2月19日 キャッチ!
2年半前に180億ドル(1兆8,500億円)の負債抱えて破たんしたアメリカ デトロイト市。
財政を立て直すために予算が大幅に削減され
公共サービスにも大きな支障が出ている。
その1つが公立学校である。
学校の運営予算は財政破たんによりそれまでの3分の2以下に減らされた。
その影響で学校の建物は老朽化したまま放置され
慢性的な教材不足に陥っている。
こうしたなか劣悪な環境に抗議するため
1月 教師たちが集団で病欠するストを決行。
80以上の学校が休校になった。
子どもたちの立ち入りが禁止されているデトロイトの学校の校庭。
(スクールカウンセラー ラキア・ウィルソンさん)
「蒸気が吹きだしているんです。
正体はわかりません。
とても危険です。
そのせいで校庭の温度が43度にもなるんです。」
ここ2年間 駐車場の地下から下水の蒸気や液体が漏れ
数メートル離れたパイプからも噴出している。
「体育館の中はまるでホラー映画のようです。
床はグラグラで何か黒いものに覆われているんです。
黒カビだと言われました。
実際市の調査官もカビだといっています。」
建物の問題は何年も前からあったという。
市の調査官からは「条例違反だ」と指摘された。
(保健師 インディア・ブリンベリーさん)
「鼻血が出る人がたくさんいます。
嘔吐したり腹痛や頭痛を感じる人も毎日います。」
労働環境に抗議する教師の病欠ストで1月に80以上の学校が休校したことで
デトロイトの公立学校の建物の問題が注目されるようになった。
直後に市長がほぼ全ての学校の調査を命令した。
調査官が訪れた3つの高校で
カビやネズミ、虫の発生など30の規則違反が見つかった。
ボナーさんはデトロイトの技術学校で教えている。
(技術学校 教師 クリスタル・ボナーさん)
「設備が十分に備わっていないのに技術を教える学校だなんて言えません。
コンピューターは古くて時代遅れのものしかない。
授業に使う電子黒板がある教室もわずかしかない。」
(高校生 ルーカス・ビールさん)
「数学の教科書が足りません。
途中のページが無くなっている教科書もあります。
なので僕たちはちゃんとページがある教科書を探して写真に撮っています。」
別の高校の3年生カーソンさんは先生を応援するため生徒たちが企画したデモに参加した。
カーソンさんは
学校の設備が足りないとやる気が失われる、と話す。
(高校生 アシュレー・カーソンさん)
「見捨てられている気分です。
自分たちには価値がないって思わされます。
いま置かれている状況ではそう思わざるを得ません。」
ボナーさんは教師を続けているが
辞めた教師もたくさんいる。
“病欠スト”のあとデトロイト市は
もう同様のストを行わないよう訴えた。
(デトロイト市 学校担当 ズドロドウスキ広報部長)
「先生方の不満は理解しています。
私たちも同じ気持ちなのです。
でも一番重要なのは授業をすることです。
88もの学校が休校になるなんて子どもたちのためになりません。」
教員組合は
デトロイト市が必要最低限の教育設備を供給せず
適切なメンテナンスを行っていないと訴えた。
市はベストを尽くしているという。
(デトロイト市 学校担当 ズドロドウスキ広報部長)
「命や安全にかかわる問題にはベストをつくしています。
ただ屋根をかけかえるとか大きな事をする予算は無いんです。」
ビールさんは下級生のために改善を願っている。
でも自分の在学中はあきらめている。
(高校生 ルーカス・ビールさん)
「僕はもうすぐ卒業です。
卒業までに必要なことの半分も身に付けられないでしょう。
設備が整ってないんですから。」
2月18日 キャッチ!
中国の遼寧省 中朝国境地域。
中国は約1,300㎞にわたって北朝鮮と国境を接している。
冬になれば凍結した川を渡って北朝鮮から人が行き来できるほどの川幅である。
川沿いには越境を防ぐための鉄条網が張り巡らされている。
この数年の間にも次々と増設された。
数十メートル間隔で監視カメラが設置されるほどの厳しい警備体制である。
90年代後半以降
北朝鮮が深刻な食糧難に陥った「苦難の行軍」と呼ばれる時代
中国にはこの川を渡って大量の脱北者が流入した。
今では大幅に減ったが
脱北者や一時的な流入者は今でも後を絶たない。
北朝鮮にさらに厳しい制裁措置が加われば
中国東北部にさらに多くの北朝鮮人住民が押し寄せることを中国は懸念している。
これが北朝鮮への制裁措置に中国が慎重な理由の1つである。
中国が北朝鮮との間で重視するのが経済関係である。
中国東北部の遼寧省丹東は中朝貿易の7割を占めている。
1月の核実験後もトラックの往来などに変化はなく
貿易は続けられている。
中朝貿易の推移を見ると
去年の貿易額は約55億ドル(約6,500億円)。
北朝鮮が初めて核実験を行った2006年以降
国際社会が制裁措置を強める中にあっても貿易額は3倍以上に拡大している。
中国は北朝鮮から主に石炭や鉄鉱石などを輸入している。
また北朝鮮に「改革解放」を促すことで経済を成長させ
体制を安定させたいという思惑を持っている。
北朝鮮に厳しい制裁を課せば経済改革の妨げにつながるとみて
中国は慎重な態度を撮り続けているともみられている。
また中国東北部では北朝鮮の労働力荷も期待している。
1月 北朝鮮に到着したばかりの北朝鮮の女性たち。
中国東北部の工場に派遣される労働者である。
中国の国家観光局によると
去年 中国に入国した北朝鮮の労働者は9万人。
経済の低迷が著しい中国東北部では
賃金が中国人の約半分程度と言われる北朝鮮労働者へのニーズが高まっている。
さらに北朝鮮に製造拠点を置き利益を上げる中国企業もある。
ピョンヤンで北朝鮮との合弁で衣類工場を運営する中国人事業家。
北朝鮮で作った衣類を中国製として日本や韓国に輸出しているという。
(中国人事業家)
「北朝鮮の方が中国より人件費が安い。
その差額分を設けている。」
中国が北朝鮮から輸入した衣類の総額は日本円で約718億円(去年)。
5年前の4倍近くに達し
北朝鮮が衣類の新たな製造地として存在感を増している。
中国はこれらの衣類の一部を中国製として
日本や韓国
ヨーロッパなどに輸出している。
結果 北朝鮮への制裁が形骸化している実態が浮き彫りになっている。
さらに中国企業は北朝鮮に将来の消費市場としての期待も寄せている。
中朝国境に近い北朝鮮のラソン経済特区で去年8月に開かれた商品見本市には
中国東北部の企業が多数参加していた。
並んでいるのはすべて中国メーカーの自動車。
中国企業が販売している楽器の実演。
中国製マッサージ器も好評なようである。
将来 北朝鮮が「改革解放」することを期待して売り込みをかけている。
貿易を促進することで北朝鮮の経済発展を促し体制を安定させたい中国。
国際社会が制裁を課す中にあっても両国は経済関係を深めている。