「大富豪同心」 「二人椀久」

2025-01-29 21:14:53 | 古典芸能
金曜日に「双仮名手本三升」を観た後に「大富豪同心」を、


土曜日に「さまよえるオランダ人」を観た後に「二人椀久」と再度「大富豪同心」を観てきました。


一回目の「大富豪同心」は、本当は安い幕見席で観たかったのですが、ネット販売開始時間の12時を完全に失念してしまい、気づいたら30分以上経っており、すぐにログインしたらもう完売。こりゃ土曜日も完売になりかねないので、時間的に「大富豪同心」しか観れないこと承知でまだ残ってい3階A席で観てきました。


土曜日は、「二人椀久」「大富豪同心」も幕見席で観させてもらいました。


前日の販売時間が「双仮名手本三升」の上演時間中だから、幕見席はもう売り切れていると思って試しに幕間でログインしたら、販売から1時間以上経っているのに1席だけ余っていたので、即ポチ買いしたわけであります。


「二人椀久」もまだ幕見席に余裕があったのでこちらもポチ買いしました。


ということで、


今年の大河「べらぼう」の初回から登場の隼人氏。若かりし頃の鬼平の役ということで、吉右衛門さんの鬼平をイメージしていたら、全然イケてない役でビックリ!2回目3回目と愛嬌がある存在感になっていて、大河効果テキメンだったのかチケットの売れ行きが良い!っていうか、もう「べらぼう」に出てこないん??


もちろん大河効果だけにあらずで、お正月公演にピッタリな内容になっており、めちゃくちゃユーモアたっぷりな上に、脚本も演出も役者陣も素晴らしくめちゃくちゃ面白くて楽しく拝見させて頂きました。


その前の、「さまよえる~」も「仮名手本~」も重たい作品だったので、失礼な書き方ですが、脳みそ休めになった。2回観ても楽しくて、客席の雰囲気も温かくてめちゃくちゃ歌舞伎座の空間に癒されてました。


もうね、隼人氏な二役の演じ分けがマジあっぱれ!


前回観た「身代座禅」もユーモアたっぷりで芸達者ぶりに驚いたが、今作は、元々ドラマの舞台化ということもあり、すみませんドラマは観てません…、本人的には初役ではないにせよ、


舞台は、ドラマと違って本当に双子じゃない限り同じシーンに二人同時に立つことができないので、それをどう見せるかが役替わりの妙ではあるわけですが、


隼人氏の役柄は、顔は似てるが性格が全く異なる二人のキャラ設定。お互いがお互いの影武者として衣装チェンジして登場したりするので、役の軸がブレたら大変なことになる。早替えがあるのに軸がぶれずに演じ分けた隼人氏の芸達者ぶりにまじでアッパレでございました!


作品自体がユーモアに溢れていて、客席の拍手がめちゃくちゃ温かい!皆さんが楽しんでいるのが拍手からめちゃくちゃ伝わってくる。


それくらい面白かった!


ぶっちゃけたメッセージ性がある作品じゃないから、普通に楽しめる作品でもあるし、隼人氏に限らず皆さん芸達者な方々なので、どのキャラも最高に素晴らしかった!


一番は、女形の春日局と思っていた笑三郎さんの大井御前が最高でした。ルパンの次元も素晴らしかったけど、凛とした大井御前のまさかの酒の飲みっぷりと二日酔い表現にギャップがありすぎて、笑三郎さんもめちゃくちゃ芸達者でびっくりでした。


ギャップといえば、尾上右近君も凄いね。一回目は、「仮名手本~」の後に観たから、「朧の森に棲む鬼」のキンタの延長上の役だな~とビックリすることなく観ていましたが、二回目が「二人椀久」の後だったので、


全然キャラがちゃうやん!!めちゃくちゃバケモノ!と驚きながら観てました。


「二人椀久」も脳みそを使う作品だし、「鷺娘」みたいな喜びと悲しみや憂いを短い時間で表現する内容だけに、椀久の憂い哀しみからのあのお調子者の銀八のギャップが凄すぎ!


いやいやいやいや、二月博多座をご覧になられる方は右近君のキンタ役必見!


中車さんや猿弥さん筆頭に澤瀉屋の方々も芸達者ぶりは毎度のことではありますが、寿猿さんも見事にカムバックされ大拍手でしたね。お元気で良かったです!なんてたって94歳の現役の歌舞伎役者だよ、ギネスもん!


そうそうたる澤瀉屋さんの面々の中に鴈治郎さんがいるのも新鮮でした。


っていうか、幸四郎さんも凄いね。今回演出を兼ねておられ、芸達者ぶりは新感線の常連さんだけあって若い頃から遺憾無くは発揮されておられますが、演出もお見事でした。場面転換も、巳之助君の登場の見せ方も上手い!と思った。あ、隼人氏の登場の仕方もね。ラストのミュージカル的演出も正月公演にピッタリな演出で良かった!


そうそう、紅二点の、壱太郎君と米吉君も良い存在感だった。三月南座公演での女形対決が楽しみ!


たった70分の物語なのに、登場人物も多く、出番もそんなに多くないのに、めちゃくちゃキャラ立ちしていて元々備わった才能ではありますが、存在感アピールも凄く、それを導き引き出した幸四郎さんの演出力にも感動しました。


ラストに登場する米吉君が良い意味で余韻を残す役柄で、


続きが本当に楽しみになる作品でした。


2日目に観たに観た「二人椀久」は、それはそれは、目の保養になる右近君と壱太郎君の美しさ。


前日に「大富豪同心」で男勝りな女形の壱太郎君、狂言回し的な存在感の右近君を観ていたから、ギャップが凄かった。


やはり、お二人とも日舞を得意?家元?なので、それはもう軟体動物?のような線の柔らかさ、まるで宙に浮いているかのような軽やかさがあり、そこにきて長唄にあわせて無言の感情表現と美しさ。


「二人椀久」のストーリーは全く存じ上げずに拝見しましたが、まるで相手役もいる「鷺娘」の男版で、右近の椀久は、孤独感と喜びと切なさと儚さを舞で表現されており、キンタや銀八と同じ人物が演じているとは思えないくらいのギャップが凄かった!


壱太郎君の松山太夫も本当に美しい!この一言に尽きる!


