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『大震災後の社会学』

2013-11-07 23:18:07 | 読書。
読書。
『大震災後の社会学』 遠藤薫:編著
を読んだ。

2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災。
そこから見えた、現代日本の社会システムの有り様、
被災直後の被災地などの様子から考えること、
そういったことを論じた本ですが、
いくらか、象牙の塔的な、大学の研究室に篭って書きました的な、
思考や論理や理論などの頭でっかちさが気になりもする本でした。

というのも、この本よりも先に、同じようなテーマの本である、
東浩紀:編『思想地図β vol.2』を読んでいたからでした。
『思想地図β vol.2』のほうが、実際の被災地の状況にこまかく、
ソーシャルメディア空間の出来事にもくわしく、
それらからのフィードバックは、現場主義的なスタンスを基礎としていて、
現実に見合っている、論考集というよりはルポルタージュ的性格の強めの本でした。

それが、今回の『大震災後の社会学』だと、
一人の頭を絞って、なんとか絞り出したものでできている論考集といった性格が強いです。
といったって、データや取材を元にしていないわけではないですし、
役に立たないことを述べている本でもない。
ようは、読者の好みの面も関係するかもしれない。
『思想地図β vol.2』が対象に対して直截的な性格をしているとすると、
本書は、対象から抽出して加工し、学問として扱える形に
一般化するような性格をしているように読めました。
時間がある人や興味のある人は、あわせて読むといいですが、
震災被害の深みに触れる意味では、『思想地図β vol.2』のほうが
読むべき本かなと思います。

『大震災後の社会学』、本書は7つの章と序章、最後の章の9つで構成されています。
世界から見た東日本震災というテーマもあれば、
震災で浮き彫りになった日本の社会システムの脆弱性もありますし、
ボランティア活動に的を絞ったものもあれば、
防災システムの在り方を論じたものもあります。
そういう意味では、多角的なのですが、
視点が施政者の側に立っているような書き方なのです。
筆者たちが若い人ばかりなので、そうなったのかもしれませんが、
チーフの遠藤さんが書いた序章からして少し鼻息の荒いトーンに
読めますので、そこらへんのコンセプトがもうそうだったのかなぁと
考えたりもしました。

もう少し、自分の足で稼ぐような、
行動で得た情報が満載の本だと読むのがはかどったかもしれないです。
学問的に震災を分析して考えていきたい人は勉強になるでしょう。
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