朧の森に棲む鬼 &

2024-12-21 09:03:57 | 古典芸能
めちゃくちゃ良かった!

めちゃ泣けた!

幸四郎さんが悪に徹すれば徹するほど、右近君のピュアさが引き立って、もう泣けて仕方ない!

ぶっちゃけ、導入部が理解出来てなくて、関係性が分からず物語についていけるか心配になりましたが、

多分、100%ではないが、理解できていると思う。

やっぱ、中島さんの脚本最高!!

言葉が生きてる!後々随所で光ってくる!

リチャード三世だけでなくマクベスの要素も大江山の鬼伝説も取り入れてあり、めちゃくちゃ面白かった!

第二部は泣けて泣けて仕方なかった!


いのうえさんの演出も素晴らしく、つけ打ちは当然としても、今回は長唄やお囃子を取り入れていて、劇団新感線のスーパー殺陣満載の中に歌舞伎要素もふんだんに取り入れられていて、テンポよくこれぞいのうえ歌舞伎による歌舞伎NEXT を堪能させて頂きまさした!

三枚舌ならぬ十枚舌の盗賊が不死身の力を得て、敵も見方と仲間まで騙しに騙して殺しに殺しにて国王?天皇?にまでのしあがっていく様が、さまにリチャード三世。

最初は悪人だけど愛嬌があったが、国王の地位を得てからはまさに超極悪人。

幸四郎さんのまさしく悪魔に取り憑かれたかのような表現がめちゃくちゃ素晴らしかった!

口八丁手八丁の大嘘つきの盗賊が、朧の森に棲む魔物に魂を売り、自ら鬼と化する超極悪人をものの見事に演じられ、第二部はマジあっぱれでした!

幸四郎さんが極悪人に徹すれば徹するたびに、周りが善人に見えてくる不思議現象が起こり、もちろんこれは脚本演出と演技が素晴らしいことは言うまでもないですが、

ここまで吹っ切れてくれたら最高!!!としか言いようがない。

改めて幸四郎さんのお芝居の上手さに唸りました!

もちろん、幸四郎さんに限らず役者陣皆さんが完璧な役作りとアプローチ!

お父様(萬壽さん)から名跡を受け継いだ時蔵君が、こんなにも芝居心があるとは思わなかった!

私の中では、観てきた役のイメージがあるからですが、寡黙な人のイメージしかなかったので、女形だけど男勝りの武将?を、時には男のように勇ましく、時には二人の男(一人は死んでいる)の間で女心が揺らいでいる様がめちゃくちゃ上手く表現されていて

時蔵さんが、こんなに感情豊かに表情される方だとは思ってもみなかった!

染五郎君も最初誰だか分からなかった。どこのイケメンだ?と思って休憩中に配役を見てびっくり!めちゃくちゃ男っぷりが上がってるやん!!

九月公演に観た染五郎君からは想像がつかないくらいの男ふっり!スピード感がある殺陣も素晴らしくマジ見違えた!

YouTubeで観た、歌舞伎の絵を描いているいかにも文系のイメージしかなかった染五郎君が、めちゃ体育会系な声の出し方、劇団新感線の役者さん並みの太刀さばきがマジ圧巻だった!めちゃカッコ良かった!

やはり、幸四郎さんのご子息であることを証明する演技と存在感でした。

二人が親子であることを忘れてしまうくらい、役になりきっていて、二人の殺陣シーンはマジあっぱれでした!

猿弥さんがめちゃ美味しい役で、猿弥さんにも泣かされたよ!

そして、右近君が最高に良かった!

いやいやいやいや、MVPもん!

キャラ作りが完璧!一部と二部の見せ方が素晴らしい!!

めちゃ泣かされた!

松也君は、幸四郎さんとダブルキャストなので、幸四郎さんがライ役の時は、貞光役ではありますが、お化粧が濃すぎて誰だか分からんかった!そんなに出番はないけど美味しい役に仕上げたね。コメディリリーフ的存在かな?