美男美女の舞は本当に目の保養になり、また舞から読み取る感情表現とか、想像を働かせる作品で本当に素晴らしかったです。


「鷺娘」もそうですが、ストーリー性がある舞踊は、基本ショーが苦手な私でも演劇要素が強いので好き。






双仮名手本三升 裏表忠臣蔵

2025-01-27 23:32:24 | 古典芸能
團十郎さんの公演ではほぼ出演しない、歌昇君、種之助君、福ちゃん、歌、虎之介君(松竹座十月公演には出ていた)、右團次さんのご子息、市川右近君が出るということもあり、もともと仮名手本忠臣蔵は一幕ものですら観たことがないので、せっかく「さまよえるオランダ人」を観に行くならば一泊してでも観たいと思い、出演者に惹かれ昼夜観てきました。


安い三階の角席で見させもらい、残念ながら花道が全く見えない席でしたが、


まさかの宙乗りもあり、善人の大星由良之助でも早野甚平でもなく、悪人の斧定九郎だったのが意外でしたが、宙乗りの團十郎さんを間近で見れて最高でした!


本来通しだと8時間?以上かかるような演目を4時間にまとめ上げ、しかも輪廻転生?前世の契り?要素もあり、仮名手本忠臣蔵観たことない人間のワタクシにはとても有難い作品でした。


表裏忠臣蔵と副題?にあるように、仮名手本忠臣蔵が表、創作部分が裏とのことですが、正直、ぼたんちゃんと新之助君のシーン以外どれが裏の創作シーンなのか分からずではありましたが、いかんせん仮名手本忠臣蔵観たことない…、分かりやすくて勉強になりました。

そもそも、なんで主人公の名前が大石内蔵助でないのか、吉良上野介でないのか不思議でならなかったし、高師直なんて、月組「桜嵐記」を観てなかったら存在も名前も知らなかった。それくらい、仮名手本忠臣蔵を知りません。

義経千本桜も通しでも観たことなかったので、短縮版の「星合世十三團」もしかり、この短縮版上演は、内容を理解出来るので本当に初心者には有難かったです。


っていうか、8時間ものを4時間って、何をはしょっているのか三月歌舞伎座公演が気になってしかない。


はしょっている割には、物語はダイジェスト感がなくスムーズな流れになっているし、テンポも新作歌舞伎のようなアップテンポではなく、普通に歌舞伎の間だったし、三月歌舞伎座公演もなんとかしか観てみたい気持ちにさせてくれる内容でした。


團十郎さんは、敵味方である、大星内蔵助と高師直の両方を演じ分け、特に夜の部二幕目は立ち会いが見せ場であるだけに早替わりの連続であっぱれでございました。


もちろん、早野甚平と斧定九郎の演じ分けもキャラ設定を見事に変えていたのたのでとても分かりやすかったし、全く物語に支障がない演じ分けでお見事でした。


児太郎君や國松君は團十郎さん作品の常連さんで、各々重要な役柄で存在感があり、特に児太郎君演じるおかるの甚平に対する一途さと純粋さを上手く表現されていてウルッとくるこてもありました。


最初に挙げた團十郎さんの作品には普段出ない面々が同じ舞台に立っているのが本当に観ていて新鮮でした。團十郎さんとの絡みがあったり並んだり、それだけでワクワクが止まらなかった!


一番はやはり、團十郎さんとええ声の歌昇君の立ち回りでしたね。歌舞伎座での襲名公演では色々あっただけに実にめでたい気持ちで観させてもらい、実にあっぱれなお二人の立ち回りでした。


虎之介君が、團十郎さんの息子役ということで出番は僅かではありましたが、その分大事な台詞が多かったし、声音を変えての表現も大変素晴らしかった。早くテレビ小説に出て欲しい!藁


福ちゃんが大先輩の男女蔵さんとの並びも違和感ない貫禄ぷり。毎回書きますが、歌舞伎顔だから化粧栄えしまくってカッコよい!3月南座公演、虎之介君、壱太郎君、米吉君、超珍しい競演が楽しみです。ヅカ友さんと観に行きます!


歌は、残念ながら目立つ役ではなかったですが、ちゃんとチェックしておりました。声が特徴的だからすぐ分かる。團十郎さんと同じ舞台に立ってるたけで絶対勉強になったと思う。


種之君は、ソロの出番がありましたが、いかんせん地味な役ではありましたが、團十郎さんの舞台に兄弟で出るのも滅多にないことなので、本当に新鮮でした。


右近君がめちゃ成長?大きくなっていてびっくり!右團次さんとの立ち回りシーンで、まさかとは思っていましたが、やはり相手は右近君やったんやね。あどけなさもありつつも声変わりもして立派に成長されおり、親子での立ち回りお見事でございました。将来が楽しみやね。


そして、ぼたんちゃん、いやいやいやいや、やはりあなたは凄い!とても10代の女の子の表現とは思えないくらい艶やかさと落ち着きがあり、何より着物が体の一部になっていたのが素晴らしかった!


その点、新之助君は、台詞回しはかなり成長が見られたが、衣装に着られている感があったのが否めない。かつらも若干…。姉弟の息があった舞が良かっただけにちと残念ではありました。早く声変わりして一皮剥けた新之助君を観てみたい。


ということで、出演者陣が素晴らしくて、本当に楽しく観させてもらいました。三月歌舞伎座、なんとか観れるように頑張ります。

さまよえるオランダ人

2025-01-26 00:27:07 | オペラ
これぞ究極の、魂の救済の物語。


オランダ人の苦悩は、まさに「ポーの一族」のエドガー同様、永遠の命を与えられた者の苦悩。あ、あくまで私の解釈です。実際のところ、オランダ人の本当の苦悩は分からない。


永遠の命があれば必ずしも幸せとは限らない。数多の出会いや恋愛を繰り返せば繰り返すほど、自分以外の人間は寿命があるわけだから、たとえ永遠の愛を誓っても死に別れる運命にある。


命がけの恋をすればするほど、別れが辛くなる。永遠の命があれば、必然的に別れの数も増えていき、別れの数だけ孤独感が増すばかり。


これが最後の恋と思ったところで、孤独感と共に生き堪え忍ばないといけないない。


それがオランダ人の苦悩だと私は解釈した。


ゼンタとの出会いによって、ゼンタの命と引き換えにオランダ人の魂が救済されたと私は解釈している。


ラスト、オランダ人の魂が救済された瞬間涙が出た。


もちろん、これはただの魂の救済の物語だとも思っていない。


現実に置き換えても分かるように、運命の人が必ずしも前世で契りを交わした魂の片割れだとは限らない。運命の人と思って結婚したが離婚したり、付き合っていたが別れたケースもよくあること。


