「大富豪同心」 「二人椀久」

2025-01-29 21:14:53 | 古典芸能
金曜日に「双仮名手本三升」を観た後に「大富豪同心」を、


土曜日に「さまよえるオランダ人」を観た後に「二人椀久」と再度「大富豪同心」を観てきました。


一回目の「大富豪同心」は、本当は安い幕見席で観たかったのですが、ネット販売開始時間の12時を完全に失念してしまい、気づいたら30分以上経っており、すぐにログインしたらもう完売。こりゃ土曜日も完売になりかねないので、時間的に「大富豪同心」しか観れないこと承知でまだ残ってい3階A席で観てきました。


土曜日は、「二人椀久」「大富豪同心」も幕見席で観させてもらいました。


前日の販売時間が「双仮名手本三升」の上演時間中だから、幕見席はもう売り切れていると思って試しに幕間でログインしたら、販売から1時間以上経っているのに1席だけ余っていたので、即ポチ買いしたわけであります。


「二人椀久」もまだ幕見席に余裕があったのでこちらもポチ買いしました。


ということで、


今年の大河「べらぼう」の初回から登場の隼人氏。若かりし頃の鬼平の役ということで、吉右衛門さんの鬼平をイメージしていたら、全然イケてない役でビックリ!2回目3回目と愛嬌がある存在感になっていて、大河効果テキメンだったのかチケットの売れ行きが良い!っていうか、もう「べらぼう」に出てこないん??


もちろん大河効果だけにあらずで、お正月公演にピッタリな内容になっており、めちゃくちゃユーモアたっぷりな上に、脚本も演出も役者陣も素晴らしくめちゃくちゃ面白くて楽しく拝見させて頂きました。


その前の、「さまよえる~」も「仮名手本~」も重たい作品だったので、失礼な書き方ですが、脳みそ休めになった。2回観ても楽しくて、客席の雰囲気も温かくてめちゃくちゃ歌舞伎座の空間に癒されてました。


もうね、隼人氏な二役の演じ分けがマジあっぱれ!


前回観た「身代座禅」もユーモアたっぷりで芸達者ぶりに驚いたが、今作は、元々ドラマの舞台化ということもあり、すみませんドラマは観てません…、本人的には初役ではないにせよ、


舞台は、ドラマと違って本当に双子じゃない限り同じシーンに二人同時に立つことができないので、それをどう見せるかが役替わりの妙ではあるわけですが、


隼人氏の役柄は、顔は似てるが性格が全く異なる二人のキャラ設定。お互いがお互いの影武者として衣装チェンジして登場したりするので、役の軸がブレたら大変なことになる。早替えがあるのに軸がぶれずに演じ分けた隼人氏の芸達者ぶりにまじでアッパレでございました!


作品自体がユーモアに溢れていて、客席の拍手がめちゃくちゃ温かい!皆さんが楽しんでいるのが拍手からめちゃくちゃ伝わってくる。


それくらい面白かった!


ぶっちゃけたメッセージ性がある作品じゃないから、普通に楽しめる作品でもあるし、隼人氏に限らず皆さん芸達者な方々なので、どのキャラも最高に素晴らしかった!


一番は、女形の春日局と思っていた笑三郎さんの大井御前が最高でした。ルパンの次元も素晴らしかったけど、凛とした大井御前のまさかの酒の飲みっぷりと二日酔い表現にギャップがありすぎて、笑三郎さんもめちゃくちゃ芸達者でびっくりでした。


ギャップといえば、尾上右近君も凄いね。一回目は、「仮名手本~」の後に観たから、「朧の森に棲む鬼」のキンタの延長上の役だな~とビックリすることなく観ていましたが、二回目が「二人椀久」の後だったので、


全然キャラがちゃうやん!!めちゃくちゃバケモノ!と驚きながら観てました。


「二人椀久」も脳みそを使う作品だし、「鷺娘」みたいな喜びと悲しみや憂いを短い時間で表現する内容だけに、椀久の憂い哀しみからのあのお調子者の銀八のギャップが凄すぎ!


