3月1日 キャッチ!
中国河北省の石家庄の郊外。
セメントの原料となる石灰石が手に入りやすいことなどから工場が集中し
「セメント回廊」と呼ばれてきた。
しかし2009年ごろから需要を大きく超える過剰な生産能力が目立つようになり
業績が悪化する企業が増加したという。
約2年前から地元政府は企業側と補償などについて合意したうえで
35社の工場を閉鎖。
地域のセメント生産能力を約4割削減した。
2年経った今も閉鎖された工場があちこちに残されたままである。
関連した設備や材料までそのまま放置されている。
工場で働いていた大勢の人たちは
別の仕事を求めて町から次々に姿を消していったという。
町の小売業では売り上げが大幅に落ち込むなど
地域経済に大きな打撃を与えている。
(小売店店員)
「この1年の売り上げは以前の1か月分しかありません。
仕事に来ていた人は別の土地に移りました。」
(住民)
「別の工場などを建設して地域の雇用問題を解決してほしい。」
過剰な生産能力を背景に価格の下落が続くセメント業界では
業績が赤字に転落して倒産に追い込まれる企業が相次いでいる。
去年 倒産に追い込まれたセメント会社は
多くの従業員の給料が長期間支払われず
会社の周辺で抗議活動も行われた。
(元従業員の家族)
「1万元の給料のうち支給されたのは1,000元だけで生活ができません。」
業界全体に広がる不況は大手の国有企業にも経営方針の転換を迫っている。
セメントの生産量が国内2位の国有企業は
去年1~9月の売り上げは前年比で13%減少。
新たな収入源を求めていま力を入れているのが
セメント工場の海外展開である。
今後5年でインドネシア・ミャンマー・ラオス・カンボジア・ロシアを中心に投資を拡大し
海外での生産能力を
日本のセメント業界全体に匹敵する年間5,000万トン程度にまで引き上げようとしている。
中国が提唱するアジアとヨーロッパをつなぐ経済構想「一帯一路」が進展すれば
関連各国で道路や港などのインフラ建設が進み
セメント需要が拡大すると期待しているのである。
これに合わせてセメント工場も機械の製造の供給先を転換。
中国国内ではすでに新規の工場建設が見込めないため
インドネシアなど東南アジア向けに切り替えている。
(セメント工場 執行役員)
「事業地域を海外に分散させ
収入と生産能力を引き上げることで
国内業績の不振を軽減するのです。」
こうした思惑に対し中国経済の専門家は
企業の海外進出には一定の時間がかかることもあり
業績悪化をどこまで食い止めるか不透明だと指摘する。
(みずほ銀行中国 細川美穂子主任研究員)
「過剰な生産能力を廃棄して
競争力の向上がスムーズにいけばよいのですが
失われるGDPの規模もあると思うので
かなりの下押し圧力になる。」