スウィーニー・トッド

2024-04-29 19:57:58 | ミュージカル
めちゃくちゃ進化してるやん!?

めちゃくちゃ良かった!!!

いやー、まさか武田真治君演じるトバイアスに泣かされるとは思ってもみなかったよ!

プリンシパルからアンサンブル、オーケストラに至るまでめちゃくちゃ熱い熱い公演でした!

ということで、大阪大千秋楽に行ってきました。

宮本亞門さん演出初演から実に17年ぶりに拝見!

その間に何回も再演され、ファイナルと銘打った公演からの復活再演!

ぶっちゃけ、初演を思い起こしながら観ていましたが、初演しか観てないからこその進化っぷりを堪能させて頂きました。

もちろん、こんな展開だったけ???乞食女さんはこんなに台詞や歌、登場シーンがあったけ???など忘れてしまっているシーンもありましたが、それを踏まえてもめちゃくちゃ感動させて頂きました!

初演からの役者さんもソコソコのいい年齢になっているのに、初演を上回る迫力、進化っぷりに感動でございます!

ダブルキャストがいる中で、初演から続投の市村さん、しのぶさん、真治君の大千秋楽を観させてもらい、梅芸、チケットの神様に感謝しかありません。

大千秋楽ならではのスペシャルカーテンコール。初演しか観てないのに特別な空間に居合わすことができて幸せでございます。

本当に大千秋楽、おめでとうございます!

いや本当に、市村さんもしのぶさんもいい年齢に達しているのに全くの衰え知らず。

真治君なんて、とても50代だとは思えないくらい、11歳の少年役も全く違和感ないくらい若々しい!

御三方とも、初演よりパワーアップしてる!役の捉え方も深くなってる!

市村さんなんて、トッドの苦しみや恨みがよりリアルに表現されていて、ウルッとすること数回。

しのぶさんは、初演の時は裏声で苦労されていましたが、その時に比べたら、地声を使ったり、歌唱に感情や表現力が加わっていてめちゃくちゃ自然に歌っていた!

もう高音や裏声は使わないだろうと思っていたのに、まだ使ってた!しかもめちゃくちゃ自然に。

真治君は、めちゃくちゃピュア度が増していて、初演はただの坊やのイメージだったのに、しのぶさん演じるラヴェット夫人に対する忠誠心にマジ泣かされた。なのにラヴェット夫人は…な展開もアイロニーたっぷりだった。

アイロニーはラストまで畳み掛けてくるので、最後まで目が離せない。

アンソニー役の山崎大輝君がめちゃくちゃ歌もお芝居も上手かった。

ジョアンナ役は久々に拝見する唯月ふうかちゃん。ふうかちゃんも籠の鳥のような精神的にも危ぶい感じを好演。

ターピン役は、こちらも久々の安崎求さん。やらしさと愛情深さのさじ加減が絶妙でした。やはり、久々に聞く安崎さんの声はええ声や!

乞食女のマルシアさんがめちゃくちゃソニンちゃんに見えて仕方なかった。ジョアンナがソニンちゃんだったらリアル母娘にしかみえなかっただろうね。

初演の頃は、乞食女の印象が薄かったが、今回は出番や台詞が増えたような印象。

全体的に暗く重く誰も報われない物語の中で、市村さんとしのぶの掛け合いが最高に楽しく、悲劇要素と喜劇要素が上手く混じり合っていて本当に楽しく観させもらいました。

真治君もそうだけど、初演は皆さん歌に苦労されていた印象しかありませんでしたが、そこから、真治君はトート閣下、しのぶさんはピアフと、数々のミュージカルに出演された経験がめちゃくちゃ活かされている素晴らしい公演でした。

一昨年?熊林さんの「Into the wood」を観させてもらって、久々に「スウィーニー・トッド」を観たいと思っていたので、市村さんもファイナル公演と銘打ったけども再演したい想いが強く しのぶさんと亞門さんのスケジュールが合って再演が実現されたと仰ってましたが、まさか市村さんとしのぶさんコンビで観られるとは本当に思っていなかったので、本当に本当に感慨深いです。

初演は、今ではミュージカルや舞台で引っ張りだこの城田君やソニンちゃんが出ていて、初々しさを今でも忘れられない。精神病院のソニンちゃんが強く印象に残ってる。城田君は1人スポットライトを浴びて歌うソロやね。本当に懐かしい。

しのぶさんなんて、普段のお芝居は、共演者の存在を食ってしまうくらいアピール力が半端なかったけど、ミュージカルは本当に大変そうだった。良く引き受けたなーと思ったほど。っていうか、しのぶさんにも不得意分野があることが知れて、観ていて逆に新鮮だった。←意地悪な言い方!