大概は、運命の人とは思ってなくても、この人と結婚するかも!ビビビと直感で実際に結婚している人は多いはず。


結局のところ、運命の相手だろうが、魂の片割れであろうが、そうでなかろうが、これから起こるであろう人生の難題を二人で乗り越えられるのか?そういう相手なのか?そこが大事だと思う。ただの一目惚れの恋愛で乗り越えられるのかいささか疑問。


運命の相手だと思うなら、何が起ころうともこの人と添い遂げる覚悟があるのか?を問うた作品だと思っている。


嫉妬や猜疑心で相手を疑いを持った時点で、些細な問題も乗り越えられないと思う。


ワーグナーの初期の大作だからか、ローエングリンやパルジファルに比べたら、ヒロインに試練やお試しがない、ワーグナーにしては、ヒロインがめちゃくちゃピュア。物語もストレートなラブストーリーに驚いた



ラストのゼンタの行動は、まさにゼンタの魂の赴くままの決断だから、私は試練とも神様のお試しだとは思わない。自分の気持ちに正直に選択した行いだと思っている。


ワーグナー作品にしては分かりやすくて、本当に本当に素晴らしい作品でした。ラストまではこんな物語だとは想像していなかったので反動で感激してしまった。


ということで、去年の「トリスタンとイゾルデ」に引き続き、2回目の新国立劇場オペラパレスに来ました。


今作品、始まって三回目?三日目?の公演ではありますが、前二回公演が主役のオランダ人役のエフゲニー・ニキティンが体調不良で降板となったので、今日も代役の方が演じられるのかと思っていたら、エフゲニーがカムバックし、運良くオリジナルキャストで拝見することができ大変ラッキーでありました。


クラッシックホールでのクラッシック演奏は過去に数回聴いたことがありますが、オペラが格別なのかは分かりませんが、前回も思いましたが、新国立劇場の音響効果がめちゃくちゃ素晴らしい!


ワーグナーの楽曲が劇場空間を支配する力に今回も酔いしれました。


映像では伝わってこない生オーケストラならではの臨場感、ミュージカルのようなスピーカー越しじゃない生の楽器の音、マイクなしの生の歌。オペラパレスの空間支配力に痺れまくりでした!


復帰したばかりのエフゲニーのバリトンがオランダ人の苦悩を上手く表現されており大変素晴らしかったです。


ゼンタ役のエリザベート・ストリッドのソロがラストに向かうにつれて感情が乗ってラストのゼンタの歌は本当に感動しました。


ゼンタに横恋慕するエリック役のジョナサン・ストートンも、ゼンタの心を掴むには粗野でねちっこいし、それだとゼンタに振られても仕方ないやん的な役どころを美しいテノールで歌い表現され、本当に素晴らしかったです。


三人の三重唱は、オペラ無知のワタクシでも鳥肌もんでした。各人違うメロディーを歌うのは本当に聞き応えがありました。「ウエスト・サイド・ストーリー」の四重唱も好きだし、太田鉄則先生もよく重唱を作品に取り入れていて好きだった。ウタコさんの「大いなる遺産」はオススメ!


日本人キャストも本当に素晴らしく、特にゼンタパパ役の松位浩さんバスのはめちゃくちゃ低音が力強く聴き心地良かった。


舵手の伊藤達人さんのテノールも美しかった。


金子美香さんのメゾソプラノも優しい響きで素晴らしかった。


関係者さんの話によると、エフゲニーの代役だった河野鉄平さん、本番ギリギリの変更だったようで、開演20分送らせて衣装を合わせて登場するって、いくら経験があってもすぐに対応出来るって、歌舞伎役者さんもそうだけど、皆さんのプロ根性に感動してます。


ここからは再び物語に関して感じたことを書いていきたす。あくまで私が感じたことなので、プロダクションの意図とズレといること承知で書きます。


物語のあらすじは、簡潔に書くと、


船出している最中に嵐が来て嵐が静まり船員が休んでいる時、オランダ人の船に遭遇する。そこでオランダ人と船長のゼンタの父親が出会い、オランダ人の自分の財宝と引き換えに船長の娘ゼンタとの結婚の約束を交わす。ゼンタには愛を分かち合っている恋人はいるが、なぜか肖像画の謎の人物に惹かれている。肖像画の人物に出会ったら、その人物像が醸し出す苦悩をゼンタは救済したいと思っていた。


その肖像画の人物が、オランダ人に似ていた、いやその人だった。


ゼンタの使命はオランダ人の魂を救うこと。オランダ人もまたゼンタに清らかな魂に惹かれている。


ゼンタこそ、自分の苦悩を救ってくれる人物だと確信はしているが、いかんせん、ゼンタにはゼンタを心から愛しているエリックがいる。心から愛しているというよりストーカーに近い。嫉妬狂い。


オランダ人は、自分と結婚した女性は皆死ぬことをゼンタに告げ、オランダ人は身を引きゼンタを生かす決心をする。だが、ゼンタはオランダ人の魂の救済すべく、海に身を投げる。するとオランダ人も死んで幕。死ぬというよりかは魂が成仏された言った方がいいかもね。


字幕では永遠の誠と表現されていたが、ドイツ語聞き取れなかった…。まさに永遠の愛、真実の愛だと思うんよね。


オランダ人がゼンタを生かす決断をしたのは、真実の愛故にゼンタに生きてもらいたいという気持ちがあったとも解釈できる。


ゼンタこそ魂を救済してくれる女性だと確信があっても実際のところは分からない。ゼンタだけ死んで自分はこれまで同様、更に苦悩を抱えたまた生きていく可能性だってあった訳だから。


真実の愛故に、愛する人を失い自分だけ生き続けることほど苦しいことはない。


ゼンタの確信と覚悟がオランダ人の魂を救済し自由と安らぎを与え、目に見えない世界でオランダ人とゼンタは魂で結びついたとも私は願いたい。


と思ったストーリーでした。


ワーグナーが描く登場人物のキャラ設定が絶妙。分かりやすいのもいい。


晩年の作品の登場人物が複雑だっただけに本当に分かりやすいだけでなく、キャラ設定が絶妙。


拝金主義の父親なのに、ヒロインがピュアな乙女なのがいい。そんなヒロインに横恋慕するエリックがまた嫉妬狂い。それも人間らしさではある。


エリックは、ぶっちゃけ書くと、肖像画の人物(オランダ人)ほどゼンタの心を掴んでいないわけやん。端から見て、ゼンタと一緒になったとてゼンタの心を独占できるとは思わない。嫉妬でゼンタを突き倒す男にゼンタを幸せにできるのか?魔が差すはいつか必ずまた魔が差す。その時だけ魔が差すことはない。魔が差すは無意識の心の表れだから。普段言わないのに、肝心なときに余計なことを口走ったり、しない行動をしたり、それは無意識の表れだからね。普段の行いや思いが咄嗟に出ただけ。