いやいやいやいや、二月博多座をご覧になられる方は右近君のキンタ役必見!


中車さんや猿弥さん筆頭に澤瀉屋の方々も芸達者ぶりは毎度のことではありますが、寿猿さんも見事にカムバックされ大拍手でしたね。お元気で良かったです!なんてたって94歳の現役の歌舞伎役者だよ、ギネスもん!


そうそうたる澤瀉屋さんの面々の中に鴈治郎さんがいるのも新鮮でした。


っていうか、幸四郎さんも凄いね。今回演出を兼ねておられ、芸達者ぶりは新感線の常連さんだけあって若い頃から遺憾無くは発揮されておられますが、演出もお見事でした。場面転換も、巳之助君の登場の見せ方も上手い!と思った。あ、隼人氏の登場の仕方もね。ラストのミュージカル的演出も正月公演にピッタリな演出で良かった!


そうそう、紅二点の、壱太郎君と米吉君も良い存在感だった。三月南座公演での女形対決が楽しみ!


たった70分の物語なのに、登場人物も多く、出番もそんなに多くないのに、めちゃくちゃキャラ立ちしていて元々備わった才能ではありますが、存在感アピールも凄く、それを導き引き出した幸四郎さんの演出力にも感動しました。


ラストに登場する米吉君が良い意味で余韻を残す役柄で、


続きが本当に楽しみになる作品でした。


2日目に観たに観た「二人椀久」は、それはそれは、目の保養になる右近君と壱太郎君の美しさ。


前日に「大富豪同心」で男勝りな女形の壱太郎君、狂言回し的な存在感の右近君を観ていたから、ギャップが凄かった。


やはり、お二人とも日舞を得意?家元?なので、それはもう軟体動物?のような線の柔らかさ、まるで宙に浮いているかのような軽やかさがあり、そこにきて長唄にあわせて無言の感情表現と美しさ。


「二人椀久」のストーリーは全く存じ上げずに拝見しましたが、まるで相手役もいる「鷺娘」の男版で、右近の椀久は、孤独感と喜びと切なさと儚さを舞で表現されており、キンタや銀八と同じ人物が演じているとは思えないくらいのギャップが凄かった!


壱太郎君の松山太夫も本当に美しい!この一言に尽きる!


美男美女の舞は本当に目の保養になり、また舞から読み取る感情表現とか、想像を働かせる作品で本当に素晴らしかったです。


「鷺娘」もそうですが、ストーリー性がある舞踊は、基本ショーが苦手な私でも演劇要素が強いので好き。






双仮名手本三升 裏表忠臣蔵

2025-01-27 23:32:24 | 古典芸能
團十郎さんの公演ではほぼ出演しない、歌昇君、種之助君、福ちゃん、歌、虎之介君(松竹座十月公演には出ていた)、右團次さんのご子息、市川右近君が出るということもあり、もともと仮名手本忠臣蔵は一幕ものですら観たことがないので、せっかく「さまよえるオランダ人」を観に行くならば一泊してでも観たいと思い、出演者に惹かれ昼夜観てきました。


安い三階の角席で見させもらい、残念ながら花道が全く見えない席でしたが、


まさかの宙乗りもあり、善人の大星由良之助でも早野甚平でもなく、悪人の斧定九郎だったのが意外でしたが、宙乗りの團十郎さんを間近で見れて最高でした!