市村さんは、ミュージカル界出身だから歌えて当たり前のところがありますが、役の表現が初演と全然違う。本当にパワーアップしてた。

初演は、大変なミュージカルということをまざまざと感じましたが、作品自体は亞門さんの演出が本当に素晴らしかった。美術も良かった。

今回は、前回までの美術は保管せずに完全に破棄されたとのことで、新しく美術を作り上げたそうですが、劇場が広くなったからか転換や動きが多くなった印象。

死体が1階に落ちる装置とか初演の時も印象に残っていたので再度拝見できて、落ちる方は本当に怖いだろうな〜と思って観てました。マルシアさんも落ちていったね。

初演も生オケだったかは忘れましたが、生オケの迫力が凄いと思ったら、めちゃくちゃ奏者が多くてビックリ。オペラ並みの編成だった。しかもミュージカルでは珍しくハープが使われていた。シンセサイザーなど電子音を多用するミュージカルと違って音がクラシック演奏並みで豪華で贅沢だった。

カーテンコールでは、大はしゃぎのしのぶさんが小田さんの歌を歌ってくれたり、

真治君が自分のスマホで客席を背景に集合写メを撮ったり、大千秋楽ならではの大盛りあがりでした。客席の拍手も凄かったもんね。

美術も刷新されたので、間違いなく再演はあるでしょうね。続投を楽しみにしてます!



異人たち

2024-04-28 00:54:51 | 映画
さすが、スピリチュアル大国イギリス作品だけあるなー!

まさか、幽霊?魂?にも気付きと学びを得る描写をするとはね!

大林宣彦監督の「異人たちとの夏」も良かったけど、アンドリュー・ヘイ監督版も良かった。

ぶっちゃけ、途中までは、主人公をゲイ設定にしたことで無茶振りというか、強引設定というか、

主人公がおネエキャラならいざ知らず、どう見ても第一印象ではノンケ(ゲイじゃない)にしか見えない主人公に、いくら少しは面識はあったとはいえ、ゲイバーで見かけたとかじゃないのに、いきなり家にやって来て主人公がゲイであること前提で話しかけるのはどうなん?と思ってしまった。

これってお国柄と文化の違いか???

お母さんに自分がゲイであることを打ち明けて拒絶されるって…、

いやいやいやいやいやいや、私なら2度とこんな家に帰りたくないわ!

大林監督版は、確かにゲイ設定ではなかったけど、大きくなった息子と再会した時の、息子の全てを受け入れているお父さんとお母さんの描写がぴか一だっただけに、アンドリュー版はあまりにも両親の描写が現実的過ぎて、正直ガッカリしていた。っていうか、イラッとした、

前半はね!

主人公が、母親に拒絶されながらも再び両親に会いに行ってからがもうぴか一!素晴らしかった。ちょっとウルッときた。

まさか、幽霊か魂のどちらか分からない母親が気付きと学びを得るなんて、「異人たちとの夏」を観たあとだけにさすがに思わんやん!?

お父さんも、自分が生きている時には気付けなかった息子の悩みを理解しようと努めるわけやん。

マジ、素晴らしい!としか言いようがない。

まんまと騙された!って感じ。

ラストに関しては、大林監督版はホラーだったけど、アンドリュー版はスピリチュアル。気付きと学びが描かれている。

主人公は、今まで他人に心を開けずに生きてきて、ましてや愛することも知らなかったが、同じマンションの住人(彼)との出会いによって、最初は彼を拒絶していたけども、体の関係を持つようになってから次第に愛することを学び始める。

最初は拒絶していた母親からも彼と恋愛を応援されるようになる。

そして、ラストは、ひょっとしたら主人公も死んでいたのかもしれないけど、既に死んでいた彼と魂で結ばれワンネスとなって星になる。

いやいやいやいやいやいやいやいや、

めちゃくちゃ、ええやんかいさ!!

最初はゲイ設定に無理があるんとちゃうん??と思っていたけども、

ゲイ設定だからこその親子の確執が、それぞれが学びと気付きを得ることでお互いを理解し合い、そして、生きていた時よりも親子の絆を深めていく。

大林監督版にはなかった描写がマジぴか一!


