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一見、私の短歌とお友達と思いながら、大いに違う。
何といっても、ご自分の思いというものは一切詠われない。
ただ目の前の状況を淡々と詠われているだけ、そこには一般的な感情はなく、冷きっているが、逆に祖母や父や母そして妹も家族は多く登場するが、どこか冷めた関係に映る。
覚めている、冷めている、醒めている。大きな目を見開きながら、竹中優子さんはさめている。
例のごとく、気になった短歌は
商談のごとく時折しずまって銀杏並木は葉っぱを落とす
「三十歳(さんじゅう)に見えないです」は誉め言葉、だそうで 髪をひとつに結ぶ
評判のパン屋の話と美緒ちゃんの悪口の間にすっと息を吐く
海の日の工事現場にKOMATSU製ショベルカー一機折り曲がり立つ
強く鳴いてながくしずもる初蝉の雨の少なき梅雨が終わりぬ
紫陽花のにおいかすかに膨らんでひとりで食事するための皿
怒られることは許されること海老天のうどんひたひた輝くばかり
図書館の向かいに駅員食堂ありうどん二百円食べずに過ぎる
人類を森口博子を知る者と知らない者に分けて秋雨
窓があり鍵穴がある生活のイギリスパンは焼き上がりたり