ヴィリー・シュテーヴァー
決して沈まないと言われた豪華客船タイタニック号は、1912年イギリスのサウサンプトンを出港し、その四日後、北大西洋で氷山に衝突して沈没した。
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タイタニックというのはタイタンからきています。ギリシア神話にある巨神族ティターンのことです。要するにこれは、人間の傲慢の象徴と言えましょう。ティターンはオリンポスの神々の前世代の神々でした。巨大な体を持っていたとされる。しかし彼らはことごとく次の世代であるオリンポスの神々に敗れ去った。それは、自分のことを巨人の様に大きいと思っていた人間たちを、そうではなくほどほどなのだとわかるようになったあたらしい世代が滅ぼしたのだとも言えるのです。船にタイタニックと名付けたのは、人類が文明を誇り、その傲慢が鼻持ちならないほど痛いものになったということでしょう。その隙をつくかのように、氷山が現れる。人間はいつもこういう過ちを繰り返している。そのたびに痛い目にあい、自分というものを思い知らされてきたのです。