電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『御宿かわせみ11・二十六夜待の殺人』を読む

2005年08月15日 22時03分54秒 | -平岩弓技
平岩弓枝著『御宿かわせみ11・二十六夜待の殺人』を読む。
第1作『神霊師・於とね』は、海千山千の老女が多い(?)神霊師稼業に、若い娘が登場するところが新しいが、逆にそこが怪しさを感じさせ、すぐにネタがわかってしまう。第2作『二十六夜待の殺人』も、意表をついた犯人の設定は古典的だ。第3作『女同士』は、見栄と嫉妬がテーマだが、これは男にもありそうな話。石川啄木の「友がみな吾よりえらく見ゆる日よ、花を買いきて妻としたしむ」は、殺人にはいたらない平和的な対応だけれど、状況としては類似のものだろう。
第4作『牡丹屋敷の人々』は、トーマス・マンや北杜夫を連想させる題名だが、内容は刀剣泥棒の盗賊団の話。第5話『源三郎子守歌』は、この物語のファンの友子さん(*1)から、前作についていただいたコメント(*2)にもふれているが、前著で源三郎とお千絵が祝言をするきっかけとなった、笠原の娘の家出の後日談である。ちょっと哀れな話だ。
第6話『犬の話』は、ペットに過度に入れ込んだ商人の店を盗賊団が襲う話。第7話『虫の音』も生き物がらみで、小道具として鈴虫が登場するが、主たるテーマは教育ママだ。学問一筋の青年と剣一筋の青年では、後者の方が好ましいと言う設定がちょいとワンパターン。
第8話『錦秋中山道』は、漆かぶれで花嫁交代大作戦。

ところで、だいぶ前だが、最上地方の漆職人の方の話を聞いたことがある。予科練の特攻くずれでくさっている頃、漆職人に弟子入りし、かぶれてかぶれて苦しむが、やがて免疫ができて、全然かぶれなくなるのだそうな。国産の漆は、せっかく植えた漆の苗木が大きくなっても、うるしをかき取る「かき子」が高齢化していなくなり、中国産の漆になりつつあるのだとか。その職人さんは、地元の国産漆と中国産漆とを用途に応じて混ぜて使っていたが、布地をベースにした見事なナツメにびっくりした記憶がある。
(*1): 友子の日記。2
(*2): 『御宿かわせみ10・閻魔まいり』を読む
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