嫉妬でゼンタを投げ飛ばすなんて、人間としてどうなん?って思う以前に、たとえゼンタと結婚しても、嫉妬以上に立ちはだかる苦難を二人で乗り越えていけるんか?っていう疑問がわく。きっと無理だと思う。そもそもゼンタの気持ち理解しようとしてないし。


ゼンタ自信も拝金主義者の娘だから同類と思われる可能性だってある。フィクショだからどうにでも書けるし、 親子でも関係ない、ではなく、


疑わしい要素がある中で真実の愛を求めたり、信じることは、現実社会でも難しい。


ゼンタとの出会いは、運命の出会いというよりかは、財宝との取引、言うなれば政略結婚みたいなもんだったわけだから、そこに真実の愛があるかは、オランダ人からしても確信は持てないはず。


それでも、ゼンタにはオランダ人の苦悩を安らぎに変えられる確信があり、また覚悟もあってのラストの決断だと思うから、真実の愛を分かち合った相手かどうかは、正直死なないと分からないことだけども、自分の第六感を信じることも大事だと思うし、勘違いだったとしても嘆かない覚悟も必要だと思わせてくれる力強いメッセージ性がある作品だと思った。


今まで観た作品が、ヒロインに試練をあたえたり、猜疑心植え付けることで、本来の人間のあるべき姿であったり、君主としての理想像であったり、宇宙の愛を表現したりと難しい作品ばかりでしたが、


ワーグナーの初期作品だっただけにワーグナーのピュアさを実感できる作品であった
ことが嬉しかった。


あまりにも感動してブロマイド買ってしまった!「トリスタンとイゾルデ」も買えば良かったと後悔…。


本当に新国立劇場オペラパレス、中ホールも大好きですが、オペラパレスも最高!オーケストラの空間支配力はマジで溜まらん!


調べたら毎年ワーグナー作品を上演されているので、次年度は何を上演してくれるのか楽しみです。


いつかローエングリンお願いします!

↑おそらくキャスト陣のサイン

港に灯がともる

2025-01-19 22:17:00 | 映画
たった2時間の物語なのに、情報量が多くて、たくさん言葉が浮かんだり、記憶映像がフラッシュバックされたりと尋常じゃない多さだった。

いつも以上にカオスな文章になっています、を前提に、何を書いても差別発言になること承知で感じたことを書いています。

気を悪くされたら本当に申し訳ありません。


「だが、情熱はある」の静ちゃん役、「ブギウギ」の小夜ちゃん、「3年A組」にも出てたね、

冨田望生ちゃん演じる静ちゃん役を初めて観た時に、センセーショナルに頭角を表したそれなりに経験がある女優さんだと思ってWikipediaを見たら、めちゃくちゃドラマに出ていたことに驚いたが、一番の驚きは、「ソロモンの偽証」の松子ちゃん役だったこと。しかもこれが女優デビュー作だったとは!

静ちゃん役と松子ちゃん役を望生ちゃんが演じていると知ってからは、大注目の女優さんになった。

今回、初主演というおめでたいだけでなく、阪神大震災後の神戸を舞台にした作品ということで、去年の年末からめちゃくちゃ観たい映画でした。

去年は、そんなに観たい映画が少なかったので、久々にめちゃくちゃ観たい作品でした。

震災後の神戸を舞台にしているのに、しかも震災から30年という節目の年の、しかも1月17日に封切られるというメモリアルな作品なのに、上映館も回数も1日1回となぜか少ない。

こんなに素晴らしい作品なのに、なんで封切られたばかりなのに、上映回数が1回しかないのか不思議でならない。

望生ちゃんの役は、震災後に生まれた在日コリアン三世の金子灯(あかり)。

予告を観た時は、在日だから灯は差別されて双極性障害になったのかと思っていたが、

全然違った。

灯は、本来普通の女の子。在日も日本人も関係ないどこにでもいる女の子だった。

灯を苦しめているのは、根っ子は日本の政治や社会だが、現実は親や大人たち。

灯自身何も悪いことはしていない。

くれぐれも言っておきますが、灯の両親を否定することは、在日だからと差別しているわけではないので悪しからず。あくまでも両親を一人間として見た上での発言なので誤解なきように。

そもそも、在日という言葉自体、LGBT同様に差別用語にしか感じられないので使いたくないのですが、今日は使わせてもらいます。

たけしさんの「血と骨」でも描かれていたけど、灯のおじいちゃんとおばあちゃんは、好きで日本に来た訳じゃない。好きで差別されてきた訳じゃない。好きで貧しい生活をしている訳じゃない。好きで大変な仕事をしている訳じゃない。二世の方々(灯のお父さん)が、背負わされたものも、完全には理解できていないが、想像はつく。

同和地区問題しかり、住み場所が限定されて、出生や住所だけで差別されてきた。

学校で同和問題を取り上げる度に、なんでその地区に居座り続けるのか?その地区から離れて、素性さえ黙っていたら誰にも差別されず生きていけるんじゃないのか?とずっと思っていた。

LGBTQしかり、自分たちも自分たち自身を差別してるんじゃないの?と思っていた。

ぶっちゃけさ、そもそもLGBTQ に関しては、同性婚を認めない国家がおかしい。人間同士の結婚に男女である必要があるのか?

政治家が生産性なんて言ってる時点で間違ってる。結婚=子作りという発想がそもそもの間違い。

愛し合った者同士が契りを交わすのが結婚じゃないの?

同性婚に限らず、子供が欲しいなら、養子でもいいやん。不妊治療に励まれた方、励まれている方々には申し訳ないけど、血が繋がってないといけない理由が私には分からない。産みたいのか?育てたいのか?どっちなん??産みたいだけなら、子供はオモチャか?と聞きたくなる。

今ある命も大切にすべきじゃないの?と思ってしまう。

私は、生まれてこなければ良かったと思ってきた人間だし、産んでくれとは頼んでない!と言ったきた人間なので、血にこだわる方々の気持ちが正直分からない。

少子化問題だって、同性愛者が増えてきているからか?私みたいな独身主義が増えているからか?

子育てにお金がかかるからじゃないの?

それって国の問題でもあるんじゃないの?