本来通しだと8時間?以上かかるような演目を4時間にまとめ上げ、しかも輪廻転生?前世の契り?要素もあり、仮名手本忠臣蔵観たことない人間のワタクシにはとても有難い作品でした。


表裏忠臣蔵と副題?にあるように、仮名手本忠臣蔵が表、創作部分が裏とのことですが、正直、ぼたんちゃんと新之助君のシーン以外どれが裏の創作シーンなのか分からずではありましたが、いかんせん仮名手本忠臣蔵観たことない…、分かりやすくて勉強になりました。

そもそも、なんで主人公の名前が大石内蔵助でないのか、吉良上野介でないのか不思議でならなかったし、高師直なんて、月組「桜嵐記」を観てなかったら存在も名前も知らなかった。それくらい、仮名手本忠臣蔵を知りません。

義経千本桜も通しでも観たことなかったので、短縮版の「星合世十三團」もしかり、この短縮版上演は、内容を理解出来るので本当に初心者には有難かったです。


っていうか、8時間ものを4時間って、何をはしょっているのか三月歌舞伎座公演が気になってしかない。


はしょっている割には、物語はダイジェスト感がなくスムーズな流れになっているし、テンポも新作歌舞伎のようなアップテンポではなく、普通に歌舞伎の間だったし、三月歌舞伎座公演もなんとかしか観てみたい気持ちにさせてくれる内容でした。


團十郎さんは、敵味方である、大星内蔵助と高師直の両方を演じ分け、特に夜の部二幕目は立ち会いが見せ場であるだけに早替わりの連続であっぱれでございました。


もちろん、早野甚平と斧定九郎の演じ分けもキャラ設定を見事に変えていたのたのでとても分かりやすかったし、全く物語に支障がない演じ分けでお見事でした。


児太郎君や國松君は團十郎さん作品の常連さんで、各々重要な役柄で存在感があり、特に児太郎君演じるおかるの甚平に対する一途さと純粋さを上手く表現されていてウルッとくるこてもありました。


最初に挙げた團十郎さんの作品には普段出ない面々が同じ舞台に立っているのが本当に観ていて新鮮でした。團十郎さんとの絡みがあったり並んだり、それだけでワクワクが止まらなかった!


一番はやはり、團十郎さんとええ声の歌昇君の立ち回りでしたね。歌舞伎座での襲名公演では色々あっただけに実にめでたい気持ちで観させてもらい、実にあっぱれなお二人の立ち回りでした。


虎之介君が、團十郎さんの息子役ということで出番は僅かではありましたが、その分大事な台詞が多かったし、声音を変えての表現も大変素晴らしかった。早くテレビ小説に出て欲しい!藁


福ちゃんが大先輩の男女蔵さんとの並びも違和感ない貫禄ぷり。毎回書きますが、歌舞伎顔だから化粧栄えしまくってカッコよい!3月南座公演、虎之介君、壱太郎君、米吉君、超珍しい競演が楽しみです。ヅカ友さんと観に行きます!


歌は、残念ながら目立つ役ではなかったですが、ちゃんとチェックしておりました。声が特徴的だからすぐ分かる。團十郎さんと同じ舞台に立ってるたけで絶対勉強になったと思う。


種之君は、ソロの出番がありましたが、いかんせん地味な役ではありましたが、團十郎さんの舞台に兄弟で出るのも滅多にないことなので、本当に新鮮でした。


右近君がめちゃ成長?大きくなっていてびっくり!右團次さんとの立ち回りシーンで、まさかとは思っていましたが、やはり相手は右近君やったんやね。あどけなさもありつつも声変わりもして立派に成長されおり、親子での立ち回りお見事でございました。将来が楽しみやね。


そして、ぼたんちゃん、いやいやいやいや、やはりあなたは凄い!とても10代の女の子の表現とは思えないくらい艶やかさと落ち着きがあり、何より着物が体の一部になっていたのが素晴らしかった!


その点、新之助君は、台詞回しはかなり成長が見られたが、衣装に着られている感があったのが否めない。かつらも若干…。姉弟の息があった舞が良かっただけにちと残念ではありました。早く声変わりして一皮剥けた新之助君を観てみたい。


ということで、出演者陣が素晴らしくて、本当に楽しく観させてもらいました。三月歌舞伎座、なんとか観れるように頑張ります。

朧の森に棲む鬼 &

2024-12-21 09:03:57 | 古典芸能
めちゃくちゃ良かった!