幸四郎さんと染五郎君親子のガッツリ絡みがありましたが、同じ親子の新悟君と彌十郎さんもガッツリ絡みがありましたね。実の親子であることを完全に忘れてました。

二人とも珍しくキャラ変していてびっくり!新悟君もコメディリリーフ的役割で、彌十郎さんは好い人だった。二人とも単純にコメディリリーフでないだけに…、あ~言えない。

今回のキャスト陣は、マジ私の偏見を完全に覆す素晴らしいキャラ作りでした!

今回は正面席じゃなく、下手サイド席で観させてもらったので全く花道が見えず、しかも花道のお芝居がめちゃくちゃ多い!

備え付けのテレビ画面で見るしかなかったのですが、ラストの宙乗りは間近で拝見できたので全て帳消し!

博多座公演を見られる方はタオル必携ですよ!

帰り、いのうえさんが楽屋口が出られるのを拝見しました。本当に素晴らしい作品でした!と伝えたかったよ。


ということで、9月以来の東京に行ってきました。

もちろん、メインは、こちらではなく、玉三郎さんと團子君の「天守物語」だったのですが…、

圧倒的に「朧の森に棲む鬼」が良かった。

新橋演舞場で観たあと、歌舞伎座で「鷺娘」「舞鶴雪月花」「天守物語」を観させてもらいました。


意外と良かったのが、全く期待してなかった勘九郎さんと長三郎君の「舞鶴雪月花」だったんよね。勘九郎さんの女形が意外と良かった!

こちらも親子共演でしたが、「松虫」の場面では、勘九郎さんがまるで長三郎君に表現の仕方を見て学べと言わんかのようにお手本的な見せ方になっていたのが印象的だった。勘九郎さんの松虫としての飛び方の表現が上手かった。長三郎君は可愛かった。

あの広い舞台を一人で立つ長三郎君がよく頑張ってたよ。

勘九郎さんの雪達磨も、ほぼマイム演技だったのでその表現が上手かった。太陽が出たらそりゃ溶けるよね?の表現が良かった。

七之助丈の「鷺娘」は、幕見席でを観させてもらいました。引抜きが見応えがありました。七之助丈がめちゃくちゃ若返りしているように見えた。めちゃ可愛かった。

ただ、映像でちょこっとだけ観た菊様の鷺娘が儚さと可憐さがあって素晴らしかったので、ラストは、七之助丈はちと儚げさが足りなかったかな?と思ってしまった。すみません。m(_ _)m


そして、ここからは失礼を承知で書かせて頂きます。

あくまで私が感じたことですと前置きときます。

今回、玉三郎さんの冨姫と團子君の図書之助を観なかった絶対に後悔すると思って急遽観に行くことにしたんですが…

「天守物語」は、七之助丈の冨姫と虎之助君の図書之助コンビの方が断トツで良かった。泉鏡花のメッセージがびんびん伝わってきて、世界観にも入り込めた。

玉三郎さんと團子君の場合は、

前半の玉三郎さんの冨姫と七之助丈の亀姫のシーンは良かった。

後半、図書之助が登場してからが…。

團子君は、今回は、今まで猿翁さん似た台詞回しと違って、喋り方を変えていた。猿翁さんの真似事ではなく團子君の図書之助を作りあげようと玉三郎さんが意図してのことだと推察。

お腹からしっかり声を出していてめちゃ太い声を発して、めちゃくちゃ良かったんだよ、声はね。いかんせん、感情が全然乗ってない。太い声を出すことで精一杯で肝心な感情がおいてけぼりになっていた。ただ頑張って台詞を喋っているだけにしか聞こえなかった。冨姫のことちゃんと愛しく思って演じていたのか甚だ疑問でしかなかった。

玉三郎さんの冨姫も、前半の亀姫との浮世離れした表現は良かったんだよ。図書之助と初めて会ったときの冷静かつ品格がある態度も良かったし、図書之助に心を奪われる様も良かったんだけど、

玉三郎さんが意図してなのかは分からないが、シリアスなシーンなのに随所に笑いが起こって興ざめ。

図書之助への告白、その前に獅子に本心を打ち明ける様など、だんだんリアルな感情が伝わってこなくて、二人の会話なんてまるで師匠と弟子の会話にしか聞こえなかった。

映像で観たけど、玉三郎さんは虎之助君にはめちゃダメ出ししてたのに、そのダメ出しが素晴らしい図書之助へと導いたと思っていたのに…。

今回は、ヴィジュアルは文句ないのに、正直うーんって思ってしまった。

偉そうなことを書いて申し訳ありません。

メイン二人はよしとして、やはり、吉弥さんがめちゃくちゃ素晴らしい!お芝居が本当に上手い!今年様々な役の吉弥さんを拝見してますが、どれも秀逸だった。歌舞伎じゃなくてまさにガラスの仮面。

