枯れ葉

2023-12-30 15:46:41 | 映画
今年最後の投稿です。

先ず初めに、

石井裕也監督、役者の皆さん、日刊スポーツ大賞受賞おめでとうございます! 

ということで、アキ・カウリスマキ監督、引退宣言後復帰第一作を観てきました。

申し訳ないですが、いきなり愚痴を書かせて頂きます。

もうさ、前の席の方の頭が邪魔すぎて、字幕は読めないわ、集中できないわで散々な82分でした。前のめりで字幕が見えないなら注意しようと思いましたが、ちゃんと背もたれに背中をつけていたので文句の言いようがない。

ということで、ほとんど字幕が読めなかった&集中もできなかった&だからといってもう一回観たいとは思わない&パンフレット買ってませんを前提で感じたことを書きます。

字幕は読めなかったけど、監督の独特の緩さ、配色、労働者階級もの、60年代70年代音楽使用といったアキ・カウリスマキ監督の世界観が全面に広がっていて、集中出来なかったのが本当に残念でならない。

字幕は1文丸々読めないことが多かったけど、なぜアキ・カウリスマキが復帰しようと思ったのかは、ラジオの内容が全てだと思った。

ズバリ、ロシアのウクライナ侵攻のニュース。ラジオからは、このニュースしか流れない。

アキ・カウリスマキは、自分の使命として世界中に反戦を訴えなければならない、という想いにかられて映画製作を再開したのでは?と思った。

ラジオのニュースと物語は直接関わってはこないが、命の尊さはメッセージとして打ち出していたと思う。主人公が路面電車に轢かれて意識不明の重体になるシーンからね。

主人公の男は、自称ウツとアル中で仕事中もお酒を飲んで首になること多々。その男に恋する女性も直接誰かに迷惑をかける行為はしていないが、不運が重なり職を転々とし、最終的には男性がするような重労働で働いている。

男はアル中やわ、電話番号が書いているメモをなくしてまうわで、女性の方は、彼からの電話がないため振られたと思い込む。2人の関係はすれ違うばかり。

男は、彼女に会いたいが連絡先が分からないから初めてデートした映画館で度々待っている。彼女もまたその映画館に行くがすれ違うばかり。

そんな中でやっと再会でき、男は、彼女の住所を書いたメモも今度は失くさないようにポケットではなく財布にいれる。

男は彼女のために酒を止める決心をし、彼女に報告する。その夜、彼女の家に行く約束をするも、彼は家に来ることはなかった。その理由は、既に記述済。

まだ、お互い手を差し伸べている状態のすれ違いなら、いつか赤い糸が結ばれる可能性は高いが、片方が手を引っ込めたらもうすれ違うことはない。それが離婚だと思うんよね。

まだお互い気持ちが残ってるなら、復縁も可能だけど、少なくとも片方に気持ちがないなら復縁はない。

それは、戦争でも同じことで、手を差し伸べ合うことを拒否したら平和なんてない。誰得か分からない死者が増えるだけ。

ナポレオンや日本の戦国武将のように、指導者自ら戦地に赴いているないざ知らず、ハマスのように、今どこで何してるん?状態で、指導者の命は確実に守られている。なんのために兵士は戦地に赴いて殺し合うのか、全くもって意味不明。なんで疑問に思わないのも理解不能。まさしく「カイジ」の世界が、今現在繰り広げられていることに誰も気付いていないのか?

話が逸れましたが、私が言いたいのは、お互い、もしくは片方が手を差し伸べるのをやめたら固い絆で結ばれることはない、ということ。

ぶっちゃけ、「枯れ葉」の世界観は、ファンタジー要素に満ち溢れてる。ご都合主義に満ち溢れた展開。

自分の家族がアル中で死んだのに、同じアル中の人間を好きになるか?一緒にいたいと思うか?酒をやめたと言われて素直に信じられるか?しかも名前すら知らない相手なのに。大事なメモを失くされて…。

現実的に考えても、普通に考えても恋愛対象にはならないはずやん?