めちゃ泣けた!

幸四郎さんが悪に徹すれば徹するほど、右近君のピュアさが引き立って、もう泣けて仕方ない!

ぶっちゃけ、導入部が理解出来てなくて、関係性が分からず物語についていけるか心配になりましたが、

多分、100%ではないが、理解できていると思う。

やっぱ、中島さんの脚本最高!!

言葉が生きてる!後々随所で光ってくる!

リチャード三世だけでなくマクベスの要素も大江山の鬼伝説も取り入れてあり、めちゃくちゃ面白かった!

第二部は泣けて泣けて仕方なかった!


いのうえさんの演出も素晴らしく、つけ打ちは当然としても、今回は長唄やお囃子を取り入れていて、劇団新感線のスーパー殺陣満載の中に歌舞伎要素もふんだんに取り入れられていて、テンポよくこれぞいのうえ歌舞伎による歌舞伎NEXT を堪能させて頂きまさした!

三枚舌ならぬ十枚舌の盗賊が不死身の力を得て、敵も見方と仲間まで騙しに騙して殺しに殺しにて国王?天皇?にまでのしあがっていく様が、さまにリチャード三世。

最初は悪人だけど愛嬌があったが、国王の地位を得てからはまさに超極悪人。

幸四郎さんのまさしく悪魔に取り憑かれたかのような表現がめちゃくちゃ素晴らしかった!

口八丁手八丁の大嘘つきの盗賊が、朧の森に棲む魔物に魂を売り、自ら鬼と化する超極悪人をものの見事に演じられ、第二部はマジあっぱれでした!

幸四郎さんが極悪人に徹すれば徹するたびに、周りが善人に見えてくる不思議現象が起こり、もちろんこれは脚本演出と演技が素晴らしいことは言うまでもないですが、

ここまで吹っ切れてくれたら最高!!!としか言いようがない。

改めて幸四郎さんのお芝居の上手さに唸りました!

もちろん、幸四郎さんに限らず役者陣皆さんが完璧な役作りとアプローチ!

お父様(萬壽さん)から名跡を受け継いだ時蔵君が、こんなにも芝居心があるとは思わなかった!

私の中では、観てきた役のイメージがあるからですが、寡黙な人のイメージしかなかったので、女形だけど男勝りの武将?を、時には男のように勇ましく、時には二人の男(一人は死んでいる)の間で女心が揺らいでいる様がめちゃくちゃ上手く表現されていて

時蔵さんが、こんなに感情豊かに表情される方だとは思ってもみなかった!

染五郎君も最初誰だか分からなかった。どこのイケメンだ?と思って休憩中に配役を見てびっくり!めちゃくちゃ男っぷりが上がってるやん!!

九月公演に観た染五郎君からは想像がつかないくらいの男ふっり!スピード感がある殺陣も素晴らしくマジ見違えた!

YouTubeで観た、歌舞伎の絵を描いているいかにも文系のイメージしかなかった染五郎君が、めちゃ体育会系な声の出し方、劇団新感線の役者さん並みの太刀さばきがマジ圧巻だった!めちゃカッコ良かった!

やはり、幸四郎さんのご子息であることを証明する演技と存在感でした。

二人が親子であることを忘れてしまうくらい、役になりきっていて、二人の殺陣シーンはマジあっぱれでした!

猿弥さんがめちゃ美味しい役で、猿弥さんにも泣かされたよ!

そして、右近君が最高に良かった!

いやいやいやいや、MVPもん!

キャラ作りが完璧!一部と二部の見せ方が素晴らしい!!

めちゃ泣かされた!