ということで、大林監督版の「異人たちとの夏」のイギリスリメイク版を観てきました。

あまりにも大林監督版が素晴らしかったから、アンドリュー版も期待したら、最初は、えっ!?と思ってしまったけども、後半は反動でめちゃくちゃ感動した。

大林監督版は、ファンタジックホラーだったけど、アンドリュー版はファンタジー&スピリチュアルでしたね。

どちらも甲乙つけがたいくらい素晴らしかった。

大林監督版は、監督独特の照明、セピア風な照明の色がめちゃくちゃ幻想的でノスタルジックな雰囲気を醸し出していて、まさに古き良き昭和の東京の下町の雰囲気を見事に再現されていた。

大林監督カラーが、風間杜夫さん演じる主人公と、片岡鶴太郎さん演じるお父さん、秋吉久美子さん演じるお母さんの親子関係の描写がより一層郷愁に溢れる効果を担っていた。

風間さんも鶴太郎さんも秋吉さんも実年齢は変わらないのに、不思議なことに親子にしか見えない。風間さんが本当に鶴太郎さんと秋吉さんの息子にしか見えない。

風間さんが本当に少年時代にタイムスリップしたかのように、お父さんとお母さんに甘える様がめちゃくちゃ良い!

鶴太郎さんも、下町のお父さんの雰囲気がよく出ていて温かみがある。

秋吉さんも、映画のポスターを見た時は、エロい役なのかと思っていたのに、実際は、エロ担当はまさかの名取裕子さんで、秋吉さんは、良い意味で見た目のエロさに反して息子に対してめちゃくちゃ愛に溢れている下町のお母ちゃんを好演していました。

まさか名取さんが出てるなんて知らなかったので、エロ担当と書いたら失礼ですが、美しい名取さんが、エロ担当だけでなくまさかのホラー担当でもあったのでそのギャップにしてやられましたね。

秋吉さんも名取さんもイメージ的には逆の役だったので、そのギャップとキャスティングが絶妙だった!

タイトルに夏が付いているように、熱い夏、お盆の先祖帰りの時期といった日本ならではの風習?が背景にあるのが凄く活きている。

まさかのホラーテイストだったことも驚きましたが、YouTubeで秋吉さんのトークショーを観させてもらい、大林監督は元々ホラー作品を作りたかったとのこと。このホラーテイストが、賛否両論あったそうですが、私は大林監督の「HOUSEハウス」を思い起こさせる演出だったので結構好き。

加えて、郷愁漂う大林監督カラーが最高に好き!

「時をかける少女」や「さびしんぼう」「転校生」、私が大林監督作品で一番好きな「姉妹坂」も、大林監督カラーが活きているのであの色作りは唯一無二!

って書くと、「異人たちとの夏」は昔から好きなんだと思われるかも知れませんが、実は観たのはつい最近です。松竹のYouTubeで期間限定配信で観させもらいました。

30年以上前に封切られていたことは当時は知っていましたが、なんせポスターで、秋吉久美子さんが出ているからエロ作品だと思っていたのでm(__)m観てませんでした。当時の評判の良さは知ってましたが、まさか大林監督作品だとは知らなかった…。

たまたまYouTubeで観たら、名取裕子さんは出てるわ、秋吉さんは素晴らしいわ、世界観はまさに大林監督ワールド炸裂で、めちゃくちゃ素晴らしかった。

私も主人公同様に両親がいませんが、「異人たちとの夏」を観たら、せめて夢の中だけでも両親が出てきたら素直になりたいな~と思ったほど。

そう、私の夢に両親が出てくる時は、毎回亡くなっていることを忘れて生前同様に喧嘩してる。目が覚めて両親がいないことに気付く。いつもこのパターン。

で、「異人たち」を観たら、こんな親なら二度と会いたくないと思ってしまったけども(前半はね!←ここ強調)、後半からは、

原作を読みたくなるくらい、「異人たちとの夏」とは異なるシチュエーションとラストだったので、全くホラーテイストなし…、山田太一さんが描きたかった世界観を知りたくなった。

感想は最初に書いた通りですが、ゲイ設定に無理くり感は否めないけど、結果的にはスピリチュアル要素満載だったのでコチラも負けじと良かった!

