夜も泥田に立ち尽くす
はすの葉宿すたまつゆに
ひかりまぎれて目を覚ます
わたしは銀のかたつむり
あおくたたずむあじさいに
そらのしずくがしみこんで
ころりころころ生まれます
わたしは銀のかたつむり
とおいおそらのあまぐもに
とうさまのすむ国がある
わたしは銀のかたつむり
暗い葉かげのつゆにすむ
そらはたしかに遠けれど
とどかぬものではありませぬ
そらのとうさま恋いよべば
銀のなみだが降りてくる
雨はそらの手風は耳
はるかとおいとみえますが
そらはそこらにありふれて
わたしのつのをなでまする
わたしは銀のかたつむり
風の吐息にいずれかは
つゆと消えゆく日がこよう
ときに埋もれる日がこよう
けれどいのちのともしびは
ずっとちじょうの星のよに
とうさまの目を飾るだろう
とうさまの目に住むだろう
わたしは銀のかたつむり――
(1997年3月ちこり9号、詩)