院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

えーっ!「のぞき」、「盗撮」、「痴漢」が病気だって?

2014-08-28 00:01:10 | 社会

(探偵用として販売されている腕時計型ビデオカメラ)

 最近、表題の破廉恥行為がやめられない状態を「性依存症」と一括して「病気」と見なす動きが一部にあります。病気とは社会的に保護すべきもの、治療すべきものという観点からすれば、「性依存症」と命名して「病気」としてエクスキューズを与えることに、私には強い抵抗があります。表題のようなことを繰り返す人は、ただの「変態」ではないのですか?

 2年前、統合失調症治療の本を書いたとき、病気とは何かについて考えました。治療の目的を深く考えると、簡単には答えが出せない問題だと難渋しました。治療の目的として、さっと思いつくのは「寿命を延ばすため」ですが、よく考えると寿命を延ばすことの意味のなさを指摘されたら、明快な反論はむずかしいのです。

 考察の途中経過を省くと、治療の目的は「現在ただいまの苦しみや痛みを取るため」ということに落ち着きました。だから、さしあたり本人に苦しみや痛みがなければ治療の緊急性はありません。

  (日本評論社刊。amazon の当該ページへ

 表題の破廉恥行為に加えて「露出症」、「小児性愛」、「サディズム」なども困った性的嗜好です。本人には快感こそあれ、苦しみや痛みはありません。そのような性癖が社会には受け入れられないことをもって「病気」と認めてよいのでしょうか?

 これらの行為の名称は確かにWHOの疾病国際分類(ICD-10)に搭載されています。ですが、ICD-10はあくまでも医療者間で意思疎通を図るためのマニュアルです。載っているからといって、それらが治療を必要とする「病気」と認められているわけではありません。

 ICD-10には「盗癖」も載っています。それでは窃盗を繰り返して刑務所に入っている人たちは、みな医学的に治療すべき人たちなのでしょうか?

 読者のみなさまは、どうお考えになるでしょうか?


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2 コメント

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Unknown (西川嘉伸)
2014-08-28 00:28:11
息子は検察官なのですが、日々「○○依存症」を持ち出す弁護士と精神科医、心理学者に辟易としているようです。困ったものです。
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やっぱり (管理人)
2014-08-28 05:49:10
やっぱり法曹界では起きている現象なのですね。困ったものです。別に最近しきりに「ギャンブル依存症」というのが出てきます。「競輪競馬で身を持ち崩す」というのは明治大正以来、小説でのダメな男の常套設定で、今さら「病気でした」なぞと言われてもねぇ。
息子さんが検察官とは、いい息子さんをおもちですね。
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