2008年6月11日掲載)
前号までのあらすじ
空飛ぶジュータンは思うように動いてはくれなかった、迎えにきた男は何やら呪文をとなえ始めた。
「・・・、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無・・・」
「雑念があるとうまく動いてくれないようなのです、大先生。」
「わかりました。とにかく早くお城へ・・・」
・・・・・・・・・
こうして何とか二人はお城へたどりついた。
お城では・・・・。
何やら宴会が始まっている様子。花火が上がったり、ファンファーレの音楽が聞こえてきたり、着飾った人々がお城を出入りしていた。
「大王様にお目にかかりましょう」と男が言った。
「そうですね」大先生が応えた。
今度はジュータンは思うように動くらしい。ふわふわとお城の付近を舞っていた。
「あそこです、行きましょう。」
ジュータンは大王様のそばまで近づいた。
「あ~、だれぢゃ」
「私でございます」
「大先生か、良く参ったな」
「大王様にはごきげんうるわしく・・・」
「あ~、よいよい。そのような他人行儀な。苦しゅうないぞ」
「ははっ」
「誰か、酒を、酒をもて。大先生、久しぶりぢゃ、ゆるりとするがよい」
「おそれながら、私はお酒をいただきに参ったのではございません」
「野暮なことは申すな。遠慮は要らぬぞ、今宵は余の区切りになる日なのぢゃから・・・」
「と申しますと」
「そちも分かっておろう。余ももう歳でなぁ。そろそろ、大王という稼業を辞め、残りの人生を余のためにのんびりと暮らそうと思うてなぁ・・・」
「ところで、余のことは存じておろうのう」
大先生は、この大王が治める国の王は満60歳で退位しなければならない事を知っていた。
(つづく)