天守閣から下界を見下ろして状況説明する台詞表現がリアルガラスの仮面だった。情景が映像として見えてくる。

獅童さんもめちゃくちゃ良かった!獅童さんもめちゃ情感が伝わる表現だった。

歌昇君もめちゃ太い声出していたが、ちゃんと情感が伝わる演技だった。

芝のぶさんも出ていて嬉しかった。

月が描かれた緞帳を演出に取り入れたのも良かったのに、前半が良かっただけに後半が残念でした。








松竹大歌舞伎

2024-11-18 20:16:58 | 古典芸能


隼人氏、めっちゃ芸達者やん!?

こんなにコメディーセンスがあるとは思ってなかった!

親子共演だけでなく、演目も出演者も、めちゃ贅沢!

チケット代は安いから、全国を回るには人件費を削減した演目かと思いきや、囃子方さんが多くてびっくりした!

大ホールでも引けを取らない演目と舞台美術だった。

ということで、

フェニーチェ堺に行ってきました。

3月の南座以来の久々の隼人氏、そして、中村錦之助さんとの親子共演。

親子共演ならではの2演目でした。

最初は、隼人氏のトーク。喋り慣れているからストーリー説明が流暢。周りの女性客がキャーキャーうるさくて(大声ではないが、カッコイイ!カッコイイ!とずっと言っていた)、

ま、確かに歌舞伎界において1位2位を争うイケメンではある、

隼人氏の言葉が全くはいってこなかった。

ひと昔は、イケメンだけの役者かと思っていたが、

團子君が代役した「不死鳥よ 波濤を越えて」で隼人氏を拝見して、ただのイケメン俳優でないことを知って、そこから何作か観させてもらって、

どハマりの役もあればそうじゃない役もあっての、めちゃくちゃ素晴らしかった「女殺油地獄」の与兵衛だったからね。ブロマイド買っちゃったよ!(笑)

ええ表情を捉えてた!

からの今回の演目でしたが、

今回の2演目は、どちらもコメディー要素がある役、コメディーセンスが必要な役だったので、

ぶっちゃけ、隼人氏の悲劇は似合うとは思っていたが、

いやいやいやいやいやいや、

コメディーセンスも抜群だった!

特に「身替座禅」はただのコメディーじゃなくて、長唄で舞う場面もあれば、常磐津(詳しくは分からないが、三味線に合わせて語り部が語る)に合わせて台詞を発しているように表現したり、

なかなかの技術が必要。

自分で喋って演技するだけじゃないから、音楽に合わせる、語り部と合わせるという作業があるから、

なかなか高度な技術が必要な演目だと思ってる。

過去に違う演者さんで何回か観させて貰ってますが、振りや見せ方がパターン化された演目だと思っていたので、全然期待してなかったのですが、

しかもコメディーだから、元々は狂言だから、笑わせてナンボの世界だからね。

やはり、親子共演の妙と言うべきか、

いや、全く親子とは思わせない、役の捉え方、表現の仕方が、大袈裟かもしれませんが、まるで、姫川亜弓と姫川歌子の母娘共演の如く、お二人とも、個として役に向き合っていたし、

表現もオリジナリティーがあって、めちゃくちゃ面白かった!

マジで、隼人氏の芸達者ぶりに感動した!

錦之助さんの玉の井も、「双蝶々曲輪日記」の相撲力士の長五郎と真逆のキャラクターを愛嬌たっぷりにキュートに鬼嫁を演じられていて、

この2人、親子だったけ?と思えたぐらい、親子であることを完全に忘れてしまうくらい2人とも役になりきられていて、本当に素晴らしかった!本当に面白かった!

「双蝶々曲輪日記」の引窓は、初鑑賞だったので、隼人氏演じる役は立派なお侍かと思っていたら、そうじゃない所があって、見せ方が本当に上手かった!