コチラは、お父さん役のジェイミー・ベルもお母さん役のクレア・フォイも主人公のアンドリュー・スコットより若い役者さんなのに、ちゃんとお父さんとお母さんに見えた。

2人とも交通事故で亡くなっていることを分かっているのに、両親として、人間として、まだまだ成長しようとしている描写が本当に良かった。

アンドリューは、風間さんと違って、表現面で息子感というか少年感はなかったけど、自然体で息子を演じていた印象。見た目はオッサンやけど心は少年みたいな感じ。決して少年ぽく演じてはいない。

恋人役のポール・メスカルは、名取さんと違って主人公を呪う役ではなく、結果的には主人公を愛し愛されたいと思ってる役。寂しさを埋めてほしいと思ってる。至って人間。

名取さんの時は、ラストの匂わせを最初から伏線として描いていたけど、コチラは匂わせ一切なし。ラストで真相が明かされる。真相が明かされるだけでなく、主人公と魂で結ばれる。

名取さんの時は、完全に低級霊で除霊?されてしまう。私にとっては、この設定もリアルではあるんだけどね。弱った心に低級霊は憑きやすい。

それはさておき、

「異人たちとの夏」を観ていたからこそ楽しめた「異人たち」だったと間違いなく言える。

イギリスにはお盆がないから、夏は強調されていない英語タイトルも納得。

日本ではあり得ないが、欧米では幽霊が出る物件は高値がつくという文化なので(ひと昔はね。今は知らないけど…)、幽霊に対して恐怖心がないのも欧米文化だなと納得してしまった。

本当に本当に山田太一さんの原作が読みたくなった。

銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件

2024-04-20 22:49:55 | 舞台
和製リーマントリロジーって感じかな?脚本の起こし方がね。

それにしても、谷原章介さんが大健闘やったね。

谷原さんの役が、本業ではないけども同じキャスターということで、ほぼ全編状況説明をする役割を担っていましたが、めちゃくちゃ台詞量が多かった!原稿や台本が眼の前にあるわけじゃないから、マジ大変だったと思う。

ということで、東京公演の初日?ゲネプロ?ダイジェスト映像を見た時に、不可解なタイトルのさわりが見えてきて俄然興味が沸いたので、久々の花ちゃんの舞台を観てきました。

ぶっちゃけ書くと不必要なくらい説明台詞が多かった。各シチュエーションに状況説明が入るので残念ながら感情移入が出来なかった。

だけども、

どなたがこの原作を舞台化したいと思ったのかは分からないけど、題材は決して悪くない。むしろ、素晴らしい!

G2さんの見せ方やアイデアも素晴らしい!伝えたいメッセージもビンビン伝わってきた。ただ説明台詞がね…。

作品のテーマは至ってシンプルで、命の向き合い方と、夫婦間や家族間、パートナーシップや個人も含めた思い遣りだと思うんよね。

タイトルからしてめちゃくちゃ斬新。物語の導入部分もファンタジー要素満載。だからこその気付きと学び、そして心の目だと思うんよね。


突然銀行強盗が、「今持っている物の中で 最も思い入れのある物を差し出せ!」と言って、その場にいた13人から思い入れのある所持品を奪う。それは魂の51%に相当する。

彼らに奇妙な出来事が起こり、その51%を取り戻さないと命がなくなる。取り戻すためには自分で考えるしかない。自ら気付きを得なくてはならないという設定。

13人にそれぞれ奇妙な出来事が起こり、花ちゃん演じる主婦のステイシーは1日単位で背が縮んでいく。数日経ったら消えていく運命。

さあ、ステイシーにとって気付きとは何だ?という物語。

その気付きとは、スバリ最初に書いたこと。

但し、ステイシーだけが気付きを得ても背は縮む一方というのが、この作品の素晴らしいとこ。

観客の誰もが、13人に課せられた試練は本人自身が乗り越えなくてはならないように見せかけておいて、実はそうじゃない。

そうじゃないから、雪だるまになったご主人は溶け始め…。男のお母さん(妻にとっては姑)が何十人にも細胞?分裂し、挙句の果ては風に吹き飛ばされ…。入れ墨のライオンが飛び出してきて追いかけられ…。汚れた衣服を纏った神様が現れ、洗濯機に入れてしまい、挙句の果ては…。ステイシーは縮む一方。

