ジャック・ルイ・ダヴィッド
ソクラテス以上に賢者はいないというアポロンの神託を検証するため、ソクラテスはあらゆる人に対話をしかけ、その不知を見破っていく。そして自分はものを知らないということを知らないより、知らないということを知っている人の方が賢いのだという見地にたどりつく。彼は賢者として名高くなったが、不知を暴かれた人々の憎悪を買い、裁判にかけられて有罪となり、毒ニンジンをすすめられて死んだという。
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神話と言うより史実ですが。賢い人というのはいつも妬まれるものだ。自分はものを知っていると思っている人ほどものを知らない。すぐれてよき人を罪もないのに殺してしまうということがどういうことなのかということさえ、わかってはいない。無知というものほど、人を苦しめるものはなく、その無知を越えていくためには、自分の不知を知らねばならないのに、それに臆する人は多い。このように、優れて高い人が、大勢の無知の人々の謀略によって滅びていくということは、昔からよくありました。