たった2時間の物語なのに、情報量が多くて、たくさん言葉が浮かんだり、記憶映像がフラッシュバックされたりと尋常じゃない多さだった。
いつも以上にカオスな文章になっています、を前提に、何を書いても差別発言になること承知で感じたことを書いています。
気を悪くされたら本当に申し訳ありません。
「だが、情熱はある」の静ちゃん役、「ブギウギ」の小夜ちゃん、「3年A組」にも出てたね、
冨田望生ちゃん演じる静ちゃん役を初めて観た時に、センセーショナルに頭角を表したそれなりに経験がある女優さんだと思ってWikipediaを見たら、めちゃくちゃドラマに出ていたことに驚いたが、一番の驚きは、「ソロモンの偽証」の松子ちゃん役だったこと。しかもこれが女優デビュー作だったとは!
静ちゃん役と松子ちゃん役を望生ちゃんが演じていると知ってからは、大注目の女優さんになった。
今回、初主演というおめでたいだけでなく、阪神大震災後の神戸を舞台にした作品ということで、去年の年末からめちゃくちゃ観たい映画でした。
去年は、そんなに観たい映画が少なかったので、久々にめちゃくちゃ観たい作品でした。
震災後の神戸を舞台にしているのに、しかも震災から30年という節目の年の、しかも1月17日に封切られるというメモリアルな作品なのに、上映館も回数も1日1回となぜか少ない。
こんなに素晴らしい作品なのに、なんで封切られたばかりなのに、上映回数が1回しかないのか不思議でならない。
望生ちゃんの役は、震災後に生まれた在日コリアン三世の金子灯(あかり)。
予告を観た時は、在日だから灯は差別されて双極性障害になったのかと思っていたが、
全然違った。
灯は、本来普通の女の子。在日も日本人も関係ないどこにでもいる女の子だった。
灯を苦しめているのは、根っ子は日本の政治や社会だが、現実は親や大人たち。
灯自身何も悪いことはしていない。
くれぐれも言っておきますが、灯の両親を否定することは、在日だからと差別しているわけではないので悪しからず。あくまでも両親を一人間として見た上での発言なので誤解なきように。
そもそも、在日という言葉自体、LGBT同様に差別用語にしか感じられないので使いたくないのですが、今日は使わせてもらいます。
たけしさんの「血と骨」でも描かれていたけど、灯のおじいちゃんとおばあちゃんは、好きで日本に来た訳じゃない。好きで差別されてきた訳じゃない。好きで貧しい生活をしている訳じゃない。好きで大変な仕事をしている訳じゃない。二世の方々(灯のお父さん)が、背負わされたものも、完全には理解できていないが、想像はつく。
同和地区問題しかり、住み場所が限定されて、出生や住所だけで差別されてきた。
学校で同和問題を取り上げる度に、なんでその地区に居座り続けるのか?その地区から離れて、素性さえ黙っていたら誰にも差別されず生きていけるんじゃないのか?とずっと思っていた。
LGBTQしかり、自分たちも自分たち自身を差別してるんじゃないの?と思っていた。
ぶっちゃけさ、そもそもLGBTQ に関しては、同性婚を認めない国家がおかしい。人間同士の結婚に男女である必要があるのか?
政治家が生産性なんて言ってる時点で間違ってる。結婚=子作りという発想がそもそもの間違い。
愛し合った者同士が契りを交わすのが結婚じゃないの?
同性婚に限らず、子供が欲しいなら、養子でもいいやん。不妊治療に励まれた方、励まれている方々には申し訳ないけど、血が繋がってないといけない理由が私には分からない。産みたいのか?育てたいのか?どっちなん??産みたいだけなら、子供はオモチャか?と聞きたくなる。
今ある命も大切にすべきじゃないの?と思ってしまう。
私は、生まれてこなければ良かったと思ってきた人間だし、産んでくれとは頼んでない!と言ったきた人間なので、血にこだわる方々の気持ちが正直分からない。
少子化問題だって、同性愛者が増えてきているからか?私みたいな独身主義が増えているからか?
子育てにお金がかかるからじゃないの?
それって国の問題でもあるんじゃないの?
戦後の第一次ベビーブーム、高度成長期の第二次ベビーブームって一体何なんで起こったんですか?明るい希望が想像出来たからじゃないの?