でも、アキ・カウリスマキのメッセージは、手を差し伸べる気持ちや相手を信じる気持ちの大切さを訴えていると思うんよね。少なくとも片方が諦めたら関係は終わるんです。

人生、恋愛に関係なく、不運であったり、言葉足らずや誤解が原因で上手くいかなくなることは多々ある。修復不可能になることもある。すれ違いのまま終わりを迎えることもある。諦めたら、続くものも続かなくなる。

後悔先に立たず、という言葉通り、後悔するなら最初からするなよ、って言われるだけだから、選択と決断は慎重に冷静にしないといけない。

人生は、映画と違って思い通りにはいかないけど、まだまだ諦めるな!ってアキ・カウリスマキは言いたかったと思うんよね。

と私は解釈しました。

今回のアキ・カウリスマキは、究極の恋愛を描いているなーと思った。

ぶっちゃけ、その恋愛上手くいくの??と疑問しか残らない展開ではあったが、何度も書きますが、諦めたら終わりになるので、

アキ・カウリスマキ自身、また映画制作してくれると確信してます。

前の席の方の頭が邪魔すぎて、集中して観れませんでしたが、っていうか、たまたま土曜日だからかもしれないが、ほぼ満席。アキ・カウリスマキのファンの多さに驚いた。

彼の世界観は健在なのは伝わったし、まだまだ日本には根強いファンがいることをアキ・カウリスマキにも伝わったと思うので、次回作が待ち遠しい。

今日は、あまりにもストレスが半端なかったので、鑑賞後、阪神・JR野田駅の近くにある「鯖や」本店に行って二千円プラスαの鯖寿司を購入し、家に帰って早速平らげました(笑)

さすがTVで取り上げられるだけあってめちゃくちゃ美味しかった!

小さな頃は、鯖寿司の薄皮(当時は干瓢とは知らなかった)の存在が気持ち悪くて食べられなかったのに、また、若い頃に、鯖アレルギーで全身に蕁麻疹が出来て皮膚科通いし、それ以来鯖自体怖くて食べなくなったのですが、数年前にたまたま職場で奈良県の名産である柿の葉寿司を頂き、その旨さに鯖寿司の虜になってしまった。治療のお蔭で蕁麻疹の心配はもういらない。

奈良出身の友達と電車に乗って柿の葉寿司名店を巡って一番を探し回ったりするくらい鯖寿司が大好きになった。あ、鯖寿司と柿の葉寿司の鯖寿司とは微妙に異なる…。


最近もスーパーで安い鯖寿司を買って食べたがやはり味が劣る。やはり、本格的な鯖寿司が食べたくて「鯖や」本店で買ってきましたが、肉厚で本当に美味しかった。ストレスも即解消!藁


では、今年最後の挨拶として、

いつも読んで下さってる方、たまたま読まれた方、毎度ながら下手くそな文章でご迷惑をおかけしてますが(本人、直す気なし。独自スタイルになっているため)、

皆さん、ありがとうございました!

今年は、映画ユーチューバーさんの影響で、映画鑑賞数が圧倒的に増えた1年でした。今年は、良作が多く、来年3月までの賞レースの結果が楽しみでなりません。どの作品も満遍なく受賞して欲しいくらい素晴らしい作品、脚本、キャストでした。同じく舞台も。今年も散財した1年でした。来年も散財確定済。藁

来年も映画や舞台の感想を中心にブログを書いていきます。

お暇でしたら、また読んでやって下さいませ!

来年も、皆さんにとって、小さなハッピーがてんこ盛りの1年になることを心から祈っています。

本当に本当に、今年1年ありがとうございました。


翔んで埼玉!〜琵琶湖より愛をこめて〜

2023-12-27 19:33:29 | 映画
これって、埼玉県のみならず、登場する府県民の風土や県民性を風刺し茶化した捧腹絶倒のおバカコメディー作品やんな?

御当地のくだらないディスり合いがメインの物語やんな?

えっ?これのどこが茶番劇なん???


めちゃくちゃ本気の郷土愛に満ち、意図的でないにせよ観光誘致アピールしまくりながらも、県民の誇りをかけ、粉もんとツッコミと豹柄の最強文化を誇る大阪府の日本大阪化計画に立ち向かうため、他の近畿圏が埼玉県と一致団結して大阪府の野望を阻止する、

愛と勇気とロマン溢れる壮大活劇やんかいさー!!!

これがディスり合いというのか???

いやいやいやいや、事実やん!?

(笑)

これぞまさに

ディスり愛!

(笑)

奈良県が誇るお笑い怪獣のさんまさんを出すんやったら、特別枠で埼玉県代表としてしのぶさんも出して、大阪連合をコンテンパンにしてほしかったな!

(笑)


いやー、それにしても、今まで泣きと笑いが交互に襲ってくることはあったけど、同時に襲ってくるのは初めての経験やったわ!