松也君は、幸四郎さんとダブルキャストなので、幸四郎さんがライ役の時は、貞光役ではありますが、お化粧が濃すぎて誰だか分からんかった!そんなに出番はないけど美味しい役に仕上げたね。コメディリリーフ的存在かな?

幸四郎さんと染五郎君親子のガッツリ絡みがありましたが、同じ親子の新悟君と彌十郎さんもガッツリ絡みがありましたね。実の親子であることを完全に忘れてました。

二人とも珍しくキャラ変していてびっくり!新悟君もコメディリリーフ的役割で、彌十郎さんは好い人だった。二人とも単純にコメディリリーフでないだけに…、あ~言えない。

今回のキャスト陣は、マジ私の偏見を完全に覆す素晴らしいキャラ作りでした!

今回は正面席じゃなく、下手サイド席で観させてもらったので全く花道が見えず、しかも花道のお芝居がめちゃくちゃ多い!

備え付けのテレビ画面で見るしかなかったのですが、ラストの宙乗りは間近で拝見できたので全て帳消し!

博多座公演を見られる方はタオル必携ですよ!

帰り、いのうえさんが楽屋口が出られるのを拝見しました。本当に素晴らしい作品でした!と伝えたかったよ。


ということで、9月以来の東京に行ってきました。

もちろん、メインは、こちらではなく、玉三郎さんと團子君の「天守物語」だったのですが…、

圧倒的に「朧の森に棲む鬼」が良かった。

新橋演舞場で観たあと、歌舞伎座で「鷺娘」「舞鶴雪月花」「天守物語」を観させてもらいました。


意外と良かったのが、全く期待してなかった勘九郎さんと長三郎君の「舞鶴雪月花」だったんよね。勘九郎さんの女形が意外と良かった!

こちらも親子共演でしたが、「松虫」の場面では、勘九郎さんがまるで長三郎君に表現の仕方を見て学べと言わんかのようにお手本的な見せ方になっていたのが印象的だった。勘九郎さんの松虫としての飛び方の表現が上手かった。長三郎君は可愛かった。

あの広い舞台を一人で立つ長三郎君がよく頑張ってたよ。

勘九郎さんの雪達磨も、ほぼマイム演技だったのでその表現が上手かった。太陽が出たらそりゃ溶けるよね?の表現が良かった。

七之助丈の「鷺娘」は、幕見席でを観させてもらいました。引抜きが見応えがありました。七之助丈がめちゃくちゃ若返りしているように見えた。めちゃ可愛かった。

ただ、映像でちょこっとだけ観た菊様の鷺娘が儚さと可憐さがあって素晴らしかったので、ラストは、七之助丈はちと儚げさが足りなかったかな?と思ってしまった。すみません。m(_ _)m


そして、ここからは失礼を承知で書かせて頂きます。

あくまで私が感じたことですと前置きときます。

今回、玉三郎さんの冨姫と團子君の図書之助を観なかった絶対に後悔すると思って急遽観に行くことにしたんですが…

「天守物語」は、七之助丈の冨姫と虎之助君の図書之助コンビの方が断トツで良かった。泉鏡花のメッセージがびんびん伝わってきて、世界観にも入り込めた。

玉三郎さんと團子君の場合は、

前半の玉三郎さんの冨姫と七之助丈の亀姫のシーンは良かった。

後半、図書之助が登場してからが…。

團子君は、今回は、今まで猿翁さん似た台詞回しと違って、喋り方を変えていた。猿翁さんの真似事ではなく團子君の図書之助を作りあげようと玉三郎さんが意図してのことだと推察。

お腹からしっかり声を出していてめちゃ太い声を発して、めちゃくちゃ良かったんだよ、声はね。いかんせん、感情が全然乗ってない。太い声を出すことで精一杯で肝心な感情がおいてけぼりになっていた。ただ頑張って台詞を喋っているだけにしか聞こえなかった。冨姫のことちゃんと愛しく思って演じていたのか甚だ疑問でしかなかった。

