ってものをドーンと前面にだして、読者の一番目につくところに
掲げてしまってからお話がはじまるようなところがあります。
なので、もはやフィクションフィクションした記述だと、
物語がしらけてしまうんだと思われます。
そこを重松さんは読んでいて痛いところは痛いまま、書き連ねています。
ミステリーとか戦争映画だとかに出てくる死とは
比べ物にならない死がこの本にはあります。
おどろおどろしいとか、血なまぐさいとかそういうことではありません。
いや、普通のドラマ映画の死よりも、リアルな死がそこにあるかもしれません。
作者が丹念に想像したか経験したかによって、登場人物の死の当事者であれ
周囲のものであれ、死を前にした葛藤や苦悩などが細かく描写されています。
たとえば、母子家庭の話。
自分の母が健康診断の再検査を受けることになったという、さりげない
一言を聞いたチャラチャラした男子高生が、勇気がなくていろいろ母親に訊けなくて、
想像をふくらませたり、「家庭の医学書」を調べてみたりして不安を募らせていく。
母親が重い病気で、もしかすると自分の前からいなくなるかもしれないという不安。
そういった内面の描写なんかに、よく書けるもんだなぁ、という感想を持ちました。
あまり書くとネタバレになりますが、
重いといえば重い内容の小説ですが、面白くないことはないです。
途中、「またこんな話か」とため息が漏れそうにもなりますが、
最後の3連作、これはひとまとまりの同じ話なのですが、
そこまで行きつくと、辛い話でも、それほどストレスを感じない読書体勢に
なっていると思います。それは、もうすぐこの本も終わるぞという、ほっとした
気持ちによるのかもしれませんが…。
休日を鼻歌まじりに楽しみたいという方にはおすすめできない本です。
日常の、普段は見ないけど確実にある暗い運命、それに見舞われた
人の話なので、明るい部分はあっても、やっぱり暗い雰囲気というか、
そこはかとない悲しみが小説全体に通奏低音のように流れています。
そういったものを正面から見据えてやるぞという心構えのあるかたは
読んでみるといいかもしれません。
こう、ね、さびしい冬なんかにはよく合う話だとは思います。
僕は読み終わって、夢にもちょっと影響がでたくらいなのですが、
そんなイヤな夢でもなかったです。
たまには胸を締め付けられそうな読書体験もいいのかもしれないですねぇ。
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