戦後の第一次ベビーブーム、高度成長期の第二次ベビーブームって一体何なんで起こったんですか?明るい希望が想像出来たからじゃないの?

だったら、第三次ベビーブームになるように経済政策すべきじゃないんですか??って思う。

それも取り組んでないのに、同性愛者や独身主義者、子供作らない夫婦のせいにされては迷惑でしかない。

実際のところ、各地方自治体では子育て援助の取り組みはしてますけどね。それって出産前提ではありますが…。

私は、自分が生まれてきて良かったと思えないのに、子供を作る気にも育てる気にもなれない。結婚しないのはホモとかゲイだから?とか言われても気にしない。結婚しないと出世できないと言われても、だったら余計結婚なんて真っ平ご免。それってある種の政略結婚でもあり偽装結婚じゃないの?それって本来の結婚のあり方か?と甚だ疑問。ま、中村うさぎさん夫婦の関係性は個人的に好きですけどね。信頼関係で成り立っているからね。

それはさておき、

生まれてこなければいい命があるなら、わざわざこんな人間と結婚して、しなくていい苦労をさせるくらいなら、私は独身を貫きます。自分の両親を見て結婚したいとは一切思えない。ま、そもそも私自身が心を改める気がない。それが問題。

だからこそ、自分勝手発言だけども、

生むと決めたなら、育てると決めたなら、どんな子であっても子供に愛情を持ってください!と言いたくなる。

日本人と在日の方との結婚もすごく考えさせられる。

ぶっちゃけ書くと、私は、母親から在日とは結婚したらダメと言われて育てられてきた。

母親のお姉さんは、部落出身の方と駆け落ちして、広島から東京に行って結婚した。相当苦労したと聞いた。

でも、地元広島で家族や親戚に差別されて暮らすくらいなら、東京で暮らす方が正しい選択だと私は思った。

この作品を観て初めて、差別を受けると分かっていても、その土地に留まる人の気持ちが見えてきた。灯のお父さんもその一人だったからね。帰化したくない灯のお父さんの気持ちもしっかり描かれていた。

正直なところ、愛国心があっても、帰る場所が日本しかないのであれば、メリットが多いのであれば帰化した方がいいと私は思ってしまった。私が外国で永住すると決めたら間違いなく帰化を望むはずだから。

お父さんの愛国心、ルーツを大事にしたい気持ちは凄く伝わった。


私の両親は、私が生まれる前までは、灯の両親が震災まで住んでいた長田区で生活し兄貴が生まれた。両親は間違いなく在日の方々と関わりがあったはず。でも、良い思い出がなかったのかもしれない。

親父も、在日朝鮮人の方を差別するチョンって言葉をよく使っていたから。

両親に在日の方と結婚してはいけないと言われてきたから、それ以来、相手は誰であろうともフィルターを通して人と関わり、色眼鏡で人を見てしまうようになった。

私自身、差別する気がなくても、フィルターが出来上がった時点で差別しているのと同じなのである。

今思えば、余計な知識や価値観を子供に植え付けるなよ!と言いたい。もう言い返す母親も親父もいないけど。

長い前置きになりましたが、結局何が言いたかったかというと、早い話が、私自身が灯そのものだってことなんです。

私の両親は長田区に住んでいましたが、在日ではありません。

灯の家庭は在日コリアンではありますが、それ以外、私の家庭と何も変わりません。

灯の父親が、仮にアル中の暴力男だったら、まさに私の親父です。発言の仕方も押し付け方も、俺の気持ちを分かってくれよ的発言も私の親父と全く同じ。

酒さえ飲まなければいい親父なのに、灯のお父さんだって、普段はいい人だと思う。ただ在日に関することになると価値観の押し付けが始まる。

私の親父に関しては、酒を飲まなければいい人と書きましたが、むしろお酒の力を借りて素面では言えないことを発言していたのかもしれない。

いずれにせよ、灯りのお父さんも私の親父も同じ。日本人も在日も関係ない。

誰のお陰でご飯が食べれると思ってるんや!って怒鳴られたら、

だったら、セックスするな!子供作るな!産んでくれなんて頼んでない!って言い返したくなるんよ。

今なら、私の親父の気持ちも分かる。

職場では安い給料でこき使われて、家に帰ったら妻はご飯も作らず長電話。金がないない言うなら長電話せず節約しろ!と言いたくなる親父の気持ちも分かる。

妻は、小豆相場で大損をきっかけに親父の暴力が増え、顔面麻痺発症。暴力に耐え兼ねて新興宗教に救いを求め始める。いくら共働きと言えども、お布施は余計な出費。妻は、人間より神様への食事が優先。

そりゃ、一家の主は誰やねん!って言いたくなる。

しかも、子供たちは妻の味方やから親父は蚊帳の外。酒を飲まないとやってられない。

親父が酒を飲み始めたら、もう負のスパイラルが止まらない。暴力あるのみ。どれだけ殴られ、壁に穴が空き、テレビが壊れたことか…。

母親もよく離婚せずに親父と暮らしてたと思う。確かに、母親は母親で、何度も離婚を考えていたし、実家にも相談していた。もちろん親父の実家にも。兄貴を連れて家出したとも聞いた。よく我慢したと思う。

って思うと、

やはり、灯の家庭と私の家庭と何の違いがありますか?ってことになる。

それって、在日と関係ありますか?

くれぐれも言っておきますが、灯の両親を在日だと差別しての発言ではありませんから。人間として発言しているので悪しからず…。

そりゃ、灯は、私以上に、出生、家庭内、社会生活において幾重にも重なったフィルターで息が苦しくなったのも分かる。

灯は私と違って女性だから、暴力に対して暴力で返すことはない。ひたすら我慢して内に溜めてきたから。だから、お父さんのいつもの言葉で、抑えつけた心にスイッチが入って感情を抑えることが出来なくなったんだと思う。

灯は、何度も苦手なお父さんに歩み寄ろうとしても、お父さんは自分のことしか考えていないからまた同じ言葉を発して、灯の負のスイッチを押してしまう。

そりゃ、灯のお父さんも、今まで築いてきたもの、夢や希望が震災で全て壊され崩され、人生設計が狂わされてしまったら絶望しかない。

灯のお父さんだけじゃない、

コロナ禍で仕事がなくなったら、アルコールを辞めていた、山中崇さん演じる青山さんだって、アルコールを飲まないといられない。

灯だけじゃない、お父さんも、青山さんも、私だって、親父だって母親だって、誰しも心に闇を抱えて生きている。どうすることもできない闇の深淵にもがき苦しんでいる。

もがき苦しんでいる内は出口は見つからない。陽の光が照らす出口を見つけようとしない限り、光は見えてこない。だからこそ、このままでいいじゃなく、出口を見つけようとする意思や希望を持つことが大事になってくる。