まさか、看板のとび太くんに泣かされるとは思ってもみなかったよ!藁

キャスト陣もスタッフも本気で取り組んでいるのが伝わってきてめちゃくちゃ感動した!

脚本もめちゃくちゃ素晴らしかった!

よくぞここまで滋賀県をリサーチしたね。御当地グルメのサラダパンと鮒寿司は兵庫県民の私でも知ってるくらい超有名だからね。サラダパンなんて、とうとう兵庫県のスーパーにまで進出してますから!近所のスーパーに売ってた時はビックリした!まだ食べたことないけど…(汗)

両手お釈迦様ポーズの埼玉ポーズからスライドして滋賀県の県章に変わるなんて、素晴らしい発見とセンス!!

ほんま、とび太くんエピソードは、マジ泣けた。見せ方と扱い方が上手かった!

ここまで追及してくれたら滋賀県民じゃなくても感動しかない!


滋賀県のみならず、近畿圏の府県を巻き込むエピソードのてんこ盛り。禁断の白い粉と粉モンをかけたのも良かった!

禁断症状が関西弁と裏拳ツッコミって…、めちゃくちゃセンスいい!

ぶっちゃけ、生まれてこの方、裏拳ツッコミしてる人、吉本新喜劇以外で見たことないねんけど…藁

なんでやねんっ!👋←意味不明!

m(__)m

そこにきて三重県エピソードはマジ笑った!上手く入れてきたな!ホンマそうやねん、いつの間にか中部地方に組み込まれたもんな。

あと、タワーエピソードは、マジ秀逸!!

天才的展開!!!

脚本家の脳みそが完全にバグって神がかりな展開に転がっていったのが視えてくるようやわ!藁

今回は関西ご贔屓ストーリーになっているかと思いきや、しっかり地元のタワーエピソード、総武線武蔵野線エピソードで埼玉県の横のつながりをアピールし、挙げ句の果ては、埼玉県の2大地域、旧浦和市と旧大宮市(今は旧与野市も加えてさいたま市)の対立と友好?まで描き、

しかも!

地味に関西との友好シーン(出産エピソード)まで描いていたね。伝説パートでは、大阪が悪者扱いされていたのに、現代パートでは決して大阪を悪者にしない展開にもめちゃくちゃ感動した。

とうとう近畿圏まで巻き込んだトンデモ脚本になっていると思っていたのに、本当に郷土愛に満ちていて、めちゃくちゃ素晴らしかった!



ぶっちゃけさ、タイトルが出るまでは、これ面白いのかな?と半信半疑でしたが、GACKTさんが白浜に漂着し、杏ちゃんが現れてからもう杏ちゃんの演技に釘付けだった。

今作は特に杏ちゃんとラブリーさんがめちゃくちゃ役に徹してくれていて、この2人が作品を牽引していたと言っても過言でないくらい本気の表現に感動した!

杏ちゃんとラブリーさん以外も、堀田真由ちゃん、加藤諒君も捨て身で表現されていて、決しておバカコメディーの演技ではない本気の演技に感動した。

っていうか、チョイ役の方々も含め本気で役を演じてませんでしたか?観客を笑かせようという演技でなく、役に徹した演技。

っていうか、チョイ役なのにめちゃくちゃ衣装やセットにお金をかけているのもスタッフの本気が窺えます。

どんぐりさんこと竹原芳子さんのチョイスも絶妙!

現代パートのアキラ100%さん和久井映見さん夫婦も本気で郷土愛をアピールしてたし、その夫婦と対照的な存在の娘役の朝日奈央さんも熱血夫婦を引き立てる素晴らしい温度感だった。

GACKTさんは立ってるだけで麗しいし、ふみちゃんは出番は少なかったが、粉モンの丸阪ウィルスに侵され関西弁とツッコミ中毒で禁断症状を抑えきれない様がマジ絶妙だった。

杏さんの滋賀のオスカルが、本当に魔夜峰央さんの世界観を見事に体現していてめちゃくちゃ素晴らしかった。

ヒール役のラブリーさんも本気で演じていたし、同じくヒール役で、役の上でもラブリーさんの奥様役で兵庫県知事役の藤原紀香さんの自虐ネタの披露も覚悟を感じた。

同じくヒール役の京都府知事役の川﨑麻世さんの京都弁もセンスがあって良かった。

このお3名さんに限らず、キャスト陣の捨て身と本気の演技にマジ感動した!!

