世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

わたしは銀のかたつむり

2015-05-16 06:57:59 | ちこりの花束

夜も泥田に立ち尽くす
はすの葉宿すたまつゆに
ひかりまぎれて目を覚ます
わたしは銀のかたつむり

あおくたたずむあじさいに
そらのしずくがしみこんで
ころりころころ生まれます
わたしは銀のかたつむり

とおいおそらのあまぐもに
とうさまのすむ国がある
わたしは銀のかたつむり
暗い葉かげのつゆにすむ

そらはたしかに遠けれど
とどかぬものではありませぬ
そらのとうさま恋いよべば
銀のなみだが降りてくる

雨はそらの手風は耳
はるかとおいとみえますが
そらはそこらにありふれて
わたしのつのをなでまする

わたしは銀のかたつむり
風の吐息にいずれかは
つゆと消えゆく日がこよう
ときに埋もれる日がこよう

けれどいのちのともしびは
ずっとちじょうの星のよに
とうさまの目を飾るだろう
とうさまの目に住むだろう

わたしは銀のかたつむり――



(1997年3月ちこり9号、詩)





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