人情味溢れる役柄だったので、芸達者じゃないと演じられないと思った。

錦之助さんの長五郎がまたエエんですわ!

役は24,5歳(人相書きによる)ではありますが、隼人氏と親子であることを微塵も感じさせない役作りに感動!

隼人氏演じる与兵衛とは血は繋がらないが、吉弥さん演じるお幸にとっては、2人とも我が子。与兵衛は前妻の子。長五郎は、血が繋がった我が子。小さい時に養子にだされた。

与兵衛は、長五郎と兄弟であることは知らない。

長五郎は、人殺しをし、捕まる前提で最後ひと目でも母に会いたくでお幸を訪ねてくる。

与兵衛は、その罪人を捕まえる役目。

さて、長五郎の運命はいかに??

人情味溢れた演目で、吉弥さん演じるお幸が泣かせるんよ。

お幸は、与兵衛から長五郎が罪人であることを知る。

お幸は、我が子の長五郎を逃がしてやりたい気持ちと、与兵衛には罪人を捕らえさせて出世してもらいたい気持ちで葛藤するが、やはり我が子を救いたい気持ちが優るんよね。

それが泣かせる!

与兵衛も、長五郎がお幸の実の子であることを悟るんよ。捕まえるべきか逃がすべきか葛藤するんよ。

長五郎は、与兵衛に捕まる覚悟は出来ているが、母お幸の気持ちに覚悟が揺らぐんよ。

笑三郎さん演じる、与兵衛の妻、お早は、お幸の気持ちを慮る役柄。

継母と言えど、与兵衛にとっては母親。そりゃ、与兵衛には出世して欲しいが、長五郎を捕まえてお幸が喜ぶはずがない、ましてや、血が繋がらなくても与兵衛と長五郎は兄弟。長五郎を捕まえることは与兵衛もまた苦しむ。お早は、お早で最善策を見つけようと葛藤している。

四者四様の心の葛藤が絶妙すぎて、めちゃくちゃ良かった。

犯罪は良くない。そんなことは当たり前やねん。

演劇とは、非現実の世界。舞台上では、リアルな殺人は起こらない。全てお芝居。

わざわざお芝居で、犯罪を良くないと説教しても当たり前すぎて全然面白くない。

犯罪者は捕まるべきや!は現実の世界の主張。

この演目では、究極の選択肢においても人情の大切さを謳ってる。

あ、決して犯罪を正当化するわけじゃないよ。あくまで演劇の在り方や見せ方という点ね。

それだけ人情を持って人と接してますか?と問いかけてる演目なんよ。

本当に素晴らしい作品だった。

「身替座禅」は、まさかの囃子方さんの多さにびっくりしましたが、

「双長調曲輪日記」も「身替座禅」も少人数の演者で濃厚な世界観を味わえる素晴らしい演目だった。巡業公演にはピッタリな演目だった。



オープニングには、隼人氏のスッピントークと、まさかの撮影タイムもあり、はい、撮影させて頂きました!

カメラの性能が悪いからピンボケしまくり。

証拠写メ↓


そりゃ、イケメンが客席通路を近くまで歩いてきたらキャーキャー言うわいさ!

(笑)

雷神不動北山櫻

2024-10-15 18:51:17 | 古典芸能
やっぱり、広い歌舞伎座で観るより、コンパクトな松竹座で観る方がええわ〜。

この作品、2012年(松竹座)と2021年(歌舞伎座)と観ていますが、

やっぱ、この作品大好き!!

今回もアッパレじゃ!!

ぶっちゃけ、歌舞伎に関係ないけど、龍神様大好き人間には堪らんエピソードが盛り込まれているから(鳴神ね)松竹座で巡演ラストに選んでくれてありがとうございます!!と言いたい。

有名どころというか、お寺や神社の近く?管轄?にある瀧には大体お不動様が祀られてるんよね。

松竹座の2階ロビーには成田山新勝寺の大阪別院より御本尊の不動明王様が鎮座されていて、

お不動様も龍神様の化身とも言われているし(倶利伽羅龍剣がその象徴)、龍神様は瀬織津姫に市杵島姫様とも深い関係があるから、

松竹座がめちゃくちゃ神聖な場所になっていて、マジ最強パワースポットやわ!!!