だったら、第三次ベビーブームになるように経済政策すべきじゃないんですか??って思う。
それも取り組んでないのに、同性愛者や独身主義者、子供作らない夫婦のせいにされては迷惑でしかない。
実際のところ、各地方自治体では子育て援助の取り組みはしてますけどね。それって出産前提ではありますが…。
私は、自分が生まれてきて良かったと思えないのに、子供を作る気にも育てる気にもなれない。結婚しないのはホモとかゲイだから?とか言われても気にしない。結婚しないと出世できないと言われても、だったら余計結婚なんて真っ平ご免。それってある種の政略結婚でもあり偽装結婚じゃないの?それって本来の結婚のあり方か?と甚だ疑問。ま、中村うさぎさん夫婦の関係性は個人的に好きですけどね。信頼関係で成り立っているからね。
それはさておき、
生まれてこなければいい命があるなら、わざわざこんな人間と結婚して、しなくていい苦労をさせるくらいなら、私は独身を貫きます。自分の両親を見て結婚したいとは一切思えない。ま、そもそも私自身が心を改める気がない。それが問題。
だからこそ、自分勝手発言だけども、
生むと決めたなら、育てると決めたなら、どんな子であっても子供に愛情を持ってください!と言いたくなる。
日本人と在日の方との結婚もすごく考えさせられる。
ぶっちゃけ書くと、私は、母親から在日とは結婚したらダメと言われて育てられてきた。
母親のお姉さんは、部落出身の方と駆け落ちして、広島から東京に行って結婚した。相当苦労したと聞いた。
でも、地元広島で家族や親戚に差別されて暮らすくらいなら、東京で暮らす方が正しい選択だと私は思った。
この作品を観て初めて、差別を受けると分かっていても、その土地に留まる人の気持ちが見えてきた。灯のお父さんもその一人だったからね。帰化したくない灯のお父さんの気持ちもしっかり描かれていた。
正直なところ、愛国心があっても、帰る場所が日本しかないのであれば、メリットが多いのであれば帰化した方がいいと私は思ってしまった。私が外国で永住すると決めたら間違いなく帰化を望むはずだから。
お父さんの愛国心、ルーツを大事にしたい気持ちは凄く伝わった。
私の両親は、私が生まれる前までは、灯の両親が震災まで住んでいた長田区で生活し兄貴が生まれた。両親は間違いなく在日の方々と関わりがあったはず。でも、良い思い出がなかったのかもしれない。
親父も、在日朝鮮人の方を差別するチョンって言葉をよく使っていたから。
両親に在日の方と結婚してはいけないと言われてきたから、それ以来、相手は誰であろうともフィルターを通して人と関わり、色眼鏡で人を見てしまうようになった。
私自身、差別する気がなくても、フィルターが出来上がった時点で差別しているのと同じなのである。
今思えば、余計な知識や価値観を子供に植え付けるなよ!と言いたい。もう言い返す母親も親父もいないけど。
長い前置きになりましたが、結局何が言いたかったかというと、早い話が、私自身が灯そのものだってことなんです。
私の両親は長田区に住んでいましたが、在日ではありません。
灯の家庭は在日コリアンではありますが、それ以外、私の家庭と何も変わりません。
灯の父親が、仮にアル中の暴力男だったら、まさに私の親父です。発言の仕方も押し付け方も、俺の気持ちを分かってくれよ的発言も私の親父と全く同じ。
酒さえ飲まなければいい親父なのに、灯のお父さんだって、普段はいい人だと思う。ただ在日に関することになると価値観の押し付けが始まる。
私の親父に関しては、酒を飲まなければいい人と書きましたが、むしろお酒の力を借りて素面では言えないことを発言していたのかもしれない。
いずれにせよ、灯りのお父さんも私の親父も同じ。日本人も在日も関係ない。
誰のお陰でご飯が食べれると思ってるんや!って怒鳴られたら、
だったら、セックスするな!子供作るな!産んでくれなんて頼んでない!って言い返したくなるんよ。
今なら、私の親父の気持ちも分かる。
職場では安い給料でこき使われて、家に帰ったら妻はご飯も作らず長電話。金がないない言うなら長電話せず節約しろ!と言いたくなる親父の気持ちも分かる。
妻は、小豆相場で大損をきっかけに親父の暴力が増え、顔面麻痺発症。暴力に耐え兼ねて新興宗教に救いを求め始める。いくら共働きと言えども、お布施は余計な出費。妻は、人間より神様への食事が優先。
そりゃ、一家の主は誰やねん!って言いたくなる。
しかも、子供たちは妻の味方やから親父は蚊帳の外。酒を飲まないとやってられない。
親父が酒を飲み始めたら、もう負のスパイラルが止まらない。暴力あるのみ。どれだけ殴られ、壁に穴が空き、テレビが壊れたことか…。
母親もよく離婚せずに親父と暮らしてたと思う。確かに、母親は母親で、何度も離婚を考えていたし、実家にも相談していた。もちろん親父の実家にも。兄貴を連れて家出したとも聞いた。よく我慢したと思う。
って思うと、
やはり、灯の家庭と私の家庭と何の違いがありますか?ってことになる。
それって、在日と関係ありますか?