玉三郎さんの冨姫も、前半の亀姫との浮世離れした表現は良かったんだよ。図書之助と初めて会ったときの冷静かつ品格がある態度も良かったし、図書之助に心を奪われる様も良かったんだけど、

玉三郎さんが意図してなのかは分からないが、シリアスなシーンなのに随所に笑いが起こって興ざめ。

図書之助への告白、その前に獅子に本心を打ち明ける様など、だんだんリアルな感情が伝わってこなくて、二人の会話なんてまるで師匠と弟子の会話にしか聞こえなかった。

映像で観たけど、玉三郎さんは虎之助君にはめちゃダメ出ししてたのに、そのダメ出しが素晴らしい図書之助へと導いたと思っていたのに…。

今回は、ヴィジュアルは文句ないのに、正直うーんって思ってしまった。

偉そうなことを書いて申し訳ありません。

メイン二人はよしとして、やはり、吉弥さんがめちゃくちゃ素晴らしい!お芝居が本当に上手い!今年様々な役の吉弥さんを拝見してますが、どれも秀逸だった。歌舞伎じゃなくてまさにガラスの仮面。

天守閣から下界を見下ろして状況説明する台詞表現がリアルガラスの仮面だった。情景が映像として見えてくる。

獅童さんもめちゃくちゃ良かった!獅童さんもめちゃ情感が伝わる表現だった。

歌昇君もめちゃ太い声出していたが、ちゃんと情感が伝わる演技だった。

芝のぶさんも出ていて嬉しかった。

月が描かれた緞帳を演出に取り入れたのも良かったのに、前半が良かっただけに後半が残念でした。








松竹大歌舞伎

2024-11-18 20:16:58 | 古典芸能


隼人氏、めっちゃ芸達者やん!?

こんなにコメディーセンスがあるとは思ってなかった!

親子共演だけでなく、演目も出演者も、めちゃ贅沢!

チケット代は安いから、全国を回るには人件費を削減した演目かと思いきや、囃子方さんが多くてびっくりした!

大ホールでも引けを取らない演目と舞台美術だった。

ということで、

フェニーチェ堺に行ってきました。

3月の南座以来の久々の隼人氏、そして、中村錦之助さんとの親子共演。

親子共演ならではの2演目でした。

最初は、隼人氏のトーク。喋り慣れているからストーリー説明が流暢。周りの女性客がキャーキャーうるさくて(大声ではないが、カッコイイ!カッコイイ!とずっと言っていた)、

ま、確かに歌舞伎界において1位2位を争うイケメンではある、

隼人氏の言葉が全くはいってこなかった。

ひと昔は、イケメンだけの役者かと思っていたが、

團子君が代役した「不死鳥よ 波濤を越えて」で隼人氏を拝見して、ただのイケメン俳優でないことを知って、そこから何作か観させてもらって、

どハマりの役もあればそうじゃない役もあっての、めちゃくちゃ素晴らしかった「女殺油地獄」の与兵衛だったからね。ブロマイド買っちゃったよ!(笑)

ええ表情を捉えてた!

からの今回の演目でしたが、

今回の2演目は、どちらもコメディー要素がある役、コメディーセンスが必要な役だったので、

ぶっちゃけ、隼人氏の悲劇は似合うとは思っていたが、

いやいやいやいやいやいや、

コメディーセンスも抜群だった!

特に「身替座禅」はただのコメディーじゃなくて、長唄で舞う場面もあれば、常磐津(詳しくは分からないが、三味線に合わせて語り部が語る)に合わせて台詞を発しているように表現したり、

なかなかの技術が必要。

自分で喋って演技するだけじゃないから、音楽に合わせる、語り部と合わせるという作業があるから、

なかなか高度な技術が必要な演目だと思ってる。

過去に違う演者さんで何回か観させて貰ってますが、振りや見せ方がパターン化された演目だと思っていたので、全然期待してなかったのですが、

しかもコメディーだから、元々は狂言だから、笑わせてナンボの世界だからね。

やはり、親子共演の妙と言うべきか、

いや、全く親子とは思わせない、役の捉え方、表現の仕方が、大袈裟かもしれませんが、まるで、姫川亜弓と姫川歌子の母娘共演の如く、お二人とも、個として役に向き合っていたし、

表現もオリジナリティーがあって、めちゃくちゃ面白かった!