雨乞いの札と鳴神が、単独上演される「毛抜」、「鳴神」、「不動」(これは単独上演はないらしい)を繋げる役目になっていて、

最近は「毛抜」ばっかり観ることが多かったので、「鳴神」「不動」、あと安倍清行の登場や早雲王子の最期の場を連続で観れるのはマジで有り難い!

連続で観るからこその可笑しみ、例えば、久米弾正の両刀使い、雲の絶間姫の色気に騙さる鳴神とか、歌舞伎だから抑えられているだけであって、内容は結構エロい!そこがオモロイ!(笑)

伊達の十役や星合世十三團ほど早替わりの連続ではないが、團十郎さんの5役はキャラ設定や役作りが全く異なるので、「憐れみの第三章」のウィレムやエマ並みに役替りを楽しめた。

自虐ネタとは言わないが、安倍清行とか久米弾正とか鳴神なんて、色男團十郎さんにピッタリすぎて本当に面白かった。

この作品のメインイベントは、二幕目の早雲王子のシーンだと思うが、梯子に登って逆さ吊りとか、命がけのシーンなので本当に見応えがあった。

私の中では、雲の絶間姫は中村扇雀さんのイメージが強かったのですが、

中村雀右衛門さんも素晴らしかった!

2021年の時は別の役でしたが、雲の絶間姫はちょっと歳が…って思っていましたが、なかなかの色気と若さがありました。

9月に拝見した楊貴妃が年齢設定的にも高齢の役だったのですが、

雀右衛門さんの雲の絶間姫は、全く実年齢を感じさせない色気と若々しさがあって正直ビックリしました。

っていうか、めちゃくちゃ失礼なこと書いて申し訳ありませんm(__)m

チョイ役と書いたら申し訳ないですが、虎之介君が出ていて、夜の部にも出るんだと思ったら出てなくて残念。

めちゃくちゃ顔が小さいのが3階席からも分かるが、声は誰よりも大きかった。出番が少なすぎて本当に残念。

「毛抜」の秦秀太郎役は、やはり若い方が演じるとリアル。今回は児太郎君が演じてましたが、夜の部の静御前といい、秦秀太郎といい、どちらも儚げな感じがお見事でした。

苔玉君も、昼の部しか出てなくてもったいない。

そうそう、開始早々芝のぶさんも出ていて嬉しかった!

なのに、幹部の方以外は、ちょっとしか出て来ないから本当に残念だった…。

市川海老蔵改め 十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 十月大歌舞伎

2024-10-15 00:43:51 | 古典芸能
2年間の襲名披露公演の最終地、松竹座にて、日にちをずらして昼の部と夜の部を観てきました。昼の部は3階席で、夜の部は1階席で観てきました。

今日は、夜の部を観てきたのでその感想を書きます。

そもそも夜の部は、土日祝のチケットが完売だったので諦めていたのですが、運良く戻りチケットをゲットしたので1階席の一桁台の良席で観させて頂きました。

さすがに2万2千円は高過ぎ!と思いましたが、東京に行って歌舞伎座で観たと思えばどっこいどっこい。

松竹座は歌舞伎座より半分くらいの広さだからめちゃくちゃ観やすいし、役者さんも近いし、オペラ要らずだからミーハー気分で観させて頂きました。


先ずは、右團次さんが忠信を演じる、義経千本桜の五段あるうちの二段目にあたる鳥居前。

偽忠信が狐になるのは四段目なので、鳥居前では、実は狐が化けた偽忠信だと示唆する仕種があるのみ。二段目から伏線を敷いているのが、義経千本桜の面白いところ。

右團次さんの忠信はめちゃカッコ良かった!最近悪役しか観てないから新鮮だった!昼の部も悪役だったし…。

静御前の児太郎君がそりゃまぁ美しいこと!先月の歌舞伎座より正統派な役だったので、目の保養になった。

九團次さんの弁慶もええ声やった!

あー、来年、歌舞伎座で全幕通しがあるのが羨ましい!!