くれぐれも言っておきますが、灯の両親を在日だと差別しての発言ではありませんから。人間として発言しているので悪しからず…。
そりゃ、灯は、私以上に、出生、家庭内、社会生活において幾重にも重なったフィルターで息が苦しくなったのも分かる。
灯は私と違って女性だから、暴力に対して暴力で返すことはない。ひたすら我慢して内に溜めてきたから。だから、お父さんのいつもの言葉で、抑えつけた心にスイッチが入って感情を抑えることが出来なくなったんだと思う。
灯は、何度も苦手なお父さんに歩み寄ろうとしても、お父さんは自分のことしか考えていないからまた同じ言葉を発して、灯の負のスイッチを押してしまう。
そりゃ、灯のお父さんも、今まで築いてきたもの、夢や希望が震災で全て壊され崩され、人生設計が狂わされてしまったら絶望しかない。
灯のお父さんだけじゃない、
コロナ禍で仕事がなくなったら、アルコールを辞めていた、山中崇さん演じる青山さんだって、アルコールを飲まないといられない。
灯だけじゃない、お父さんも、青山さんも、私だって、親父だって母親だって、誰しも心に闇を抱えて生きている。どうすることもできない闇の深淵にもがき苦しんでいる。
もがき苦しんでいる内は出口は見つからない。陽の光が照らす出口を見つけようとしない限り、光は見えてこない。だからこそ、このままでいいじゃなく、出口を見つけようとする意思や希望を持つことが大事になってくる。
この作品は映画だから、ラスト、灯は、陽の光が照らす出口を見つけることが出来たが、双極性障害や統合失調症は、数年で治ることは難しい。再発しやすい。出口を見つける意思を持つ続けることは難しい。
この作品の素晴らしいところは、どう精神疾患と向き合っていくべきか、助けていくべきかを示唆している点である。
もちろん自分の力で乗り越えられるのがベストだが、渡辺真起子さん演じる精神科医のように、患者さんの闇に向き合ってくれる人の支えも必要。
そうなんだよ、心の闇は、その人だけの問題じゃない。根っ子にあるのは家族の存在だと思っている。
本来ならば、明るい日差しの中ドキドキやワクワクでときめいているはずの心に、鉄の扉を備え付け鍵をかけ真っ暗闇にした原因をしっかり究明・解明していく必要なのである。
なぜ苦しいのか、なぜ苦しくなるのか、表面的な闇ではなくもっともっと深い闇の根っこになる箇所を見つけない限り治すことは難しい。
無意識の闇だから、無意識を意識に変えていく作業は本当に大変。他者には見えても、本人も見て気付かないと前に進めない。正論かざしても相手に響かなければ意味がないのと同じ。
ぶっちゃけ、読書できるだけのメンタルがあれば自己分析できるが、字を読もうとしない、読みたいと思わない限り、人の話や意図を理解できない、しようとしないなら尚難しい。本人の意思決定が本当に大事になってくる。
だから、お医者さんどう導き、どう引き出せるかにかかってくる。話を聞いて肯定するだけなら、ただ時間がかかるだけ。でも、これは精神科医あるあるなのかもしれないが、逆に精神科医に依存してしまう患者さんもいるので、医者も患者との距離を取らないといけないのも事実。
精神疾患を治す最大の薬は、医師の処方ではなく、家族の理解だと思っている。あえて家族の愛とは書きませんが…。
本当は、家族は家族で自己分析して欲しいんだけどね。家族の態度や発言が本人を苦しめている要因になっていることは大いにあるから。ほったらかすのはただの逃げ。だからといって構いすぎは甘やかしになる。自分を知る事で相手の気持ちを理解していくことができると思うんよね。それが家族や本人に対して学びと気付きに繋がると思っている。
この作品は、家族の問題と心の闇は深く結び付いていることもしっかり描いている。
あと、灯の大声で喚く発作症状があまりにもリアルに表現されている。それに限らず、
同じ発作症状でも、内に秘めたる思いが爆発する症状だけでなく、アル中で意識消失した青山さんを助けたい思い一心で大声を出す行為は、映像では同じ言動に見えるけど、全く別物。後者は明らかに自我の芽生え。そこが表現されているのも素晴らしかった。このシーンは思い返すだけでも涙がでる。