笑いと感動(泣き)が同時に襲われる感覚は本当に初めてでした。

日本埼玉化計画によって、北は北海道、南は沖縄まで日本全国津々浦々まで御当地アピールで日本を盛り上げていって欲しいと願わざるを得ない!


ということで、公開してから1ヶ月が経ち、やっと観ることができました。

実は、市子より先にこっちを観てきたんですが、あまりにも脚本が素晴らしすぎて、市子の脚本がまさかの悪目立ちしてしまったのは言わずもがな。

翔んで埼玉の方が脚本が良かった??

はい、郷土愛を謳った素晴らしい作品だと断言できます。

少なくとも監督の伝えたいことが明確だった。これはディスりじゃない、私には御当地アピールにしか映らない。

予告だけだとおバカコメディーとしか思わなかったけど、中身は、本当に御当地愛に満ちたド真面目に役を演じている極上エンターテイメント作品。バカバカしさは微塵だけ感じるくらいで、残りは真剣勝負だった。

これはマジシリーズ化して欲しい!




市子

2023-12-27 15:30:00 | 映画
ぶっちゃけ書いて申し訳ないが、結局何を描きたかったのか、さっぱり伝わってこなかったのが非常に残念。

ヤングケアラーの実態を描きたかったのか?貧富の差を描きたかったのか?私にストレートにぶつけてくる特別な何かがなかった。

杉咲花ちゃん演じる市子の闇はめちゃくちゃ理解できる。花ちゃんの演技も関西弁も自然で良かったんだよ。演技に関しては文句なし。

だからといって、市子の闇や花ちゃんの演技が作品を昇華することはなかった。私にはね。

構成も、時間軸を交差させたり、登場人物をチャプター分けて登場させたとて、凝った割には伏線回収の役割りを果たしてない。倉悠貴君は森永悠希君の伏線だったし…。

そもそも、お母さんもチャプターにしないといけなかったんじゃないのか?お父さんさんも…。ま、お父さんはない方が自然だけど…。

ぶっちゃけ、日付は要らなかったと思う。分かりやすく説明したかったんだとは思うが、特別な理由になっていない。

市子の何を伝えたいのか、作品として何を伝えたいのかが最後まで伝わってこなかったのが、役者陣の演技が良かっただけに本当に残念でならない。

そもそも、市子の闇は理解出来ても、共感は一切出来なかったのが本当に残念でならない。

あと、若葉竜也君演じる恋人がなぜ市子に惹かれたのかも正直最後まで伝わってこなかった。

森永君演じる同級生が市子に惹かれる理由はストーカー行為からも推察できるが、若葉君の場合は…、謎。

真実が明らかになっても市子を守りたい気持ちに正直共感できない。私なら真実を知ったらドン引くし、正しい選択へと導く努力をすると思う。あれだと彼氏もストーカーにしか映らなくないか?彼氏もまた市子に依存してる人物に映らないか?それが脚本家の意図だったのか?

と思うと、若葉君演じる彼氏の描写も足りなかったと思う。

彼氏と市子の日常をもう少し描いた上で突然の市子の失踪の方が彼氏に共感できるだろうし、市子に対する見方も変わったと思う。あの見せ方だと彼氏にも難ありな感じも受ける。市子の涙だけで彼氏の内面を描写していることにはならない。

せめて、市子か彼氏のどちらかに共感できる描写、脚本にしてほしかった。

そういう意味では、中村ゆりさん演じるお母さんの方が共感できたな。お母さんの見せ方は、説明がない分逆に良かった。台詞もお母さんの生の台詞に感じた。

全編通して第三者目線で市子を描きたかったのは分かるが、あれだとホント目線が足りない。

市子の出生がキーとなるわけだから、もっとお母さん目線やお父さん目線で家庭内の市子像、幼少期の市子像を増やす必要性があったと思う。少なくともお母さん目線はもっと増やすべき。お父さんは致し方ない。

第三者目線を通して、観客も若葉君演じる彼氏と一緒に共感していけたと思うんよね?

