MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『トオリヌケキンシ』

2015年08月09日 | BOOKS
『トオリヌケ キンシ』
加納朋子
文芸春秋


 つらい経験を越えて、「生き直す」物語です。
 まったく違う状況で、それぞれに悩みを抱えた人たちが「出会い」を通じて動き出す、そんな6つの短編が収められています。

 人生には「岐路」だけでなくて、小さなツマヅキがたくさんあって、ときには大きな「落とし穴」が忽然と口を開いて待っていたりするのです。
 ほかの人も見えず、声も届かず、孤独の中で絶望を感じる日々が、この世の中にはたしかに存在して、今この瞬間も「出口」のない場所に閉じ込められたように感じている人がいることを、私たちは日常生活では忘れています。

 この本は、私たちが「見ていない」「見えていない」苦しみや辛さを抱えている人を、取り上げて描いてくれています。

 そして、ご都合主義と言われようとも、どの短編も、一歩明るいほうへ進みだすストーリーになっています。
 「行き止まり」ではなくて、「トオリヌケキンシ」ということは、どこかへ通じているのです。
 人の優しさや一生懸命さ、人と人とのつながりが大切なことを、伝えてくれる1冊です。


 どうか、全ての人に少しでも明るい「出口」がありますように。
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