電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

R.シュトラウス「ツァラトゥストラはこう語った」を聴く

2007年09月11日 06時05分04秒 | -オーケストラ
オーケストラ音楽を大音量で聴くのは、一種の快感です。特に、少しずつ涼しくなる頃には、過ごしやすさから、大規模なオーケストラ音楽を聴いてみようという気分にもなります。このところ、通勤の音楽でずっと流していた、R.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」を、自室のステレオ装置で聴きました。やっぱり快感です。

全曲が通して演奏されますので、組曲のような曲の番号はありませんが、以下、便宜的に第◯曲といった表記をすることにします。また、各曲のタイトルは、ブロムシュテット盤の翻訳を表示しています。
第1曲、導入部。オーディオ・チェックなどで冒頭部だけが耳タコ状態な、ある意味で不幸な曲です。映画「2001年宇宙の旅」に使われて有名になりました。
第2曲、「後の世の人々について」。冒頭部とは違い、大迫力というわけではありません。でも「運命」第2楽章と同じく、ここから聴きはじめてもじゅうぶんに魅力的です。
第3曲、「大いなる喜びについて」。短いです。あっという間に第4曲へ。
第4曲、「歓喜と情熱について」。これも短くて、あっという間に第5曲へ。
第5曲、「埋葬について」。標題の通り、しだいに沈潜するような音楽です。たぶん、オーディオ・チェックでは、長くてもこのへんまでしか聴け(か)ない。
第6曲、「科学について」。音楽の標題に科学という語が登場するのも珍しいのではないでしょうか。なんとなく、否定的なものとして描かれることが多いのではないかと予想できますが。
第7曲、「病より癒えゆく者」。トロンボーンと低弦によるフーガが、なんとも迫力があります。
第8曲、「舞踏の歌」。ヴァイオリンがワルツを奏します。ここはたいへん魅力的な部分です。全曲中もっとも長く、リヒャルト・シュトラウスの音楽のうち、「ばらの騎士」に通じる軽妙な魅力を充分に味わえるところと言ってよいのでは。
第9曲、「夜のさすらい人の歌」。これもいい音楽ですね。最後のところでは、長く長く引きのばされた陶酔的なヴァイオリンの調べの中に、曲は終わります。

CDで音楽を聴くメリットとして、任意のトラックを簡単に呼び出すことができることがあげられます。たとえば「舞踏の歌」を聴きたいとき、ぱっと呼び出せます。LPの場合はこうはいきません。およその時間と音溝のうねり具合から判別し、そっと針をおろすテクニックが必要でした。CDでも、たとえばメータ盤のように、トラック分けがなされていないものもありますが、数は少ないと思います。

本作品のきっかけとなった、ニーチェの同名の書については、若い頃に読んだはずですが、皆目記憶にありません。同じ著者の『悲劇の誕生』については、たいへん面白く読んだ記憶がありますので、超人を目指す同書の思索と箴言は、当時の私の思考と感性にはフィットしなかったのでしょう。おそらく、今ならもっとフィットしないでしょう(^o^)/
でも不思議なもので、標題となった書物の思想とは別に、近代管弦楽の精華とも言えるシュトラウスの音楽を楽しむことは可能です。このへんが、音楽の抽象性のありがたいところかもしれません。

■ブロムシュテット指揮ドレスデン・シュターツカペレ
I=1'48" II=3'33" III=1'53" IV=1'54" V=2'49" VI=4'57" VII=5'09" VIII=7'21" IX=4'36" total=34'00"
■チャールズ・マッケラス指揮ロイヤル・フィルハーモニック
I=1'51" II=3'24" III=1'50" IV=1'57" V=2'34" VI=4'24" VII=5'08" VIII=7'39" IX=4'55" total=33'42"
■ズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
total=31'23"
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