家庭シーンを増やすことで、もう一人の市子の匂わせがカギになってくると思うし。ま、家族関係は、第三者目線では十分描けていたが…。

日付の説明もチャプター分けも本当にいらなかったと思うよ。

いずれにせよ、市子に関わる人物の目線ももっと必要だったと思うし、少なくともお母さんと彼氏目線が一番必要だったと思う。
 
そこから市子像を想像させる方法もあったと思うんよね。

お祭りシーンだけじゃ、彼氏にも市子にも共感できない。

市子と同じく、主人公の過去や闇を炙り出していくパターンの作品として名作なのが、藤山直美さん出演の「顔」。こっちの方がよっぽど主人公に共感できる見せ方だった。

悪女として描きたかったのなら、もう少し小悪魔に演じて欲しいし、そうじゃなくても、市子の魅力をもう少し演技としてではなく脚本として膨らませて欲しかったな。

ということで、超久々に拝見する花ちゃんのお芝居。流石な演技でした。

若葉君も中村ゆりさんも、森永君も良いお芝居してたんだよ。

物語の展開として、森永君のエピソードは秀逸なんだけど、市子をどう描きたかったのか最後まで謎だった…。

追記:今回は、レビューを読まずに拝見させてもらい、鑑賞後に読ませて頂きましたが、圧倒的に賛の意見が多かったですね。私が穿った見方をしただけかな…とちと反省。でも、これが私の第一印象なので訂正はしません。

ファム・ファタールね…。これは確かに言い得て妙だね。それは思わなかったけど、ってなると、最初から市子の見方が変わってくるね。新たな視点だったよ。





PERFECT DAYS

2023-12-23 23:32:43 | 映画
遅ればせながら、役所広司さん、カンヌ男優賞おめでとうございます!

「すばらしき世界」で最優秀主演男優賞を獲って欲しかったからめちゃくちゃ嬉しかったです。

正直、受賞された時に、公衆トイレの清掃員役での男優賞という響きに、最初は違和感しかなく、作品自体、期待と不安の半半でしたが、百聞は一見にしかず、実際に拝見させて頂いたら、役所さんの演技も作品も全く文句ありませんでした。

役所さんのカンヌ男優賞は、「万引き家族」がカンヌでパルムドールを獲った時、ケイト・ブランシェットが安藤サクラさんの演技を大絶賛された理由と同じだと解釈してます。

台詞で表現されない心の演技に対して高く評価されたと思っています。ま、同じ泣きの演技ではありますが…。

作品としては、間違いなく賛否両論分かれるというより、圧倒的に否が多いだろうと思いました。

訂正:圧倒的に賛が多かった。でも、私と同じ意見の方にはまだお見かけしない。


清掃員の主人公の日常の変わらぬルーティンが延々繰り返し映し出され、少しずつ変化は伴うが大きなうねりはない。大きな事件が起きるわけでもない。

清掃員として働く理由やバックグラウンドも一切説明がない。完全に観客の想像に委ねられている。主人公を取り巻く登場人物から想像するしかない。その想像が面倒くさい方には絶対受けない作品だと思いました。

なので、妄・想像族のワタクシには、圧倒的に

賛!賛!賛!でございます。

ぶっちゃけ書きます、

これっ、ワタクシのために制作してくださいました???

と自意識過剰になってしまうくらい、

役所さんと麻生祐未さんのシーンで急に涙腺が緩んでしまいました。ラストの役所さんの表情にもウルウルしまくってしまった。

一切説明ないんだよ。小さなキーワードから人物像や人間関係を想像するしかないだよ。

でも、その小さなキーワードが、実は、ガラスの破片のように私のハートに突き刺さっていて、麻生祐未さんのシーンで痛みを伴う涙に変わった。

あたかも私の未来を予言するような主人公の存在に涙しかない。

私も1人で独りです。誰かと付き合ったり結婚する気も一切ない。主人公と同じく心の深淵の奥深くに未だに癒されていない闇はある。

ただ主人公と違うのは、私には兄貴はいるが、両親はもう亡くなってこの世にはいない。

この違いだけで、生きてる世界、見えている世界が全然異なる。

もし、私の親父が今も生きていて、認知症にもならず健康だったら、今ここでブログを書いている私は存在しているのだろうか?独りでも幸せに生きているだろうか?

まだまだ親父を恨み続けて生きているかもしれないし、主人公と同じように見えない呪縛に捕われて狭い世界で満足して生きているかもしれない。

だからといって、今が幸せとは言えないけど、少なくとも主人公の闇からは少しは解き放たれていると信じたい。

ぶっちゃけた話、役所さんと祐未さんの会話で、母親が先に亡くなり、入院中だった親父の世話をしなくてはならなくなった時の兄貴との会話がフラッシュバックされた。

過去の自分と未来の自分のパラレルワールドが広がった。

間違いなく、観る人によって主人公の捉え方が異なるはず。

この作品が面白くなかった方は、幸せな家庭に生まれ育てられたことに感謝してください。と、ついつい言いたくなってしまう。

それくらい、私には自分のパラレルワールドを観てる感覚だった。

中野有紗ちゃんの登場から物語が動き始め、麻生祐未さんとのシーンによって、素晴らしい作品に昇華しました!

