「簡単なことだ。一がウスで、百がティンダなんだから、百より一つ多い数は、ティンダウスだろう。それでずんずん増やしていけば、クルティンダクルサムクル(九百九十九)の次に、くらいをあげればいいんだ。それをおれはメイダ(千)というんだ」
エルヅはそういうことを考えるのが好きなやつだった。アシメックはそういうエルヅの話を、いつも静かに聞いてやった。自分の興味を持っている数の話をする時、エルヅはとても嬉しそうだった。そういうエルヅのかわいい顔を見るのが、アシメックは好きだった。
小さくて弱い奴にも、いいところがあるというのが、アシメックは好きなのだ。アシメックはそんなエルヅのいいところを生かして、宝蔵の管理をさせていた。宝蔵にある宝の数を数えさせ、みんなの宝が盗まれたりしないように、注意させていたのだ。
村の道を戻り、自分の天幕に入って、妹のソミナに二匹の魚をやり、一匹はミコルに分けるように言づけておいてから、アシメックは裏の方の宝蔵に言った。エルヅはずっとそこに住んでいるのだ。宝蔵は、普通の天幕を三つ組み合わせたような大きな天幕だった。容易には入れないように、周りに石をたくさん置いてある。神カシワナカを現す文様を削り出した板を外部に吊り下げ、そのすみには盗人は罰されるという意味の記号も彫ってあった。これもエルヅがつくったのだ。