昔から不思議に思っているのだが、NHKの大河ドラマで、上杉鷹山を取り上げていない。世の中がいくら不景気で借金があって政治が乱れても、上杉鷹山はドラマにならないらしい。なぜなのか理由は不明だが、まさか「伝国の辞」の内容に不満があるというわけでもなかろうに。
藤沢周平は、文庫版の上巻の半分以上を費やして、米沢上杉藩の窮乏を描く。桁違いの余剰人員を抱え、累積債務が雪だるま式にふくらみ、暗愚の経営者は現実を見ず、財界活動しか興味がない、そんな倒産必至の会社にたとえられる状態だ。江戸家老・竹俣美作当綱(まさつな)は、専権を振るう森利真を除き、藩主・重定を隠居させ、養子・直丸君をかつぎだす。ところがこの養子の主君の出来が抜群に出来がよい。主君に対するクーデターも辞さないほどの老練な政治家である竹俣当綱も、わずかに希望の光を見る思いだ。先の藩主を隠居させた老臣たちが、今度は若年と侮り、若い新君主に対しクーデターに近い形で保守的な確約を迫る。これに対する新君主の対応は、老練な政治家も一目置くほどの慎重かつ果断なものであった。
『密謀』で直江兼次を描いた藤沢周平が、後代の上杉鷹山治憲をどう描くか。まず、竹俣当綱を描くことで、米沢藩の実情を余すところなく語っているというべきか。
藤沢周平は、文庫版の上巻の半分以上を費やして、米沢上杉藩の窮乏を描く。桁違いの余剰人員を抱え、累積債務が雪だるま式にふくらみ、暗愚の経営者は現実を見ず、財界活動しか興味がない、そんな倒産必至の会社にたとえられる状態だ。江戸家老・竹俣美作当綱(まさつな)は、専権を振るう森利真を除き、藩主・重定を隠居させ、養子・直丸君をかつぎだす。ところがこの養子の主君の出来が抜群に出来がよい。主君に対するクーデターも辞さないほどの老練な政治家である竹俣当綱も、わずかに希望の光を見る思いだ。先の藩主を隠居させた老臣たちが、今度は若年と侮り、若い新君主に対しクーデターに近い形で保守的な確約を迫る。これに対する新君主の対応は、老練な政治家も一目置くほどの慎重かつ果断なものであった。
『密謀』で直江兼次を描いた藤沢周平が、後代の上杉鷹山治憲をどう描くか。まず、竹俣当綱を描くことで、米沢藩の実情を余すところなく語っているというべきか。