ということで、今年のカンヌの注目作のラスボス的作品を観てきました。

高速ビルが建ち並ぶ大都会東京の裏の側面。令和のシンボルのスカイツリーがそびえ立つも、その足元では、まだまだ庶民的でかつ昭和文化が残る亀戸や押上近辺を舞台に、トイレ清掃員として働く主人公の生き様、無意識なる心の闇の正体は説明されぬままではあるが、主人公の変わらぬ日常が、人々との出会い、小さな出会いによって、少しずつ変化し、三浦友和さんとの会話によって、大きなうねりを予感させて幕。

私には、主人公の闇が手に取るように視えてきて、というか、自分に重ねているだけですが、今でも涙が流れてくる。

パラレルワールドで生きている私を観ているからなのか、パラレルワールドで生きている私を想像しているからかは分からないが…。これが「ラビット・ホール」でもあり「エブエブ」の感覚なのかもしれない。

正直、この作品がオスカーの日本代表なのが未だに違和感しかないんだけど、プロデュースが日本なら監督がどこの国籍でも日本代表になれるのか?日本を描いているから日本代表になったのか?基準がよく分らん。

それはさておき、監督兼脚本のヴィム・ヴェンダースのセンスは素晴らしかった。

ワタクシの大好きな妄想像できる作品だったしね。

私も知らない東京のもう一つの顔を丁寧に映し出していて、ま、時々、

出勤時は家のカギを開けたままなのに、姪が来た時はカギを掛けていたり、三浦友和さんが急に現れるというシチュエーション的違和感はあるけども、作品の出来としては全く文句ございません。

トイレ清掃員の主人公の1日のルーティンが何度も繰り返されるのを観ながら、役所さんの表情にめちゃくちゃ癒されてた。

今までの役所さんは、強面の役が多かったけども、今回は、寡黙で本当に必要な時しか喋らない変な人。でも、他人に対してはまるで、氏神様みたいに柔和な笑顔で見守る人物。私ならストレスが溜まりそうな仕事なのにプロとしての誇りを持って清掃員として働いている。

主人公は何故独身なのか、盆栽を大事にしているのか、神社の枝葉の写真を撮るのか、もちろん、トイレ清掃員をしているのか、主人公の心理行動の一つ一つがカギとなっている。だが明かされることはない。

役所さんの表情からは闇は一切見えてこないが、言葉を発しない行為からは闇しか見えない。日々変わらない日常を維持しながらも、無意識では変わることを望んでいる人物造形が大変素晴らしかったです。

役所さんの男優賞は本当に納得もんです。

役所さんに限らず、チョイ役で登場する役者さんのチョイスがあまりにも素晴らしくて、

研ナオコさんなんて、ほぼシルエットなのに圧倒的な存在感。犬山イヌコさんは、まるでコメディエンヌ的存在。第一声で思わず笑ってしまった。

甲本雅裕さん、安藤玉恵さん、芹澤興人さん、深沢敦さん…、その他沢山の方が出演されていて、その存在感にもう目が離せなかった。松金よね子さんは分からなかった。

これが、ヴィム・ヴェンダースの世界観なの?と疑いたくなるくらいチョイ役の存在感が強い。

結構台詞がある柄本時生君がめちゃくちゃイイ存在感だった。ほんま、柄本明さんファミリーは怪優揃いやな!父ちゃんも兄ちゃんも弟も兄嫁も、最高過ぎるわ!

