![]() | 青を泳ぐ。 (新鋭短歌シリーズ30) |
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書肆侃侃房 |
☆☆☆
これも、“まちライブラリー”でお借りした一冊。
初恋っぽく、淡き恋こころ・・・・女性歌人の歌は好きです。
例によって、気に入った歌は・・・・・・・。
きみといるパンのにおいのする町も春 ありふれた恋かもしれず
かろうじてタンポポを避けみっしりとスクールバスが左折してゆく
飾るほどでもないけれど捨てられぬペリエの瓶に初夏は宿れり
創造的退行という名目で種になるまで口づけをする
だし巻きのかたち褒めればきみはああ玉子焼き屋になりたしと笑む
傘もまた骨のみ残すいきものか憶えていたき日はすべて雨
「ごめんね」とあなたはたしかな発音でぼくの世界を歪めていった
デジャビュだと浮かれてみても知っていたあなたが話すすべてのことは
逢えぬまま人生でただ一度だけ降りた記憶のある雨の駅
「お客さま起きてくださいここはもう誰かの始点に変わっています」
ドーナツの穴のむこうはいつも雨せかいはみんな錯覚である
うそみたいに晴れて揺らいでいる夏よ君のかげふみまだ終わらない
おもいでのなかでソナタはどこまでもどこまでも雨の音なのでした
浴室で明かりを消せば曖昧というここちよさ雨は朝まで