だれが各段の主役(義経以外の役)を演じるのか興味津々。

二幕目が一條大蔵譚。義経の母常磐御前の2番目の夫、幸四郎さん演じる一條大蔵長成が主役の物語。

常磐御前は、幼い頼朝と義経の命を守るために、最初の夫である源義朝の敵である平清盛の妾となって身を捧げた女性。

奢れる平家の滅亡を密かに企んでいた常磐御前。その事実を知った常磐御前の今の夫であり、自称阿呆の一條大蔵の家老の八剣勘解由は一條大蔵の財産?を横領する目論見があり、平清盛に報告しようとしていた。

そこに、実は、阿呆は仮の姿であった一條大蔵が現れ、八剣勘解由を殺す。

八剣勘解由は、源氏の血を引く貴族で、源氏を支持していた。

一條大蔵も常磐御前もお互い真意を隠して、平家の滅亡を望んでいたという物語。かな??

この物語の背景には、

平治の乱で、清盛がライバル源義朝を倒し、その妻常磐御前を妾?自分のものにすることを条件に幼き頼朝と義経の命を救った。

だけども、義朝の家臣は、常磐御前が平家に身を売ったことが許せなかったんよね。

結局は、頼朝と義経を生かしたことが仇となり、平家滅亡へと余儀なくされてしまったわけですが…。

平治の乱?壇ノ浦の戦いをきっかけに、報復されないために子孫を打ち死にせんとする戦国の世へと繋がっていくんよね…。

と思うと、やはり、源氏は好かん!

平清盛が人間的に素晴らしいとは思わないが、日宋貿易とか中々の経営に長けた人やと思う。手段はさておき。

清盛はさておき、その子供達は立派やと思う。少なくとも源氏に比べたら全然マシやと思う。

いくら腹違いの弟とは言えども、追討するって、義経は義経で非はあるが、三谷さんの「鎌倉殿の十三人」に描かれているように源氏は仲が悪すぎるねん!

それにしても、歌舞伎に限らず、第一幕の鳥居前もしかり源氏贔屓の作品や支持者が多いね。私も平家は悪者だと思っていたけど、歴史の勉強をすると、奢れる平家は久からずに皆洗脳されていると思う。

今のワタクシ完全に平家側でございます。

あ、今回の作品選びに文句を言ってるのではないですよ。

一條大蔵を演じた幸四郎さん。やはり芸達者!うつけと真面目さの演じ分けがお見事でした。

常磐御前を演じた雀右衛門さんが、昼の部の感想でも書きますが、生き生きしていてビックリ。

以前拝見した時はお年で体力が衰えたのかな〜と思っていましたが、全然衰え知らずだった!素晴らしかった。

三幕目が口上。四幕目が夜の部のメイン、連獅子。

口上では、團十郎さんの睨みをオペラなしで拝見できて感無量!

いつ以来ぶりの勸玄くん改め新之助君だろうか?歌舞伎座の襲名の時は観れなかったからな…。あ、口上は観たか…。

あれから2年か…

を思うと、しっかりしてきたな〜と思う。が、反面、まだ声変わりしてなかったことに驚いた。

そうか、私は小学6年で声変わりして合唱コンクールで高い声が出なくて口パクしてたからな〜。小6は11歳か…。だったら10歳はまだ声変わりしないか…。

私が知ってる新之助君は、舞台に立ってるだけでアイドル並みに客席フィーバーぶりだったからね。

よくぞ、連獅子を選んだな〜と思うくらい頑張ってた。

最近は親子で連獅子をすることが多くなっているが、直近では私が観たのは松緑さんと左近君の連獅子ではあるが、

團十郎さんと新之助君の連獅子は、パパの息子への溺愛ぶりが伺える團十郎さんの愛情が伝わってきた。あ、成長を喜ぶ父親って意味ね。

毛振りの前に登場する、新之助君演じる狂言師左近を笑顔?表情が柔らかくして見つめている右近役の團十郎さんの表情が印象的だった。

親獅子になってからは笑顔は皆無だったけどね。

やっぱ、團十郎さんは、年を重ねても色気が半端ねーな。こりゃモテるわ!