時生君の恋人役のアオイヤマダさん、姪の中野有紗ちゃん、居酒屋の女将役の石川さゆりさんもいい存在感だった。

地味な作品の割には結構有名な方が起用されていて贅沢なキャスティングでした。

田中泯さんの存在が、まさかの象徴だったとは…見せ方が上手かった。

ヴィム・ヴェンダース作品は、「ベルリン、天使の詩」しか観たことないのですが、日本をめちゃくちゃ愛してくれているのが伝わってくる映像群でした。

大都会の東京を象徴する姿ではない、今も残る下町の昭和の姿。最近、東京に行った時にも墨田川沿いも歩いたし、橋を渡って両国駅まで行ったし、都民でもない私でもちょっとした馴染み深いショットが多かったです。

ひょっとしたら、関西人には馴染めない作品かもしれないので、関東圏の方なら地理的なものも含め楽しめるかな?と思いました。


それにしても、今年上映作品の男優賞は接戦やな。女優賞もね。誰が獲っても文句なし。ほんま、一つ一つの賞レースの結果が楽しみでしかない。

っていうか、本作は今年上映作品に含まれるのか???

ラインの黄金

2023-12-21 21:56:35 | シアターライヴ
メトロポリタンオペラもかなり斬新な演出だったが、ロイヤルオペラハウスも更に上をいくアプローチに驚愕!

メトロポリタンオペラが芸術性が高い前衛オペラなら、ロイヤル・オペラハウスは同じ前衛でも、日本演劇で例えるなら間違いなく蜷川カンパニーや寺山修司氏の天上桟敷のような忖度なしの前衛。

マジ、めちゃくちゃ攻めてきていてビックリ。これ、R18指定じゃないの?と思ったくらい、私が想像していたオペラの概念を完全に覆された。

最初にまさかの完全フルヌードのおばあちゃんか出てきて、そういう衣装なのかと思いきや、オッパイやお尻の皺の垂れ具合がリアルだな~と思ったら、本当にリアルだった。しかも台詞はないの全編通して登場する。後々分かるがまさにヴォータンの守護天使的存在。森羅万象のすべてを悟り尽くし、ヴォータンを見守り導く存在。

やはり、シェークスピア大先生が生まれた国でたけあって、オペラなのにめちゃくちゃ演劇要素が強く、ただ台詞が「ミス・サイゴン」みたいに歌で進行するだけであって、歌う時だけ、私オペラ歌手です!といった誇張感がない完全にお芝居要素が強いオペラでしたね。実は、オペラだけでなくミュージカル、ストーレートプレイの出演経験かあるのでは?と思ったくらい表現力が圧巻!しかも、ヴィジュアル至上主義の私でも、文句ない配役。

ライン川の地底に流れる黄金の泉(ラインの黄金)で、「愛を諦めた男のみがラインの黄金から指輪を作り世界を支配できる」という話を聞き、ラインの娘たちからラインの黄金を奪い去ったニーベルング族のアルベリヒ。アルベリヒは指輪を鋳造する。

ラインの黄金と指輪を巡って、登場人物たちの欲望が顕わになる。城の建設で巨人に建設費の支払いが滞っている神ヴォータン。支払い費の肩代わりにヴォータンの義理の妹フライアが肩代わりの犠牲になる。そこにローゲが現れ、ラインの娘たちからラインの黄金がアルベリヒに盗まれた話をする。ラインの黄金と引き換えにフライアを返すという条件でヴォータンは、ラインの黄金を探しにアルベリヒがいるニベールハイムに行く。

ヴォータンは、アルベリヒから指輪を略奪する。アルベリヒは指輪に、手にしたものは死ぬという呪いをかけて消え去る。指輪とラインの黄金を手にしたヴォータンは、巨人にラインの黄金を渡すが、指輪だけは渡そうとしなかった。だが、巨人は指輪を要求する。拒むヴォータン。そこで、エルダの歌声によって苦渋の決断で指輪を巨人に渡す。すると、指輪を手にした巨人は仲間に殺される。

それを目のあたりにしたヴォータンは、愛と導き、そして生きていることに感謝する。完成した城をバルハラと呼び妻のフリッカ、フライア、その兄弟と共に祝祭をあげる。だが、ヴォータンは、エルダに会いたい気持ちをもちつつもバルハラ入城を喜ぶ。

というストーリー。私の勝手な解釈もありますが…。

本来、エルダはラストにヴォータンに忠告するだけに登場するらしいが、今回の演出では、地の神であるエルダを印象付けるかのように最初から最後まで登場する。まるでラインの黄金を巡って神々や人間の強欲さや傲慢さに嘆いているようにも見えるし、地の神を象徴するかのように指輪鋳造のエネルギー源になったり、最後はあたかもヴォータンの守護天使だったかのようにヴォータンに忠告する役割りを果たす。

