わたしたちの
神さまは
少々粗忽であらせられ
汝らの願いをかなえるぞよ
と言いながらぽろぽろ
何かを落としていく
神さま
落ちましたよ
というと
種を落としてしまった手品師のように
あわててそれらを拾い集め
決まり悪そうにせきを一つしてから
愛する子たちよ
と のたまう
みんなは互いに目を見交わしたり
うつむいて笑いをかみ殺したり
こらえきれずにくつくつ笑い出したり
さわさわとにぎやかだ
だって神さまの落としたものといったら
よく肥えたぴかぴかの緑の蛙だったり
岩陰に咲いた小さな竜胆だったり
瑠璃の眼をした金の蜻蛉だったりするのだ
神さま
あれらを集めるために
どれだけ山野を走り回ったのだろう
わたしたちの喜ぶ顔ばかり
思いながら
どんな苦労をしたことだろう
みんな知っているから
笑いながら
こそこそ涙をふいている
粗忽神さま
蛙よりも花よりも蜻蛉よりも
わたしたちには
どんなにか
あなたが
だいじなことだろう
(2002年頃、種野思束詩集「種まく人」より)