9月9日
家から歯科医院までは1キロメートル足らず。
曇りの日なら言うことなし、晴れてたって暑いのを我慢すれば、どうってことのない距離だが、雨の日、それも吹き降りになったりすると、歩いての往復はあまり気持ちの良いものではない。何より今回も「治療」という名の少々以上に精神的にも肉体的にも苦痛や痛みが付き纏うことを間に挟んでいるのだから。
往きも雨具、帰りも雨具、で、ズボンが少し濡れたものの、ヘルメット以外は何とか悲惨なことにはならずに済んだ。
雨はやんでも、カブはすっかり濡れてしまったから、まずはカブを乾拭き。
カブもSRも通勤で乗っていた時は、雨の夜、帰ってきて拭き掃除だけでも、という気には全くならなかった。
五木寛之の短編集に「雨の日には車をみがいて」というのがあって、
「よくいるわよね。ほら、自慢の車を洗車したあとに雨に降られると舌打ちしたりするようないやな男が。ああいうのは絶対に女に嫌われるタイプよ。車は雨の日にこそみがくんだわ。ぴかぴかにみがいたボディに雨の滴が玉になって走るのって、すごくセクシーだと思わない?雨の日に車をみがくのをいやがる男なんて最低ね」
という女性のカッコ良すぎる言葉が題名になっている。
雨の日にも車ならぬバイクに乗って通勤せざるを得ない身には、些か以上に耳に痛い言葉だったが、そのセンスは十分に理解できる。何しろ、この女性、自身は運転しないで(勿論整備なんかしない)、現実と乖離した理想の、男のパフォーマンスを、夢見る乙女、いや、夢見るイイ女が当然のこととして語っているだけだから。
「ぴかぴかにみがいたボディに雨の滴が玉になって走る~」のは、実際には助手席からだって見えない。自身、雨の中に傘さして立っていて、クルマが目の前を走り去る一瞬だけ見ることしかできない。ハンドルを握っている者の思いは全くそこにはない。第三者としての自身の審美眼、からの発言でしかない。
だから、こんなの、絶対イイ女、じゃないって!
でも、一度はそんな女性に現実に遭ってみたいものだ。
・・・・なんて思っているうちに還暦半ばを過ぎてしまった。
カブに乗って歯医者に行って、濡れて帰って雑巾で車体を拭きながら考えることか?これ。
いつも以上に中身のない日記だ。