解決の糸口が見つからぬまま、悲劇が起こる(人によっては)。

この作品は、「ビッグ・フィッシュ」みたいにファンタジー要素で描かれているけども、本当は、「グリム童話」の別解釈と同じように深いメッセージが刻み込まれている。

人間の命には限りがある。自分だけではない、相手も。それこそ、銀行強盗に襲われてピストルで撃たれるかもしれない。明日絶対に生きているとも限らない。寿命を全う出来るかも分からない。地震と同じように、明日何が起こるかだれも予想できない。ありふれた日常、当たり前の日常が永遠に続くとは限らない。

その生活や人生の中で何が大切かを訴えた作品だと思うんよね。

ライオンの入れ墨を彫ったなら、ライオンに追いかけられたら、逃げるんじゃなくて、愛をもって抱きつきに行けよ!ってことだと思うんよね。好きでライオンを選んだんだから。

夫婦間もそう、家族間もそう、パートナーシップもそう。縁あって関係を築いたわけやん?嫌なら最初から関わり合うなよ!ってことやん。

それって、一方だけが頑張ったらいいという話ではない。いかなる時でも、双方が歩み寄ることが大事になってくる。

赤ちゃんができると、夫は浮気に走りやすい。それはなんでや?ってこと。もちろん、浮気した夫が悪いけど、夫だけが悪いんか?ってことになる。

じゃあ、妻が赤ちゃんにばかり気にかけるから妻に問題があるんか?って言い出したら、もう喧嘩しかない。それじゃ何も解決しない。そもそも双方に歩み寄る姿勢がないことが一番の問題。放ったらかしとかね。

ステイシーと夫との関係性もある意味冷めきってる。妻が縮んでいってるのに、夫は踏み潰される心配しかしてない。妻が消えていなくなったら、どうやって子供を育てていくんや?想像したことあるか?夫はまだ、ことの重大性に気付いていない。

妻がミクロの大きさになって夫がやっと気付きを得る。ギリギリセーフ。そこから妻がどうなるのかは、原作を読まないと分からないけど、思い遣りと歩み寄りの大切さを訴えていたのは間違いないと思う。

花ちゃん演じるステイシーがミクロまでどうやって見せていくのか、G2さんの手腕は素晴らしかったと思う。パペットを使うとは思っていたが、それだけに非ずでしたね。ワンパターンにならず様々な工夫が施されていました。等身大の花ちゃんが本当に小さく見えた!

花ちゃんのステイシーは、いつ消えていくか分からない不安と闘いながら、谷原さん演じる夫と赤ちゃんと切実に向き合う姿がリアルに表現されていました。

こんな言い方したら失礼を承知で書きますが、やっぱ花ちゃんは、実体験がなくてもリアルに演じられる天才!

初演のメルトゥイユ夫人なんて、実年齢何歳なん!?と聞きたくなるくらい花ちゃんのメルトゥイユ夫人は衝撃だった。そこからあの伝説のカルメン!凄かったもんな。

谷原章介さんは、本当に台詞量が半端なかった。感情を入れられる台詞もあったけど、ほとんど状況説明台詞。情報番組のキャスターをやってるだけあって、凄く説明が上手い!聞き取りやすい!でもってお芝居も上手い!←当たり前だけど…。

ステイシーに対して冷めてる感とか、仕事人間のイメージとか本当にリアルで上手かった!かつストーリーテラーの役割を担っていて本当に大変だったと思う。本当に素晴らしかった。

「カム・フロム・アウェイ」も人海戦術で場面転換を駆使していましたが、こちらもダンスやマイムを取り入れた演出がなされていて、ダンサーさんの柔軟性と身体能力の高さが生かされてましたね。

演出が良かっただけに、脚本が状況説明過多だったのが残念でしたね。「ガラスの仮面」や「スワンキング」のG2さんの脚本が素晴らしかっただけにね。

次回のG2さん脚本演出作品は、浦井氏のモディリアーニ。これはマジ楽しみ!

月組「Eternal Voice 消え残る想い」「Grande TAKARAZUKA 110!」

2024-04-16 22:36:30 | TAKARAZUKA
さすが、正塚先生!

ワタクシの大好物をよくご存じで!藁

あらすじを読んだ時からワクワクが止まりませんでしたが、

素晴らしい脚本演出でした!

組子たちも、さすが芝居の月組だけあって表現力が安定している!

