MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『無菌病棟より愛をこめて』

2015年08月02日 | BOOKS
『無菌病棟より愛をこめて』<単行本>
加納朋子
文芸春秋

<文春文庫版>
<電子書籍版>

 急性白血病の闘病記なのですが、「患者本人が小説家」ということが、重くて複雑な事実を読みやすくしてくれていると思います。
さすがに、「文を書くプロ」です。
 次から次へとやってくる苦しい症状の中、書けない日がありながらも、書くことができる日は書き続けてくださったからこそ、臨場感のある闘病記になっています。
 闘病の毎日に楽しみを見つけたり、美味しいものを楽しんだり……、「白血病の闘病記」の薄幸なイメージとは違う一面も見られます。

 なによりも、この本の素晴らしいところは「患者の家族」のことが描かれているところです。

 愛のある家族が登場します。ユーモアのあるパートナー・我がままを言わないお子さん・仲の良い兄弟姉妹、そして見守る親。多くのフィクションよりも、理想的な家族なのじゃないでしょうか。
 そして素晴らしい友人・仕事仲間が登場します。
 ご本人の仁徳の賜物でしょうけれど、辛い病気のときに、こんな家族や仲間に恵まれている人は幸せです。
 患者の周りにいる人たちの苦悩だけでなく、思いやり・心配り・そして治療に協力する勇気……。こんなに患者のことを思ってくれる家族がいたからこそ、この本には「涙」だけでなく「笑い」もあるのでしょう。

 もしも、そんな家族や友人がいなかったら……きっと闘病生活は何倍も何倍も辛いはず。生きる気力さえ失ってしまうのではないかと思います。

 この本を読んで、「ある日突然、深刻な病気になったら」ということを考えました。
 自分がなるケース、大切な人がなるケース。
 私も前向きに、頑張れるだろうか?楽しみを見つけられるだろうか?
 そして、家族との関係はどうなるだろう?

 病気になる前の、普段の何気ない毎日の人間関係が大切なのだと、つくづく感じます。
 周りの人への感謝と気配りが、常日頃からできる人でいたいものです。


<関連サイト>
本の話WEB - 自著を語る(2014.09.22)加納朋子「おかげさまで、急性白血病の告知後四年が過ぎました」(文庫版あとがきより)
 文庫化の際に、この本の後日譚をご本人が書いてらっしゃいます。
 あきらめず最後まで頑張っていても亡くなってしまう方もいる……、生還できた人は幸運だったということを改めて感じました。
本の話WEB - 自著を語る(2012.03.23)加納朋子「白血病患者面会マニュアル」
 「お見舞いの心構え」です。どんな病気のときにも参考になると感じました。
 「励まし」どころか「迷惑」にならないようなお見舞いにしたいですね。
コメント
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