この作品は映画だから、ラスト、灯は、陽の光が照らす出口を見つけることが出来たが、双極性障害や統合失調症は、数年で治ることは難しい。再発しやすい。出口を見つける意思を持つ続けることは難しい。

この作品の素晴らしいところは、どう精神疾患と向き合っていくべきか、助けていくべきかを示唆している点である。

もちろん自分の力で乗り越えられるのがベストだが、渡辺真起子さん演じる精神科医のように、患者さんの闇に向き合ってくれる人の支えも必要。

そうなんだよ、心の闇は、その人だけの問題じゃない。根っ子にあるのは家族の存在だと思っている。

本来ならば、明るい日差しの中ドキドキやワクワクでときめいているはずの心に、鉄の扉を備え付け鍵をかけ真っ暗闇にした原因をしっかり究明・解明していく必要なのである。

なぜ苦しいのか、なぜ苦しくなるのか、表面的な闇ではなくもっともっと深い闇の根っこになる箇所を見つけない限り治すことは難しい。

無意識の闇だから、無意識を意識に変えていく作業は本当に大変。他者には見えても、本人も見て気付かないと前に進めない。正論かざしても相手に響かなければ意味がないのと同じ。

ぶっちゃけ、読書できるだけのメンタルがあれば自己分析できるが、字を読もうとしない、読みたいと思わない限り、人の話や意図を理解できない、しようとしないなら尚難しい。本人の意思決定が本当に大事になってくる。

だから、お医者さんどう導き、どう引き出せるかにかかってくる。話を聞いて肯定するだけなら、ただ時間がかかるだけ。でも、これは精神科医あるあるなのかもしれないが、逆に精神科医に依存してしまう患者さんもいるので、医者も患者との距離を取らないといけないのも事実。

精神疾患を治す最大の薬は、医師の処方ではなく、家族の理解だと思っている。あえて家族の愛とは書きませんが…。

本当は、家族は家族で自己分析して欲しいんだけどね。家族の態度や発言が本人を苦しめている要因になっていることは大いにあるから。ほったらかすのはただの逃げ。だからといって構いすぎは甘やかしになる。自分を知る事で相手の気持ちを理解していくことができると思うんよね。それが家族や本人に対して学びと気付きに繋がると思っている。

この作品は、家族の問題と心の闇は深く結び付いていることもしっかり描いている。

あと、灯の大声で喚く発作症状があまりにもリアルに表現されている。それに限らず、

同じ発作症状でも、内に秘めたる思いが爆発する症状だけでなく、アル中で意識消失した青山さんを助けたい思い一心で大声を出す行為は、映像では同じ言動に見えるけど、全く別物。後者は明らかに自我の芽生え。そこが表現されているのも素晴らしかった。このシーンは思い返すだけでも涙がでる。

望生ちゃんの役作りに関して、インタビュー記事を読みました。東北の震災経験を役に活かすのではなく、まっさら状態で灯と向き合ったとのこと。確かに、灯は震災後に生まれたから震災を知らずに育ったからね。人生の経験が役に活かされることもあれば、逆に削ぎ落とさなくてはいけないこともあるという発言はごもっともだと思った。

映像に映る望生ちゃんは、灯そのものだった。憑依してたと書いたら、演技という表現も含め、むしろ安っぽく感じるので、望生ちゃんに対しては使いませんが、静ちゃん役もしかり役の向き合い方が本当に素晴らしかった。

お父さん役の甲本雅裕さんが、本当にリアル私の親父だった。灯の気持ちがめちゃくちゃ分かる。

自分の子供やねんから、父親としてちゃんと向き合って欲しいよね。優しい言葉をかけて欲しいよね。自分の都合が悪くなったら、決め台詞みたいに俺の気持ちはお前たちには分からない!とか、私の親父みたいに暴力で解決しようとしたら、話し合う余地ないんよ。

せやねんな、子供の頃は、親は完璧な存在だと思っていたけど、特に男親は何歳になっても子供なんよね。ま、私もしかり。

そうそう、灯を発作症状を起こさせる発言やその負のスパイラルの一連の流れが本当にリアルだった。何を話してもそこに持っていくか!?的発言が本当にリアル。私の親父をモデルにしてますか?と聞きたくなったくらい。


望生ちゃん、甲本さんに限らず、登場する皆さんリアルで素晴らしかった。麻生祐未さんも私の母親を見てる気になった。闇も発言も似てた。

精神疾患を患った灯にとって必要不可欠な存在が、渡辺真起子さん演じる精神科医、友達役の山之内すずちゃん演じる親友、そして、職場の上司役の山中崇さんと中川まさ美さん演じる上司役の二人。皆さん素晴らしかった。

特に、山中崇さん演じる青山は、灯の心の重たい鉄の扉を開けようするきっかけとなる人物でもあったし、また、青山自身、在日ではなくても闇を抱えて生きてきたわけだから、在日も日本人も変わらないを象徴した人物だったと思う。もちろん、灯の双極性障害と青山のアルコール依存症が対になる存在でもあったけども、作品しても大事な存在だったと思う。

灯の友達の存在も大きい。家族に言えない悩みを聞いてくれる人がいるのは心強い。信頼できることが大前提ですが。

中川さんも癒しの存在だった。

灯が自身の病気と向き合うための対になる人物が、青山以外に同じ病院?クリニック?に通う同じ在日の青年の存在も大きい。灯とは真逆で感情が抑えられず攻撃的になってしまうタイプ。

いずれにせよ、精神疾患は、誰かの理解がないと前に進めない。もし身近にそういう人がいたら否定せず受け入れることが治す第一歩。

私も若い頃は、灯の症状とは違って、むしろクリニックに通う青年に近いが、攻撃的になることは多々あった。今思うと、私自身、言葉に変換できなくて感情が先走っていたね。今は反省してます。

この作品、たった2時間なのに、前に挙げた灯と対になる人物や症状だけでなく、対比の仕方がお見事でした。震災前と震災後の対比だけでなく、

なぜ韓国から移住してきたのかも、太平洋戦争とロシア・ウクライナ戦争とも対比していた。当時とは移住の理由は全く異なるが、前者は強制連行、後者はウクライナから多くの戦争難民。

たった2時間なのに色んな要素が詰め込まれていたし、私自身、精神疾患や親子関係もとても他人事だとは思えなかったし、なにより、

私も、母親が失くなるまでは兵庫区(長田区の隣)に住んでいたし、手に職をつけるために長田区で働き、在日の方とも仕事をしてた。日本人より情が熱かった。体育会系以上の熱さ。優しい人ばかりだった。手に職をつけるために転職したけど、結局、仕事についていけなくて自分の無能さ故に辞めてしまった。もともと引きこもり人間ができる仕事ではなかった。考えが甘かったと反省しかない。今では良い経験。

長田商店街も懐かしかった。グランドがあってよくそこでお弁当を食べてた。

灯もふとしたきっかけでフラッシュバックで症状が再発してたけど、私も映像を見ながら色んなの記憶が蘇ってきた。

色んな意味で、私のたもの映画でもあった。

望生ちゃん、導いてくれてありがとう!