ということで、レイコちゃんうみちゃんコンビのサヨナラ公演を観てきました。

ぶっちゃけ、ラスト以外はサヨナラ色が強い作品だとは思いませんでしたが、芝居の月組を復活させた今の月組にピッタリな作品でした。

わざとらしいギャグがなくても観客を笑わせることが出来る、芝居心があるからこその確かな間とセンス。本当に素晴らしかった。

あ、コメディー作品ではないので誤解なきように。

全体的には暗い物語。笑いの要素が一種の清涼剤的な役目を果たしている。

ストーリーは、ワタクシの大好物の降霊モノ。今やってる「光る君へ」でも呪いのアイテム化としている。

メアリー・スチュアートの首飾りを巡って大英帝国の行く末を案じる展開。

さすが正塚先生!と言いたくなるくらい伏線の敷き方が上手い!

メッセージ性があって、その引き出し方が秀逸!

ヴィクトリア女王の時代だから、史実を変えられない前提で練りに練った脚本になっているので、基本オリジナル作品しか書かない正塚先生の手腕を堪能できる作品になっている。

あと、正塚先生ならではの幕前芝居をしない舞台展開がまじアッパレ!

今回も盆は回る回る!迫りは上がったり下がったり!

舞台展開を観てるだけでも舞台芸術を堪能できる。

最近は、宝塚に限らず外部でも原作ありきの作品が多い中、オリジナルが書けるのは本当に天才だと思う。ミュージカルの世界でオリジナルを上演するって本当に怖いことだと思うんよ。エリザベートと違って誰も分からないから。

いくらサヨナラ作品で集客が見込めると言っても、駄作は駄作だからね。

そんな中、単調じゃない物語を書いた作品を書いた正塚先生の手腕はお見事!と言いたい。

正直なところ、100%正塚先生オリジナルのフィクションだと分かっているのに、設定もあり得ないのに、不思議なことにめちゃくちゃリアリティーがあった。

っていうか、正塚先生がまだまだ衰え知らずだったことに正直驚いた。

今回は、舞台転換だけでなく映像も駆使していてイメージを広げやすかった。更に音楽がめちゃくちゃ良かった!

組子に関しては、

レイコちゃんはお得意のクールビューティー。

うみちゃんは、シンプル・イズ・ベスト。

ちなつ様は、コメディアンでもないが、カッコつけでもない。中間な感じ。瑠音君との掛け合いが最高!

オダチンもシンプル・イズ・ベスト。

珠李ちゃんは、まさかの活躍。

みちるちゃんは、この物語の中で一番キャラ立ちした役。さすがに美味しい役とは書けないが…。

一番美味しい役は、出番は少ないがメアリー・スチュアート役のりりちゃん。

今回休演者が出ての代役公演でしたが、本役ではセバスチャン役が佳城葵君なん?叔父さん役の方が合ってると思うんだけど…。良い味出てた。セバスチャン役は大楠てら君がピッタリだと思うんだが…。

本役さんのお芝居は観てないけど、代役でも遜色ないのが芝居の月組のなせる技。

ショーは、

正直に書くと、やはり中村B先生とは音楽の相性が合わないことを出だしから痛感してしまい、何度もウトウトしてしまったが、

110期生のロケットの曲が!

知る人ぞ知る♪A prety girl is just like a melody♪

最近は滅多に聞くことはなかったが、30年前の宝塚を知る者としては名曲中の名曲!

月組のトップスター大地真央さんの曲と言っても過言ではないくらい、真央さんのイメージしかない曲。ずっと宝塚の曲だと思っていたら、映画「ジーグフェルド・フォーリーズ」で使われていた曲らしい。1919年だよ!

そこからもう目がパチパチ!110期生のロケットが素晴らしく、今回は2階席から見るほうがお得なくらいフォーメーションが素晴らしかった!

♪荒城の月♪のアレンジも良かった。

そこからのフィナーレが、もう、まさかのウルウルだった。

ショーもあまりサヨナラ色がない内容だと思っていたら、フィナーレから完全にサヨナラ色突入。

トップコンビ以外の卒業生にも餞となる演出が施されていて、まじウルウル状態だった。

しかも、次期トップコンビのちなつ様と珠李ちゃんをお膳立てする演出もあって前半とのギャップでめちゃくちゃ感動しまくってた。

レイコちゃんは、新公初主演の「Shall we ダンス?」から注目していたので、まさか月組に組み替えするとは思ってなかった。名前に月がついてはいるから月組でトップになるのは必然だったね。本当、月組に来てくれてありがとう!