そしてなにより、ヴォータン自身が、私にはルートヴィヒ2世にしか見えなかった。最初に城の図面を持っていたり、後々このバルハラ城が作品の鍵になるだけに、城にこだわっていたルートヴィヒと同じだと思った。ラインの黄金を巡って欲深さを見せつつも、エルダの忠告によって、指輪は手放したが、代わりに生きてバルハラ城主となれたこと、決して悪人として描かれていないのも、ワーグナーはルートヴィヒをモデルにしたんじゃないの?と思った。

妻のフリッカはまるでエリザベートで、フライアはエリザベートの妹でルートヴィヒと結婚する予定だったゾフィーに見えてならなかった。ルートヴィヒはゾフィーよりエリザベートの方が好きだったからね。オペラ舞台の世界だけ夢を見させてあげたかったのかな?

と思えた演出でした。

Wikipediaで粗筋を検索したときに、私が感じたことと違う内容が書かれていたので、今回の演出は、間違いなく、演出家のバリー・コスキーの新解釈だと思った。

粗筋を読むと、ヴォータンは後にエルダとの間に子供が出来きているから、あのお婆ちゃんとヴォータンとの間に子供!?なんて想像出来ない。まさに新解釈&新演出。

ということで1週間限定上映ギリギリ観てきました。

4年かけて「ニーベルングの指輪」を上演していくプロジェクトの第一弾。「ニーベルングの指輪」シリーズは一度も観たことなかったし、ストーリーも知らないので、興味はあっても観る機会がないから第一弾の「ラインの黄金」が観られて本当によかった。これでまた「翔んで埼玉」が遠のく。

いや〜、本当に、ロイヤルの意味が分からなくなるくらい前衛的な演出で驚いた。

「ロード・オブ・ザ・リング」の原型となっただけあって、良く似てた。

ローゲなんてまさにゴラムのモデルでしょ!?

巨人はさすがに巨人には表現されていないけど、小人族は子役に被り物を被せて表現したり、至る所で「ロード・オブ・ザ・リング」がフ
ラッシュバックされた。

最初にも書きましたが、演者さんが本当にオペラ歌手というより俳優さんにしか見えないくらい表現が素晴らしかった。

今作でも、今回は守護天使でしたが、物語を俯瞰している死神みたいな存在がいることに驚きました。ま、後々ヴォータンとの間に子供が出来ることを思えば、運命の相手の方が正しいのかもね。

Wikipediaで粗筋を読んでも作品を観てないとさっぱり理解できないので、残り3作品が楽しみ。っていうか、「ラインの黄金」だけ2時間半で後は3時間超えに驚き!

っていうか、今年はワーグナー作品と縁が多いね。来年は、「トリスタンとイゾルデ」があるし。

っていうか、オペラはワーグナー作品しか興味ないかも…。

っていうか、←何回書くねん!

m(__)m

楽曲についてオペラなのに何も書いてなかったね。

全幕通しは「パルジファル」「ローエングリン」しか観てないので、どちらも緩やかな曲調で、音源だけだったら間違いなく途中で寝てる。実際に、観るまではそうだったからね。

この「ラインの黄金」は、ぶっちゃけ聞いたことがないメロディーでしたが、

やはり、「ニーベルングの指輪」と言えば♪ワルキューレの騎行♪が圧倒的に有名なだけあって、「ラインの黄金」で流れる音楽も激しい曲調のものが多くて、オペラ楽曲というより歌付きの交響曲を聞いている感覚でした。そうそう、休憩なしの2時間半ぶっ通しって、演奏家さんも大変だっただろうね。

やっぱ、ワーグナーは凄い作曲家、いや芸術家だと思った。G2さんの「スワンキング」を観ていて本当に良かった。

ワーグナーは、自分の作品を昇華させるためにルートヴィヒを利用して騙そうとしていたのか?逆に、敬意を払っていたのか?ずっと疑問ではあったんですが、

作品を観る限り、少なくとも騙す気はなかったと思う。騙すなら、わざわざルートヴィヒがモデルになるような人物を主人公にしないでしょ?私ならチョイ役にするな。

自分が死んでも残したい作品に嫌いな人物を主人公にするか?そりゃ、マクベスくらいの主人公なら分からんでもないけど。ま、今のところ、私がルートヴィヒ2世でも上演禁止にしたくなるような主人公は出てきてない。

私は、むしろ、ルートヴィヒからいっぱいインスピレーションをもらっているとしか思えないんだけどね。

いずれにせよ、次の「ワルキューレ」が待ち遠しい気持ちには変わりはない。