(シュークリーム。ウィキペディアより引用。)
あんパン、ジャムパンはパンをいかにおいしく食べさせるか中身が工夫されている。シュークリームは逆で、シューはあくまでもカスタードをおいしく食べさせるように考えられている。シュークリームはカスタードを食べる菓子なのだ。
ところが、カスタードに生クリームが混ざったのや、中身が生クリームだけのシュークリームがある。これは大間違いである。生クリームだけ食べてもさしておいしくない。カスタードだから価値があるのだ。
これまで、もっともおいしいと思ったシュークリームは東京、自由が丘の「モンブラン」のそれである。「モンブラン」という洋菓子屋は現在でもあるのだろうか?
※私の俳句(秋)
縁側の日の傾きて柿を食ふ
各地にブランド化した「各自思い込みの」モンブラン店があります。日本の繁華街の象徴たる銀座ならもちろん「ウェスト」。常時、モーツァルトを初めとするウィーン古典派の音楽が流れている店。知らなければ当然「田舎者」。東京人の気位は京都に負けず劣らず高いのです。(笑)
(1)
さて、シュークリーム。幕末には、開港した横浜の西洋菓子店で販売されていたことが資料的に裏付けられている。パリでもロンドンでも買うことができるが、いまや歴史的由来を超え、出自がどうであれ、日本の西洋菓子として定着している。
シュークリームの「シュー(chou)」がフランス語由来なのは、諸兄御存じの通り。勘違いして英語圏で「シュークリーム」と発音すると、靴みがきのクリームという意味になってしまう。shoe cream(靴墨)というわけだ。
英語圏では cream puff というのが一般的であるが、昨今ではprofiterole がよく使われるので要注意。
本来のフランス語だが、シューはキャベツ(chou)のこと。生地の外見を結球したキャベツに見立てたことによる。chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)が正式な言葉。日本語シュークリームはフランス語(chou)と英語(cream)を組み合わせた和製語。
(2)
生地を中空になるように焼き上げて、中にカスタードクリームその他を詰める。外側も内側も洋菓子のレシピーに従っている。
同じ詰め物をしたパンにあんぱんがある。これは外側が純粋西洋。中のアンコが和菓子という折衷ものだ。明治初期から評判を呼び、アンコを通じて、日本人が不慣れなパンに親しむ貴重なチャンスになったと言われている。
私の実感を言えば、例えば、ご飯だけじゃ味気ないので、海苔の佃煮と共に食べるといった主食(デンプン)とオカズの関係を、菓子パンにも応用して、当初、海のものとも山のものとも判定のつかないアヤシゲな西洋の主食(デンプン)に、和菓子のシンボルとも言うべき餡子を入れてみたという訳だ。折衷ものに美を見いだしたのである。
私はあんぱんは、煎茶と共に食すのが好きだが、冷たい牛乳や、ブラックコーヒーとも実によく和合する。
(3)
さて、シュークリームがいかに国民的人気を誇っているかは、洋菓子店と、コンビニの両店舗を覗けばすぐにわかる。これら店舗でシュークリームを扱わないところはない。しかも売れ筋は七割がカスタードクリーム入りのものだ。国民の舌はカスタードを支持しているのである。中里先生もホッとされることだろう。(笑)
この数字は、シュークリームをたくさん売ることで知られる銀座コージーコーナーに聞いてわかった。団塊の世代がおおむね幼児期以来の懐かしい体験として味わってきたシュークリームの原点、それがカスタード・シュークリームだ。
昨今は、生クリームベースのものも増えてきている。卵黄、牛乳、砂糖、小麦粉を使うカスタードに対して、生クリームは脂肪が多い。シュークリームの生地にはバターが大量に使われているから、脂肪分が重複する。くどさを嫌う人には、カスタードの方がいいだろう。
銀座に出向いたら、「ウェスト」の、甘みを抑えた品の良いカスタード入りのシュクリームを所望してみよう。
シナモン twitter:https://twitter.com/yamkam1020