(赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」。昭和37年の「少年サンデー」より。)
上の漫画「おそ松くん」ではチビ太の頭から湯気のようなものが出ています。これは怒っていることを表します。イヤミから水滴のようなものが出ていますが、これは焦って汗をかいていることを表します。
これらのことは至極当然のように思われるかもしれませんが、「湯気」や「水滴」が何を意味しているのかをあらかじめ知っていないと漫画が理解できません。これらは一見絵のように見えますが、じつはある約束事を示す記号です。
幼いころサザエさんの漫画を見て、私はサザエさんの頭の周りに出ている水滴の意味がわかりませんでした。そのためその漫画が理解できませんでした。
「状態」を表す記号の意味がわからなければ漫画を理解することはできませんが、じつは漫画の絵のデフォルメそのものが記号すなわち約束事の役割を果たしています。
漫画では美少女は小さい鼻と口に異常に大きな目が描かれますが、それらを約束事と知った上で見ないと化け物のように見えます。
同じことが浮世絵の美人画にも言えるでしょう。現代の私たちには浮世絵の美人画は美人に見えませんが、それは浮世絵の約束事を知らないからだと思われます。
(ふきだしの形も平常心や怒りや驚きを表す約束事です。)