團十郎さんの毛振りは随一やな〜と思うくらい力強さがあり、節というか、グルグル回すんじゃなくて、反時計回りに上(かみ)から下(しも)に毛を移動させるあの動作が大変素晴らしかった。単純にグルグル回す毛振りはカッコイイとは私は思わない。

新之助君も頑張っていたけども、途中から力が尽きてきたかな〜が視える毛振りだった。

ぶっちゃけ、松緑さんと左近君の連獅子ほどの感動はなかったが、新之助君の成長が伺える連獅子ではあった。

連獅子って、毛振りが見せ場ではあるが、それ以前に足運びであったり足拍子や細かい動きが大事な演目だと思うんよね。

おばさまのアイドルの勸玄くんが新之助襲名の責任感を感じる重みのある足拍子だった。

私もちょっとだけ日舞の練習をしたことがありますが、新之助君よりはるかに体重があるのに、新之助君みたいにあんな立派に床を踏むことが出来なかったよ。それだけでも既に尊敬レベル!

次、連獅子、もしくは毛振りをする時はもっと成長してるやろね。

今はまだカワイイでいいけど、声変わりしてからが新之助君の本番やな。



秀山祭九月大歌舞伎

2024-09-27 00:33:04 | 古典芸能
歌舞伎座千秋楽を観てきました!「勧進帳」だけ観てないですが…。

今回は、「摂州合邦辻」観たさで歌舞伎座に行きました!

いや〜、菊様の玉手御前、素晴らしい!

私が今まで観たことない菊様の役柄だったけに、菊様自身は何度も玉手御前を演じられていますが、ポスターからも伝わってくる全身から漂う魔性性にめちゃくちゃ惹きつけられました!

ブロマイド買っちゃたよ。

あー、合邦庵室の場だけでなく、四幕通しで観たかった!

らい病になった継子俊徳丸に恋する玉手御前。     

夫がいる身でありながら、許嫁がいる継子に横恋慕する玉手御前。

俊徳丸を追って実家まで戻ってくる。

娘の不義に娘を刺してしまう父親。

俊徳丸がらい病に罹ったのは玉手御前が毒を飲ませたからではあるが、その理由が…。お調べ下さいませm(__)m

俊徳丸を生かしたかった気持ちも分かるが、やはり俊徳丸に恋していたとしか思えない菊様の玉手御前だった。

俊徳丸にらい病の毒を飲ませた正当な理由はめちゃくちゃ分かる。だからといって、俊徳丸と許嫁の浅香姫と別れさせる理由には結びつかない。そこには下心があったとしか思えない。

玉手御前にとっては気の毒なラストだが、俊徳丸には有り難いラストではあるけども、

いくら俊徳丸のらい病が治ったとて、玉手御前が死んでしまったら、玉手御前の意思に反して、俊徳丸か兄の次郎丸のどちらかが死ぬ運命にあると思うんよね。らい病は治らなかった方がよかったのかとついつい考えてしまう結末だった。

それにしても、寅の月寅の日寅の刻生まれの奇跡はめちゃくちゃ斬新な発想だと思った。

玉手御前役の菊様は言わずもがな、玉手御前のお父さん合邦を演じた歌六さんもめちゃくちゃ良かった!

めっちゃええ声!

次の演目「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」にも出演されてましたが、見た目が全くの別人で合邦と同じ人物だとは思えなかった。ええ声ではあるけどね。

その「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」は、唐の国に渡った空海の物語で、ファンタジックな物語でした。

楊貴妃が登場するので空海と同じ時期の人物かと思ったら、ウィキペディアで見る限り全然重なってない。

ということは、物語に出てくる楊貴妃は、幽霊ではなく、実はまだ生きていたと解釈したほうが正しいのかもね。そんな感じの物語だったからね。

物語自体には大きな感動はなかったけど、

高麗屋三世代を拝見出来たことが嬉しかった。

白鸚さんがお元気で良かった!まだまだ貫禄があった。

幸四郎さんは元々お芝居上手な方なのは存じてますが、失礼発言しますが、御子息の染五郎君がちゃんと歌舞伎役者だったことに驚いた。

正直、染五郎君はバラエティーやインタビューで話してる姿しか見たことがなく、覇気がなくおっとりした印象しかなかったからビックリした。

めっちゃ上手いやん!しかもイケメンやん!?