うみちゃんは、遅咲きトップだったけど、レイコちゃんとうみちゃんでギャツビーを生で観れて最幸でした!うみちゃんだからこその素晴らしいデイジー像だったと思う。

レイコちゃんとは添い遂げないかもと思っていましたが、やはり、ファンとしては添い遂げてくれて嬉しく思う。うみちゃんもありがとうね!

コロナ禍でどの組も公演中止が余儀なくされ、チケ難も相まって観劇が困難な中、運良くお二人の大劇場5作品を観ることが出来たのも本当に本当にラッキーでした。

よく思い出したら、外箱公演もアンフィシアター以外は観てた!凄い縁!

この公演でワタクシイチオシ下級生の彩音星凪君も卒業ということで残念極まりないですが、あと、最低でも2回観る予定なので、卒業される方々を見届けたいと思ってます。

1日も早い休演者の復帰を願ってます。それまでは無理せず療養してください。



オッペンハイマー

2024-04-15 00:06:00 | 映画
むっちゃ胸◯悪っ!

あ、決して作品に対してではありません。

訂正:ストローズが矢面に立たされいるのは裁判じゃなくて公聴会の間違いでした。m(__)m

オッペンハイマーがソ連のスパイでないか詰問されていのは原子力委員会の聴聞会で合ってるよね??

描かれている内容と、描かれていない裏の内容(私の想像)に対して憤りを感じているだけです。

作品自体は、見終えたあとモヤっとして、スッキリしないわだかまりが残る内容。ちゃんと把握できていないからでもあるけどね。

ということで、アカデミー賞発表以前から、“バーベンハイマー” という造語がSNS上で話題になっていたり、日本で公開されるのか否か?映画ファンの間では常に話題で持ちきりの本作。

やっとこさ日本での公開も決まり、観てきました。

実は「メメント」以来のクリストファー・ノーラン作品。彼の作品はめちゃくちゃ話題になったり評価が高い作品が多いのに、私はほとんど観てない。

作品賞は納得!受賞シーンを見て以来、ぶっちゃけ認めたくないけどロバート・ダウニー・Jrのオスカーも納得。もちろん、キリアン・マーフィーのオスカーも文句なし。

正直なところ、テーマがテーマだけに監督のクリストファー・ノーラン目線で観たかったけど、最後まで日本人目線でしか観れなかった。

もう、日本人目線で観たらもう憤りしかない!

戦争を終わらせるための原爆投下?言いたいことは分かる。

なんで無実な市民を殺す必要があるねん!?

それは、アメリカに対してだけでない。日本も同様。日本も愚かすぎる。戦争自体マジ馬鹿馬鹿し過ぎる!

原爆投下以前に、原爆実験の裏で一体何人もの命が犠牲になってるねん!?

戦争なんて、領土拡大が目的じゃないから指導者含む上層部を殺しても意味ない。要は服従させることが目的やん。都合のいいように従わせたいだけやん。

こんな作品を観させられたら、人間魚雷、神風特攻隊…、一人一人の犠牲なんて犬死にとしか思えん。死んでいった者達は、自分の命を犠牲にして日本を勝利へと導くと信じて特攻してるわけやん?なんでお前らが犠牲になって死ななアカンねん!?観ていてずっと虚しさと憤りがせめぎ合ってた。

ほんま、誰のための犠牲やねん!?誰のための戦争やねん!?

マジ理解不能!!

原爆を作ったことに対する憤りもあるけど、それ以上に、原爆を落としてしまったこと、落とさせてしまったことに対する憤りが抑えきれない。

ドイツにも落としたかった…。

全くもって意味不明!

原爆実験が失敗していたらどうなっていたんやろね…。

この作品、戦前戦後と大きく二部構成になっていて、白黒かカラー映像でしか時代が区別されておらず、最初は全くもって意味不明だった。

白黒映像が過去で、カラーが現在だと思ってたら逆だった。

前半からちょくちょく白黒映像で意味不明な会話が繰り広げられているシーンが挿し込まれていて、なんのことかさっぱり分からず、白黒映像だから過去のフラッシュバックだと思ったらその後(戦後)だった。後半で明るみになる流れ。

説明を加えるならば、原爆が投下されまるまでの前半がとその後のオッペンハイマーに関する聴聞会と裁判の後半。ちなみに裁判はロバート・ダウニー・Jr演じるストローズが被告人かつメインスポットになっている。そして、その裁判から数十?年後が描かれている。

