フランソワーズ・ルモワーヌ
リュディアの王妃オムパレは、神託によって奴隷となったヘラクレスを買った。オムパレはヘラクレスに傲慢にふるまい、衣装を変え、自分はヘラクレスの毛皮とこん棒をまとい、たくましいヘラクレスには女装をさせ、糸紬のような女の仕事をさせてからかったと言われる。しかしある時森から奇襲を受けたオムパレを、ヘラクレスがその剛力で助けたので、彼女は彼を夫にし、三人の子を産んだと言われる。
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ヘラに妬まれていたヘラクレスは試練の多い英雄でした。オムパレは男をからかうようなところから、あまりかしこい女性とは思えない。そういう女性に奴隷として仕えねばならないというのは、男にとっては激しい屈辱でしょう。しかしそういう屈辱にも、鋼の忍耐力で耐えられるのが、真の英雄というものだ。
ヘラクレスが魅力的なのは、こういう、木の葉の下をくぐらねばならないような、痛い試練もくぐりぬけているからです。