この作品、精神疾患を抱えている方には辛いけど、それでもたくさんの方に観て欲しい作品でした。

間違いなくフィクションなのにめちゃくちゃリアリティーを感じる脚本だった。感情移入しまくりでした。演出もカメラワークも素晴らしかった!

演技を越えた灯のリアルな感情を皆さんにも見届けて欲しい。

KERA meets CHEKHOV「桜の園」

2025-01-11 22:38:00 | 舞台
最初、本来上演されるはずだった2020年版キャストに比べたら年齢が…、イメージが…、これミスキャストちゃうの??と思っていたら…

めちゃくちゃナイスキャスティングでした!

2020年版と今回を比較して、しのぶさんとユリちゃん、華ちゃんと峯村さん、生瀬さんと荒川良々さん、池谷のぶえさんの役は杉咲花ちゃんだと思ったら、2020年版は西尾まりさんだったのかな?2020年版のアーニャが花ちゃんだった。

いずれにせよ、2020版には、りえちゃんも、今回たまきさんが演じた役で出演予定だったのに、コロナで全公演中止。これ、大阪公演はなかったはず。いずれにせよ、チケットは取れなかった。 

復活上演を期待していたら、まさかのユリちゃんがラネーフスカヤ夫人!

しのぶさんと比較して申し訳ないですが、ま、どっちに申し訳ないかはさておき、ラネーフスカヤ夫人を演じるには若くないか?と思ってしまいましたが、

いやいやいやいやいやいやいやいや、

身長があるユリちゃんだからこそ、ラストの衣装がめちゃくちゃ映える!まるで銀河鉄道999のメーテルみたいだった!

オーラスに関係なく、

ミスキャストでは?と思っていた方々の演技力・表現力があまりにも素晴らしくて、2020年版キャストとのキャップが逆に役者陣の素晴らしい芝居力を引き出していたのではないかと思えたほど!

ぶっちゃけ、池谷のぶえさんが登場した時からもう掴みオッケー!藁

ぶっちゃけ、この役は、2020年版では花ちゃんが演じると思って観ていたから、あまりにも年齢差のキャップがあったのに(もちろん私の空想上)、それ以上に、池谷さんの若作り演技がめちゃくちゃ素晴らしくて大好き!!(笑)

「グッドバイ」の少女役を軽く越えてきたよ!

めちゃくちゃ良いアクセントになっていたと思う。

ぶっちゃけ、峯村さんが演じたワーリャ役がりえちゃん、大原櫻子ちゃんが演じたアーニャ役が華ちゃんだと勝手に想像して観ていたから、

櫻子ちゃんは等身大だったので全く違和感はありませんでしたが、私の中では違和感ありありだった池谷さんと峯村さんがめちゃくちゃ良かった!女優魂を感じた!

峯村さんがユリちゃんの娘だよ!ちなみに養女ね。

峯村さんもユリちゃんの娘に、池谷さんが少女に見えたよ!

池谷さんの、鈴木浩介さん演じるヤーシャに対して乙女度100%で演じていてめちゃくちゃ最高だった!

峯村さん演じるワーリャは、荒川さん演じるロパーヒンとお互い恋心があるのに、素直にも正直にもなれず、歯痒い関係性。桜の園に関してラネフースカヤとロパーヒンの関係性が良くないから、ラネーフスカヤに対して申し訳なさもあり、余計ロパーヒンに素直になれない。峯村さんは、そんなワーリャを純度100%で演じられていました。

いつも天然な役が多い荒川良々さんが、めちゃくちゃ普通に演じていて、こちらもギャップ萌え!

むしろ、井上君が演じたトロフィーモフの方がイメージに近い。

荒川さんが演じたロパーヒン役の方が宝塚2番手的な役柄で出番も多いから、ミュージカル界のトップスターである井上君の方が役付きとしては相応しいと思った。でも、荒川さんの真剣な演技も新鮮でめちゃくちゃ素晴らしかった!

それこそ、荒川さんの方がイメージに近いと思っていたトロフィーモフを演じた井上君の、とてもクリスチャンを演じた同じ人物だとは思えないくらいキャラ設定や、とてもミュージカル界のプリンスだとは思えない見た目、井上君の役者魂を感じる素晴らしい演技と覚悟を感じました。

このトロフィーモフという役は、30歳に近いのにまだ大学生。世の中が貴族社会から労働者中心の社会へと変貌すること、働かざる者食うべからざるの時代が到来することも予見している。

大学生だからまだ労働者の一員ではないが、考え方的には、農奴の息子から労働者として立派に財を成したロパーヒンと同類に思えたが、

実は、トロフィーモフの台詞にチェーホフのスピリチュアルメッセージがあってビックリした!

この物語は、貴族社会の世の中から労働者中心の社会、社会主義経済へと変貌、貴族社会の没落を予見させる物語だと思っていたら、

いやいやいやいやいやいやいやいや、

まさか、トロフィーモフが、社会主義経済でも資本主義経済でもない、更に進んだ社会、まさにスピリチュアルな社会を理想としている台詞に、

やはり、チェーホフはスピリチュアリストであると確信しました。

チェーホフ、社会主義経済が到来しても長続きしないことを分かってたんや!?と思ったら、

チェーホフ、恐ろしい子!←久々の月影先生(笑)

今、戯曲で確認したけど、ちゃんとあった!

マジで感動!!


ということで、

KERA meets CHEKHOVシリーズ、四作品コンプリートしてきました!!