マジで、隼人氏の芸達者ぶりに感動した!

錦之助さんの玉の井も、「双蝶々曲輪日記」の相撲力士の長五郎と真逆のキャラクターを愛嬌たっぷりにキュートに鬼嫁を演じられていて、

この2人、親子だったけ?と思えたぐらい、親子であることを完全に忘れてしまうくらい2人とも役になりきられていて、本当に素晴らしかった!本当に面白かった!

「双蝶々曲輪日記」の引窓は、初鑑賞だったので、隼人氏演じる役は立派なお侍かと思っていたら、そうじゃない所があって、見せ方が本当に上手かった!

人情味溢れる役柄だったので、芸達者じゃないと演じられないと思った。

錦之助さんの長五郎がまたエエんですわ!

役は24,5歳(人相書きによる)ではありますが、隼人氏と親子であることを微塵も感じさせない役作りに感動!

隼人氏演じる与兵衛とは血は繋がらないが、吉弥さん演じるお幸にとっては、2人とも我が子。与兵衛は前妻の子。長五郎は、血が繋がった我が子。小さい時に養子にだされた。

与兵衛は、長五郎と兄弟であることは知らない。

長五郎は、人殺しをし、捕まる前提で最後ひと目でも母に会いたくでお幸を訪ねてくる。

与兵衛は、その罪人を捕まえる役目。

さて、長五郎の運命はいかに??

人情味溢れた演目で、吉弥さん演じるお幸が泣かせるんよ。

お幸は、与兵衛から長五郎が罪人であることを知る。

お幸は、我が子の長五郎を逃がしてやりたい気持ちと、与兵衛には罪人を捕らえさせて出世してもらいたい気持ちで葛藤するが、やはり我が子を救いたい気持ちが優るんよね。

それが泣かせる!

与兵衛も、長五郎がお幸の実の子であることを悟るんよ。捕まえるべきか逃がすべきか葛藤するんよ。

長五郎は、与兵衛に捕まる覚悟は出来ているが、母お幸の気持ちに覚悟が揺らぐんよ。

笑三郎さん演じる、与兵衛の妻、お早は、お幸の気持ちを慮る役柄。

継母と言えど、与兵衛にとっては母親。そりゃ、与兵衛には出世して欲しいが、長五郎を捕まえてお幸が喜ぶはずがない、ましてや、血が繋がらなくても与兵衛と長五郎は兄弟。長五郎を捕まえることは与兵衛もまた苦しむ。お早は、お早で最善策を見つけようと葛藤している。

四者四様の心の葛藤が絶妙すぎて、めちゃくちゃ良かった。

犯罪は良くない。そんなことは当たり前やねん。

演劇とは、非現実の世界。舞台上では、リアルな殺人は起こらない。全てお芝居。

わざわざお芝居で、犯罪を良くないと説教しても当たり前すぎて全然面白くない。

犯罪者は捕まるべきや!は現実の世界の主張。

この演目では、究極の選択肢においても人情の大切さを謳ってる。

あ、決して犯罪を正当化するわけじゃないよ。あくまで演劇の在り方や見せ方という点ね。

それだけ人情を持って人と接してますか?と問いかけてる演目なんよ。

本当に素晴らしい作品だった。

「身替座禅」は、まさかの囃子方さんの多さにびっくりしましたが、

「双長調曲輪日記」も「身替座禅」も少人数の演者で濃厚な世界観を味わえる素晴らしい演目だった。巡業公演にはピッタリな演目だった。



オープニングには、隼人氏のスッピントークと、まさかの撮影タイムもあり、はい、撮影させて頂きました!

