ジャン・バティスト・マリー・ピエール
全能神の力をもって奔放に恋をするゼウスは、ある日スパルタ王テュンダレオスの妻レダに目をつける。そして白鳥に化けてレダに近寄り、首尾よく思いを遂げる。レダは二つの卵を産み、一つからは後にトロイ戦争を引き起こす美女ヘレネーが、もうひとつからはカストルとポリュデウケスの双子が生まれたという。
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男としての偉大な力を持って女と好きなようにセックスをしたいという、男の夢がゼウスというものでしょう。清らかでかわいらしい白鳥に化けて近寄るなどというのも狡猾だ。狼がひつじの皮をかぶっているなどというものではない。男は昔から、こういう嘘を平気でついて女性をからめとってきたのです。