もうさ、後半の戦後の聴聞会と裁判がマジ馬鹿馬鹿し過ぎる。

戦前の原爆が発明され投下されるまでは、映像で描かれていない世界状況(特に日本)を想像してイライラと憤りが募っていたが、後半はマジ、

何十万人という犠牲の裏で下らない聴聞会や陰謀や裁判が行われていたことに憤りしかなかった。

聴聞会の内容が、オッペンハイマーはソ連のスパイだったのではないかという…。

いやいやいやいや、原爆と関係ないやん!?

くだらな過ぎる!

あ、作品をけなしてはいません。あくまで内容です。

オッペンハイマーの弟や恋人?は共産党員。現妻は元共産党員だった。

オッペンハイマーは、原爆を発明しながら彼らと関わりを持っていた。弟に関しては、原爆実験のためにわざわざ呼び寄せたほど。

いかにもオッペンハイマーを黒に見せながら、オッペンハイマー自身は、戦争を終わらせるために原爆を発明していただけで、決してソ連のスパイではない。どちらかというと戦前エピソードは、オッペンハイマー目線で描かれているから観客には真相は明々白々。ま、理解不能な行為もあるけどね。特に恋愛に関して。

オッペンハイマー目線だから必然的に共産党関係エピソードも盛り込まれている。ちなみにオッペンハイマー自身は共産党員ではない。そこもちゃんと描かれている。

第三者目線だと、オッペンハイマーがソ連のスパイだと思われても仕方ない見せ方になっているだけ。

オッペンハイマーを良く思っていない人間がいて、陥れようと裏で策士していたのがロバート・ダウニー・Jr演じるストローズだったというオチ。

オッペンハイマー自身は、特別日本に恨みがあって原爆を作ろうてしていたのではなかった。自身はユダヤ人だから必然的にナチスを恨んでおり、ナチス(ドイツ)もまた原爆を作れる科学者がいるからナチスよりも先に作りたかっただけ。

あくまで戦争を早く終わらせるための原爆であり、これ以上アメリカ兵を犠牲に出さないため、平和を取り戻すためであった。

オッペンハイマーは、広島と長崎に原爆が投下されて20万人以上の犠牲者が出たことを後悔していた。原爆も水爆も要らないと訴え出ていた。だが、アメリカ政府としては、ソ連に対抗するためには原爆は必要不可欠だった。政府とオッペンハイマーと意見の相違があるのもポイント。

戦時中、アメリカの敵はもはやナチスでも日本でもなく、ソ連というのがなんとも言えない皮肉。戦時中から冷戦勃発。ほんま、馬鹿馬鹿しい。

原爆を作ったことに対して是非を問う聴聞会でも裁判ではなく、オッペンハイマーがソ連のスパイか否かの聴聞会。真相を知ると実に下らない!

ストローズは、過去にオッペンハイマーに侮辱されたことを執念深く根に持っており、原爆の父と称賛されたオッペンハイマーを陥れるために陰謀を企てていた。揚げ足をとって陥れる…。

あらすじを書いているだけでイライラが募ってくる。

頭がいいなら、もっと世のため人のためになることに知恵を働かせろよ!と言いたくなる。

今の日本もそうだけど、利益優先が当たり前になってない?慈善事業が優先じゃなくて、利益優先のためにわざと慈善事業を行うみたいな。慈善事業が本当にわざとらしく感じる。

ぶっちゃけ、クリストファー・ノーランが何をメッセージとして描きたかったのかは正直見えてこなかった。アメリカ批判をしたかったのかも正直なところ分からない。オッペンハイマーの功績を称えたいのかも分からない。少なくともソ連のスパイではないことを伝えたいのだけは明確。

自分の信じた道や信念が否定されたり、間違いだと気付くことがある。一度始まったこと(軍事開発やその競争)はもう終わらない、と言いたかったとは思うが、正直なところ私には分からい。 

決して否ではないが、賛でもない。憤りとモヤモヤが残る珍しい作品。

日本公開に関しては、やはり原爆被害者に配慮して公開を見送るべきじゃないのかと配給会社も買いつけるべきか悩まれたとは思いますが、公開して正解だと思います。

戦争シーンは一切ありませんが、戦争の虚しさがよく伝わる作品だったと思います。