望生ちゃんの役作りに関して、インタビュー記事を読みました。東北の震災経験を役に活かすのではなく、まっさら状態で灯と向き合ったとのこと。確かに、灯は震災後に生まれたから震災を知らずに育ったからね。人生の経験が役に活かされることもあれば、逆に削ぎ落とさなくてはいけないこともあるという発言はごもっともだと思った。
映像に映る望生ちゃんは、灯そのものだった。憑依してたと書いたら、演技という表現も含め、むしろ安っぽく感じるので、望生ちゃんに対しては使いませんが、静ちゃん役もしかり役の向き合い方が本当に素晴らしかった。
お父さん役の甲本雅裕さんが、本当にリアル私の親父だった。灯の気持ちがめちゃくちゃ分かる。
自分の子供やねんから、父親としてちゃんと向き合って欲しいよね。優しい言葉をかけて欲しいよね。自分の都合が悪くなったら、決め台詞みたいに俺の気持ちはお前たちには分からない!とか、私の親父みたいに暴力で解決しようとしたら、話し合う余地ないんよ。
せやねんな、子供の頃は、親は完璧な存在だと思っていたけど、特に男親は何歳になっても子供なんよね。ま、私もしかり。
そうそう、灯を発作症状を起こさせる発言やその負のスパイラルの一連の流れが本当にリアルだった。何を話してもそこに持っていくか!?的発言が本当にリアル。私の親父をモデルにしてますか?と聞きたくなったくらい。
望生ちゃん、甲本さんに限らず、登場する皆さんリアルで素晴らしかった。麻生祐未さんも私の母親を見てる気になった。闇も発言も似てた。
精神疾患を患った灯にとって必要不可欠な存在が、渡辺真起子さん演じる精神科医、友達役の山之内すずちゃん演じる親友、そして、職場の上司役の山中崇さんと中川まさ美さん演じる上司役の二人。皆さん素晴らしかった。
特に、山中崇さん演じる青山は、灯の心の重たい鉄の扉を開けようするきっかけとなる人物でもあったし、また、青山自身、在日ではなくても闇を抱えて生きてきたわけだから、在日も日本人も変わらないを象徴した人物だったと思う。もちろん、灯の双極性障害と青山のアルコール依存症が対になる存在でもあったけども、作品しても大事な存在だったと思う。
灯の友達の存在も大きい。家族に言えない悩みを聞いてくれる人がいるのは心強い。信頼できることが大前提ですが。
中川さんも癒しの存在だった。
灯が自身の病気と向き合うための対になる人物が、青山以外に同じ病院?クリニック?に通う同じ在日の青年の存在も大きい。灯とは真逆で感情が抑えられず攻撃的になってしまうタイプ。
いずれにせよ、精神疾患は、誰かの理解がないと前に進めない。もし身近にそういう人がいたら否定せず受け入れることが治す第一歩。
私も若い頃は、灯の症状とは違って、むしろクリニックに通う青年に近いが、攻撃的になることは多々あった。今思うと、私自身、言葉に変換できなくて感情が先走っていたね。今は反省してます。
この作品、たった2時間なのに、前に挙げた灯と対になる人物や症状だけでなく、対比の仕方がお見事でした。震災前と震災後の対比だけでなく、
なぜ韓国から移住してきたのかも、太平洋戦争とロシア・ウクライナ戦争とも対比していた。当時とは移住の理由は全く異なるが、前者は強制連行、後者はウクライナから多くの戦争難民。
たった2時間なのに色んな要素が詰め込まれていたし、私自身、精神疾患や親子関係もとても他人事だとは思えなかったし、なにより、
私も、母親が失くなるまでは兵庫区(長田区の隣)に住んでいたし、手に職をつけるために長田区で働き、在日の方とも仕事をしてた。日本人より情が熱かった。体育会系以上の熱さ。優しい人ばかりだった。手に職をつけるために転職したけど、結局、仕事についていけなくて自分の無能さ故に辞めてしまった。もともと引きこもり人間ができる仕事ではなかった。考えが甘かったと反省しかない。今では良い経験。
長田商店街も懐かしかった。グランドがあってよくそこでお弁当を食べてた。
灯もふとしたきっかけでフラッシュバックで症状が再発してたけど、私も映像を見ながら色んなの記憶が蘇ってきた。
色んな意味で、私のたもの映画でもあった。
望生ちゃん、導いてくれてありがとう!
この作品、精神疾患を抱えている方には辛いけど、それでもたくさんの方に観て欲しい作品でした。
間違いなくフィクションなのにめちゃくちゃリアリティーを感じる脚本だった。感情移入しまくりでした。演出もカメラワークも素晴らしかった!
演技を越えた灯のリアルな感情を皆さんにも見届けて欲しい。