(1)10年間続いた大規模金融緩和からの方針転換、円安物価高の出口論を目指す日銀は、2%物価上昇維持と賃上げの好循環が続かないと金利引き上げに踏み切れない。昨年5%超の高い賃上げを実現して今年も新年早々に経営者から賃上げに意欲的な発言が多く、日銀も昨年末に見送った利上げを新年に0.5%と高く再利上げを実施した。
(2)通常国会の4日の衆院予算委員会で日銀植田総裁は野党の質問で「今はインフレかデフレか」問われて、「現在はデフレではなく、インフレの状態にある」(報道)と答弁した。石破首相は「デフレではない。しかし今はインフレだと決めつけることはない。なぜなら再びデフレに戻らないとハッキリしないからだ」(同)と慎重な姿勢をみせている。
(3)金融政策を推進する政府と日銀で現状認識に違いがみられた。エネルギーなど大規模物価高が続き、最近ではコメ価格が60%上昇してキャベツなど野菜、卵の高騰が続き、過去最大の5%超賃上げでも物価高を上回れないマイナス成長が続いて、日銀も利上げ判断が景気に及ぼす影響、トランプ大統領の米国第一、関税政策を慎重に見極めようとしている。
(4)しかし、昨年過去最大の賃上げが実現し物価高も加速している現状で、石破首相がインフレと決めつけないと述べているのも施政方針では物価高対策に補助金、給付金しか触れておらず、経済政策の重要課題に取り組む姿勢がみられずにインフレを認めたくない事情がある。
大規模金融緩和からの2%物価上昇持続と賃上げの好循環で脱却を目指す日銀植田総裁との立場上、理念上の違いが国会答弁であきらかになって、金融政策の不一致がみられる。
(5)石破首相は明日から訪米して7日にはトランプ大統領との初の日米首脳会談に臨むが、日米貿易不均衡、米国製品の購入、輸入拡大、米国への投資が焦点となるとみられて物価高対策はさらに重要性を増すことが考えられて、政府、日銀の金融政策、物価対策の現状認識の違いは物価高と賃上げの好循環、日米首脳会談にも影響を及ぼすことが考えられる。
(6)石破首相のデフレに戻らないとハッキリしない発言は政府の経済政策、景気、物価高対策の問題であり、打つ手は石破首相の考え、政策にかかっている。