ジャン・ルイ・セザール・レアール
ティターンの神族であるプロメテウスは、寒さに身を震わせる人間たちを哀れみ、ゼウスの反対を押し切って、火を人類に渡した。それで人類は暖かく過ごすことができ、調理したおいしい食べ物を食べることができるようになったが、反面それを使って恐ろしい戦争をして殺しあうようになった。怒ったゼウスはプロメテウスを三万年の間カフカス山に磔にし、毎日鷲に肝臓をついばまれるという責め苦を科した。
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火は人間を豊かで高度な暮らしに導くが、恐ろしい悲劇への可能性をもまた開きます。人間に火を与えたプロメテウスの責め苦の苦しさが、その苦しさを表している。火によって味わう苦しみのはげしさからでしょう。しかし、人間が知恵を持つものであるかぎり、永遠に火を知らないでいることはできない。暴虐の世を火にさいなまれながらも人間は乗り超えていかねばならない。そしていつかヘラクレスのように、プロメテウスを解放せねばならない。