えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・お味はいかがなものでしょう

2018年06月09日 | コラム
 ここ数年にわたって「うな重」を食べていない。

 不漁だの保護だの海外人気だ資源の取り合いだとそろそろの今頃話題になるたびに「あ、食べに行こう」と頭をよぎる。忙しくもなく食べる元手がないわけでもないが、気づくと食べることを忘れたまま年越しを迎えている。積極的に無性に食べたいかと自問しても「今はいらない」ことが多いせいだろうか。気に入りの店へ食べに行きたいが敷居の中途半端な高さに並行して足は遠のいている。そこに行くまでに早起きも要ることも一考だ。近所のうなぎ屋は年々鰻の身が小さくなり、味が濃いばかりでいい加減「うなだれ重」になりそうだ。天然ものは仕方ないとしても、養殖は養殖で「稚魚を捕まえる」という、成長した鰻を捕える過程をちょっと省くための結果、天然ものが減るのは当たり前だろう。

 都内のうなぎ屋の老舗が立つ位置をざっくり眺めると、ビル街のど真ん中や「隠れ家」のようにわかりづらい位置ながら、かつて川が流れていた傍に店を構えている。その場で捕ったブツを料理する場所だったのだ。だからどうした、今年は食べにゆくのかどうか、は、土用に入る前に済ませておこうかと考えている。本当は冬のほうが美味しいそうだが、コクーン歌舞伎第一弾の『四谷怪談』の千穐楽で

『勘九郎(十八代目中村勘三郎)さんは鰻を食べているまっ最中だったが、テープを聴きながら、もう曲に合わせて立ち回りの動きをしている。
「うん!うんうん、橋ヤーン!橋ヤーン、ちょっと来て!」』(『串田戯場』より)

こんな鰻はとてもおいしそうに見えてしまう。

 それでもいい加減胃袋の問題で、白焼きや肝焼きで一杯を過ごす方が良いような気もするが、手元の『小林カツ代のお料理教室』(2015年 文春新書)のかば焼きを使う「鰻玉」「鰻茶」「うざく」の一品一品はかば焼き一串でどうにかなるらしい。これはそこそこ食べられそうだ。メニューの値段を記憶頼みで思い出すと、それぞれが平均1,500円くらい払いそうな品々なので、一串買ってそれなりに「うなぎを食べた」満足を得られるのならばよいように思える。

 ためしに近所のショッピングセンターに入っているうなぎ屋でかば焼き一串の値段を見た。1,500円だった。
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