いや〜、今の若い役者さんのお芝居を見たら、ひと昔の女遊びは芸の肥やしと言っていたのが当たり前の時代が嘘としか思えないね。

ただの女好きやん!?としか言いようがない。

ま、一般市民にはない色気はあるか…。

っていうか、今の若い歌舞伎俳優の実力が凄い!としか言いようがない。

とても女遊びしまくってるようには見えんしな。

本当に真面目な子が多いんやと思う。

それはさておき、白鸚さん、幸四郎さん、染五郎君の三世代が同じ舞台に立ってる姿が本当に感慨深った。ストーリーはさておきね。

午後の部は、幕見席で「妹背山女庭訓」だけ観させてもらいました。「勧進帳」は早々に幕見席完売だった。

「妹背山女庭訓」は、歌舞伎版ロミオとジュリエットと言われるだけあってラストが切な過ぎる!

すすり泣きがあちこちで聞こえてきた。と同時に寝てる方々もちらほら。

ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、台詞の間が長くないですか?もっと早く台詞を喋ったり義太夫で語るなりした方が良いのでは?と思ってしまった。実は私も睡魔に襲われた。

それはさておき、

物語が本当に不条理過ぎて、今の世界情勢にピッタリな物語だった。

いやいやいやいやいやいや、

親が子を殺すって…。

我が子を殺さないといけない背景こそが、マジ世界情勢と同じ。

殺さずに済む方法はたくさんあったはずなのに。ま、子供同士が駆け落ちしたとて、親が入鹿に殺さたとは思うが。

マジ不条理!

愛し合う子供同士を演じた左近君と染五郎君がいい味だしてた。

左近君の雛鳥がま〜儚げで、所作も丁寧で、間違いなく玉三郎さんのご指導があったと思いますが、めちゃくちゃ良かった!

誰かに似てる!とずっと思い巡らしていたけど思い出せなかった。

その千鳥の恋人?想い人の久我之助役の染五郎君の、午前の部のイケメンぶりと打って変わって、弱々しさ?雛鳥の儚げと違う立役の儚げさが上手く嵌まってた。

もうさ、松緑さん演じる大判事清澄よ、さっさと介錯したれよ!と思ってしまった。

その久我之助のお父さん役の、最近めっきり東京でしか拝見できなくなってる松緑さんがめちゃくちゃ目力が強く貫禄があり、感情表現も豊かで、ラストの息子を介錯する表情と介錯後の表情が見ていてこっちまで心苦しくなった。

雛鳥は生きてはいないが、2人に祝言を挙げさせる姿や2つの首を持つ姿など、親としても人間としてもやりきれない表現が本当に素晴らしかった!

ただ台詞回しがゆっくりだったのが睡魔と戦わざるをえなかったが…。

雛鳥のお母さん役が玉三郎さんで、松緑さんは台詞のテンポがゆっくりだったが、玉三郎さんは途中から普通に発してくれたのは良かった。

入鹿に入内したくない、入内するくらいならいっそ死んだ方がいいと思う娘の気持ちもわかってるし、久我之助を生かしたい気持ちもあり、親としては本当に複雑な心境の表現が素晴らしかった。娘を手に掛けた後の表現も素晴らしかった。

親同士は敵同士。だが子供達は愛し合っている。まさにロミジュリの世界観。

最後は親同士仲直り?する玉三郎さんと松緑さんの2人の表現もまた心を打つものがあった。

舞台中央に吉野川が流れ、下手が妹山(大和国)、上手が背山(紀の国)の設定が良かった。

まるで「あかねさす紫の花」の中大兄皇子と大海人皇子と額田王の三角関係を大和三山になぞらえた歌を思い出した。

今回は、「勧進帳」を観ることが出来なかったのは残念でした。

というか、今回限りでしばらく東京に行くことが出来ません。

10月から異動で勤務が変わり公務員みたいに平日勤務になり、なんといっても給料が減る。

土日に東京に行く経済的余裕がない。土日は交通費も高くなるし、安いチケットもすぐ売りきれるし…。

ま、東京に行かなくても仙台にいくことはあるかもですが…。

12月の玉三郎さんと團子君の「天守物語」も観ることができません。

だからといって関西に来てくれたら観れるとも限らないし。

もし次東京に行くことが出来た時は経済的余力が出来たと思って下さい。ま、興味ないと思いますが…。