「三年になったらクラス替えないよ」と高校二年生の娘さん二人がスターバックスの丸テーブルを間に挟んで喋っていた。「テヅカ」という、後ろ髪をひとまとめにした自称「コミュ障」の娘と、彼女が親友と呼ぶ娘が向かい合って座っている。「こっこ」と「テヅカ」は呼んで机の下の彼女の手を取り、机の上に置きなおしてつないでいた手を覆いかぶさるように重ねた。左手同士が娘らしいふくよかな指を以て重なっている。「テヅカ」はさかんに「ひとり」を「こっこ」に理解してもらおうと早口にまくしたてる。親兄弟が邪魔で家は場として「愛している」のだ、と「テヅカ」は言った。肩口まで伸ばした下ろし髪の「こっこ」は肯きながら「今まで依存してきた人に次々連絡を取ったら」と優しくいった。「テヅカ」は一人暮らしをしたいらしい。(それはそうだろう)
「テヅカ」は枯れない早口で自分を語り続けているが自分をどうしたいかは捉えかねているようだった。「こっこ」もそれを適度に察しているようで、どうしたものかと頬に流れる髪を後ろにかきあげながら右足をぶらぶらさせている。彼女は親身だ。周りにいる人間へとりあえずいら立ちを覚えるという「テヅカ」へ、「こっこ」は言葉を変えながら何度も何度も彼女の側にいる、と言い続けている。
神経質って親は言うんだけどさ、親だって神経質なんだよ。何かと、こう、指をくるくるさせるのね。あたしそれが嫌でしょうがないの。と「テヅカ」は両手の指を糸巻きのように回して見せていた。それから学校の誰それの話がまた繰り返される辺りで席を立ったので、空のプラスチックカップを挟み左手をまさぐりながら話し続けることばの行方はわからない。
「テヅカ」は枯れない早口で自分を語り続けているが自分をどうしたいかは捉えかねているようだった。「こっこ」もそれを適度に察しているようで、どうしたものかと頬に流れる髪を後ろにかきあげながら右足をぶらぶらさせている。彼女は親身だ。周りにいる人間へとりあえずいら立ちを覚えるという「テヅカ」へ、「こっこ」は言葉を変えながら何度も何度も彼女の側にいる、と言い続けている。
神経質って親は言うんだけどさ、親だって神経質なんだよ。何かと、こう、指をくるくるさせるのね。あたしそれが嫌でしょうがないの。と「テヅカ」は両手の指を糸巻きのように回して見せていた。それから学校の誰それの話がまた繰り返される辺りで席を立ったので、空のプラスチックカップを挟み左手をまさぐりながら話し続けることばの行方はわからない。