カメラの性能が悪いからピンボケしまくり。

証拠写メ↓


そりゃ、イケメンが客席通路を近くまで歩いてきたらキャーキャー言うわいさ!

(笑)

雷神不動北山櫻

2024-10-15 18:51:17 | 古典芸能
やっぱり、広い歌舞伎座で観るより、コンパクトな松竹座で観る方がええわ〜。

この作品、2012年(松竹座)と2021年(歌舞伎座)と観ていますが、

やっぱ、この作品大好き!!

今回もアッパレじゃ!!

ぶっちゃけ、歌舞伎に関係ないけど、龍神様大好き人間には堪らんエピソードが盛り込まれているから(鳴神ね)松竹座で巡演ラストに選んでくれてありがとうございます!!と言いたい。

有名どころというか、お寺や神社の近く?管轄?にある瀧には大体お不動様が祀られてるんよね。

松竹座の2階ロビーには成田山新勝寺の大阪別院より御本尊の不動明王様が鎮座されていて、

お不動様も龍神様の化身とも言われているし(倶利伽羅龍剣がその象徴)、龍神様は瀬織津姫に市杵島姫様とも深い関係があるから、

松竹座がめちゃくちゃ神聖な場所になっていて、マジ最強パワースポットやわ!!!

雨乞いの札と鳴神が、単独上演される「毛抜」、「鳴神」、「不動」(これは単独上演はないらしい)を繋げる役目になっていて、

最近は「毛抜」ばっかり観ることが多かったので、「鳴神」「不動」、あと安倍清行の登場や早雲王子の最期の場を連続で観れるのはマジで有り難い!

連続で観るからこその可笑しみ、例えば、久米弾正の両刀使い、雲の絶間姫の色気に騙さる鳴神とか、歌舞伎だから抑えられているだけであって、内容は結構エロい!そこがオモロイ!(笑)

伊達の十役や星合世十三團ほど早替わりの連続ではないが、團十郎さんの5役はキャラ設定や役作りが全く異なるので、「憐れみの第三章」のウィレムやエマ並みに役替りを楽しめた。

自虐ネタとは言わないが、安倍清行とか久米弾正とか鳴神なんて、色男團十郎さんにピッタリすぎて本当に面白かった。

この作品のメインイベントは、二幕目の早雲王子のシーンだと思うが、梯子に登って逆さ吊りとか、命がけのシーンなので本当に見応えがあった。

私の中では、雲の絶間姫は中村扇雀さんのイメージが強かったのですが、

中村雀右衛門さんも素晴らしかった!

2021年の時は別の役でしたが、雲の絶間姫はちょっと歳が…って思っていましたが、なかなかの色気と若さがありました。

9月に拝見した楊貴妃が年齢設定的にも高齢の役だったのですが、

雀右衛門さんの雲の絶間姫は、全く実年齢を感じさせない色気と若々しさがあって正直ビックリしました。

っていうか、めちゃくちゃ失礼なこと書いて申し訳ありませんm(__)m

チョイ役と書いたら申し訳ないですが、虎之介君が出ていて、夜の部にも出るんだと思ったら出てなくて残念。

めちゃくちゃ顔が小さいのが3階席からも分かるが、声は誰よりも大きかった。出番が少なすぎて本当に残念。

「毛抜」の秦秀太郎役は、やはり若い方が演じるとリアル。今回は児太郎君が演じてましたが、夜の部の静御前といい、秦秀太郎といい、どちらも儚げな感じがお見事でした。

苔玉君も、昼の部しか出てなくてもったいない。

そうそう、開始早々芝のぶさんも出ていて嬉しかった!

なのに、幹部の方以外は、ちょっとしか出て来ないから本当に残念だった…。