(1)「103万円の壁」問題は非課税額を上げれば税収減になるため、①与党はできるだけ押さえたい立場で123万円を提案し税制大綱に記載すると決めた。②国民民主は選挙で手取りを増やすスローガンが国民に支持されたことから最低賃金上昇率相当の178万円を主張して譲らずに、③地方税減収が見込まれる自治体は国民の収入が増えることは地方活性化に歓迎しつつ、地方税減収は押さえたいという与党、国民民主どちらの主張にも理解を示して、こういうのを3スクミでもないしどちらでもない1者を挟んで2者対立が続く。
(2)17日の3党会合は与党があらたな引き上げ額を提示しなかったことから、開始早々に国民民主が会合を打ち切って退席した。国民民主は予算案、法案に賛成できないと息巻いている。与党、国民民主ともに引くに引けない立場、理念があり、どちらかが折れるのかはむずかしい判断の政治事情だ。
(3)与党としては103万円引き上げには理解を示しているので、国民民主が税収減7~8兆円と見込まれる178万円でなく自民税調が考える税体制(大綱)123万円(物価上昇率相当)までギリギリの歩み寄りをみつけたいところだ。
与党の最終対応としては103万円引き上げによる税収減の財政負担として国債発行の常套手段はあるが、それでは補正予算がらみで国債発行が続き財政赤字がさらに増えてプライマリーバランス実現がさらに遠のき批判を受けることになり避けたいところだ。
(4)そのため自民党の小野寺政調会長は大学生のアルバイトを想定して、大学生が学費捻出のために103万円以上も稼がなければならないのか、その必要がない対応を国会が考えることだと述べているが、もちろん103万円の壁は共稼ぎ主婦、パートなどの生活費の問題が中心なのでいきなり学費値上げ問題はあっても大学生の学費捻出だけを取り上げたのは疑問だ。
(5)正規、非正規の賃金、労働体系の問題、物価高が国民生活を圧迫する政治、政府、行政、税制度の問題なのだから、小野寺政調会長も他人事のように国会の責任に押し付けるだけではない政府、与党の政策、対策の問題だ。
(6)103万円引き上げの税収減は最終手段として国債発行が考えられる政府のイニシアティブはあるが、企業の賃上げ、欧米に追随する最低賃金の引き上げとタイアップしての解決策を模索する出口論を今は考えるしかない。