今思えば、しのぶさん、斗真君、蒼井優ちゃんの「かもめ」に出会っていなければ、チェーホフがスピリチュアリストなんて絶対に気づくことはなかった。

ぶっちゃけ、あの公演って、チケットぴあで普通にチケットが取れる演目じゃなかったんよ。香取慎吾君の「オーシャンズ11」もしかり、ファンクラブじゃないと取れない演目だった。

どちらも、たまたま、戻りチケットがあったのか、電話受付での販売か抽選があって、ファンクラブに入っていない一般ピーポーでも早い者勝ちで取ることができたんよ。

今思えば、「かもめ」を観てなかったら、わざわざ東京まで「ワーニャおじさん」も観に行ってなかったよ!大阪公演がなかったから。

とても喜劇だとは思えないチェーホフ四大戯曲が、どれもスピリチュアルメッセージがあってマジで驚きが隠せない!!

ケラさん、チェーホフ作品を上演してくれてありがとうございます!

若い頃に戯曲を読んだときは、人が死ぬ物語を喜劇と言ってるチェーホフに対して人間性を疑っていたが、

こうやって、ケラさんが上演してくれたお陰でチェーホフがスピリチュアリストであることを知れて、ケラさんに感謝です!


そして、KERA meets CHEKHOVシリーズの最終章である「桜の園」を観させてもらって、

一番、ケラさんらしい演出であったことに驚いた!

場面転換に、派手ではないプロジェクトマッピングと小野寺修二さんのステージング。わざと笑わせようとしない、役者陣による役作りによって自然に生み出される笑いが最高に心地良かった!

ぶっちゃけ、「かもめ」の時はあざとい笑いが鼻についたが、その次の「三人姉妹」が、ケラ色がないめちゃくちゃ正当な演出で、めちゃくちゃ素晴らしく、「ワーニャおじさん」も更にケラ色がない正当な演出で、

今回の「桜の園」も正当な演出でくるのかと思ったら、池谷さんの登場からケラ色満載!

役者陣の演技が素晴らしくて、KERA meets CHEKHOVシリーズ最終章にして傑作が誕生した感じ。

正当な「三人姉妹」も良かったけど、「桜の園」は、キャスティングと絶妙な配役、ケラさんらしい最終章に相応しい素晴らしい演出でした。

もし、しのぶさんがラネーフスカヤ夫人を演じていたら、いつものがなり声で笑いを取っていたかも…と想像してしまった。m(__)m

やはり、ユリちゃんは元々低い声だから多少男役声が出ても違和感がない。

そう、ユリちゃんにしては珍しく、心に闇を抱えた大人しげな役だったのも新鮮だった。

ラネーフスカヤのピュアさ、我が子を失った悲しみと贖罪の気持ちが、お金を僅かばかりしか所持していなくても、誰にでも分け隔てなくお金を恵んであげようとしているんだと思った。

桜の園は、ラネーフスカヤにとっては、風と共に去るぬのスカーレットのタラと同じなんよね。

スカーレットは、タラを守るために北軍とも商売をし働きまくり稼ぎまくっていたが、ラネーフスカヤはロパーヒンの助言も聞き入れられなかったもんね。ただ時を待つのみ。

いずれにせよ、桜の木々が伐採されることは、ラネーフスカヤにとっては身を削られる思いであったことには変わらない。スカーレットと違って、息子を失くした心の闇から全く開放されていないからね。スカーレットの方がよほど前向き。

たとえ、土地を失っても、まだ生いていける場所や術があるなら決して悲劇ではないと思った。


では、上記で述べていない他のキャストに関しては、

ケラ版チェーホフ作品の常連の山崎一さん演じる、ラネーフスカヤの兄ガーエフ役の安定ぶりの存在感。ラネーフスカヤ同様、貴族社会のしがらみから逃れられない。いや、現実を受け入れられない役どころ。

貴族社会においては、召し使いがいて執事がいて、農奴がいるのが当たり前で、そんな中、老僕フィールスを演じた浅野和之さんもめちゃくちゃ素晴らしかった!

明らかに認知症があり、歩き方もしかり、もう立派な大人であるガーエフに対して子供扱いしている様が、池谷さん同様、なんとも言えないチャーミングさと癒しがあって、ラストは本当に切ない。

フィールスは、ひとつの時代が終焉を迎える、正に象徴的人物なだけに、浅野さんのアプローチは本当に素晴らしかった!


最初は、池谷さん演じるドゥニャーシャといい感じだったのに、ラネーフスカヤと共にフランスから戻ってきた従僕のヤーシャにドゥニャーシャが一目惚れしてからは、ずっと振られっぱなし…、ひょっとしたらピストル自殺するのでは?と見ていて危なげな雰囲気しかないエピホードフを演じた山中崇さんも良い味を出してました。

エピホードフにとっては恋敵であるヤーシャを演じた鈴木浩介さんも、癖のある髪型で登場し、山中さんも鈴木さんもドラマではよく拝見している俳優さんなので生で拝見できて嬉しかったです。鈴木さんは初めてだよね??←誰に聞いとるねん!?藁

登場する度にラネーフスカヤにお金を無心するピーシチク役の藤田秀世さんも良い味出してた。正直、登場する度にウザくて仕方ない役ではあるけど、人生は明日何が起こるか分からない、良いこともあれば悪いこともある。を象徴したかのような人物でしたね。貧乏神みたいな存在だったのが、実は福の神みたいな。福の神は良く言い過ぎか…藁

そして、最後はりえちゃんが演じる予定だった、アーニャの家庭教師シャルロッタ役のたまきさん。ぶっちゃけ、りえちゃんが演じる役だった割には重要な人物には思えなかったけども…m(__)m 

手品を披露したりと要所要所で登場する。

そうそう、ドイツ語でカウントする台詞があって、何でドイツ語なん?と思ったら、戯曲もドイツ語だった。「人はいいが、音感は下手」のドイツ語の台詞もあった!

てっきり、ワタクシのためにサービスでドイツ語を使ってくださってるのかと思ってました!←めちゃくちゃ自意識過剰!

(笑)

たまきさんの独特な透明感がある声が好きなので、もっと登場して欲しかった。

たまきさんのピュアな役も好きだけど、「祈りと怪物」の次女役みたいな刺のある役も好き。シャルロッタは、どちらかというと刺がある方なので、もっと出てきて欲しかった!

そうそう、感想は書いてませんが、たまきが出てた「三人吉三」も良かったです!!

ということで、いつもの如く支離滅裂な文章になっておりますが、

KERA meets CHEKHOVシリーズ最終章としては、大変後味が良い仕上がりでございました!

ほんま、キャスト陣皆さんキャラ立ちしまくり!その演技力に惚れ惚れしました!

本当に最高でした!!