電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『楽毅』(二)~(四)を読む

2005年08月07日 19時07分39秒 | -宮城谷昌光
昨日、書店で宮城谷昌光『楽毅』の第二~四巻、札幌で探せなかった分を購入し、昨日と今日で一気に読了した。長い軍事の物語である。

首都を失い、中山王尚を助けて趙軍とゲリラ戦を戦った楽毅だったが、最後に六百名が残るだけとなる。王は断を下し、辺境に引退することに同意、ここで中山国は滅び、楽毅は失意のうにち中山を離れ、魏の孟嘗君のもとでようやく生気を取り戻す。やがて、魏王の正使として燕に赴くこととなるが、燕の昭王は楽毅を高く評価し、当面利の薄い魏との同盟に同意することで楽毅を得、斉への復讐の第一歩を踏み出す。楽毅は燕王の厚い信頼のもとで外交と軍事に才能を発揮し、ついに斉を平定するが、理解者であった燕王昭の急な逝去と楽毅を憎む愚かな太子の即位により趙に亡命、若い趙王の敬愛を受けながら晩年を送る。

名将・楽毅の物語の主題はやはり軍事であり、為政者としてよりも将軍としての事績が主となっている。将軍の活躍の前提条件は命じる王の理解と支持であり、この点て名宰相の政治的物語とはやや異なる色合いを見せている。
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セル指揮フルニエ(Vc)のR.シュトラウス「ドン・キホーテ」

2005年08月07日 14時29分17秒 | -オーケストラ
午後、空一面が真っ黒な雲におおわれたので、さぞ激しい夕立が来るかと思ったら、気休め程度に降ったきりだった。
油蝉の合唱に負けずに、今日はR.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」を聞く。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏、チェロ独奏はピエール・フルニエで、ヴィオラをクリーヴランド管弦楽団の首席ヴィオラ奏者、エイブラハム・スカーニックが受け持っている。「騎士的性格の主題による幻想的変奏曲」という題名からわかるように、主題の変奏曲の形を取っており、LP(CBS-SONY,13AC-217)では、A面に主題と第1変奏~第3変奏、B面に第4~第10変奏とフィナーレが収録されている。
このレコードは、1960年の10月28日と29日に録音されたもので、もともとドイツ・グラモフォンと専属契約を結んでいたフルニエをCBSが借りるかわりに、セルがベルリン・フィルを指揮して、ドヴォルザークのチェロ協奏曲をグラモフォンに録音するという約束だったらしい。おかげで、私たちはピエール・フルニエの素晴らしい演奏に接することができるわけで、実にありがたいことである。
指揮者セルは、CBSとの契約上、楽曲の選択に制約条件があったらしく、なんでも録音する「全集魔」ではない。にもかかわらず、R.シュトラウスでは「ドン・キホーテ」のほかにも「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」「ホルン協奏曲」「家庭交響曲」「ドンファン」などかなり多くの作品を録音している。
セルの指揮するシュトラウスの音楽は、精緻で軽妙なもので、どちらかといえば「ばらの騎士」のような音楽に向いているように思うが、この「ドン・キホーテ」では、ウィンドマシンをまじめに使いながら、ダイナミックで緊密な演奏を展開している。そして、フルニエのチェロが、オーケストラと一体となって演奏を行い、スカーニックもまた、サンチョ・パンサの役割を演じている。何度聞いても、いい演奏だなぁ、と思わせられる。
写真は、LPレコードと、他に「ホルン協奏曲」や「ティル」等を一緒に収録した楽しんだカセットテープ。
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