続き…

2014-09-26 01:35:20 | うらけん
第一部が意外と暗い展開で、皆どこで泣いたの???と思っていたのですが、第二部になったら笑いの要素もありつつ、チャーリーの封印されていた過去が明るみになることでよりメリハリのある展開になっていて、ラストはまさかの涙でした。リフレインと言っていいのか、ラストは涙のリフレインでした。上手い脚本でした。

最初は先生と生徒の関係だったのが、お互いが経験と学びを得ることで、本当の意味で人間的にも成長し、愛することを学ぶ。結果的には結ばれることはなかったけども、無意識の中でちゃんとお互いを思いやる気持ちや愛が育まれている結末だと感じたので、これが本当の愛だよ!と思った。

脚本が思いの外良くて、ついつい脚本ばかり褒めてしまいますが、やはり浦井氏も初演時に賞を獲るだけのものはあった。本当は、「シャーロック~」の二役みたいに明白に演じ分ける必要はなかったんだけど、逆に演じ分けたことで、私には精神疾患者に映って見えた。それが悪かったわけじゃなく、リアルな現実問題として受け止めることが出来ました。

手術してただ頭が良くなっただけじゃなく、頭が良くなったがために受け入れなくてはならない現実を目の当たりにして、チャーリーは葛藤するわけだけど、そこは情感豊かに演じていて低音で歌ったりと聞き応え見応えがありました。

もし、チャーリーのお母さんが優しい人だったら、こんなに葛藤しなくて済んだと思うんよね。でも現実は、お母さんはお母さんで葛藤があり、妹は妹で葛藤があり…。でも時間と共に健常者でもその葛藤の過去を忘れてしまう。とてもリアリティーがある脚本でした。まさしくその通りだもんね。実はチャーリーの方がよっぽど人間らしいと思う。

またまた浦井氏から離れてしまいましたが、浦井ファンは必見です!あと、“好き”から“愛してる”へと学ぶ過程にも浦井チャーリーに注目を!ホント出ずっぱりなので毎公演大変そうですが、1ヶ月公演じゃないから浦井氏なら大丈夫だと思う。

ホント、ヤンさんが共演じゃなかったら、東京までは…、ヤンさんじゃなくても行ったとは思いますがm(__)m、ヤンさんと共演だから何が何でも観たかった。

もう、ヤンさんやで!最近宝塚ファンになられた方には分からないと思いますが、ヤンさんがトップ時代は、そりゃもう前任のナツメさんのダンスの花組を継承した素晴らしいトップさんで、もちろんヤンさんのダンスも素晴らしいですが、演技力も半端ない!狂気を演じさせたらピカイチでした。「冬の嵐」は最高でした!

そうそう、「エリザベート」の当日券を並んでいたとき、私の前後のご婦人方も偶然ヤンさんのファンで、三人でヤンさんトークで盛り上がってました(笑)ヤンさんのオスカルは歴代ではかなりレベルが高い。映像はないですが、実況CDはヤンさんがオスカルです。めちゃ聞き応えありますよ!あ、ちなみに、私は当時は雪組贔屓でしたが、全組好きでした。

ヤンさんのアリスは、チャーリーの先生でもあり、心の拠り所でもあり、お母さんみたいな存在だった。最初は否定していたけど、次第に恋愛を意識し始める役どころです。

ぶっちゃけ、歳の差を感じてしまう部分は否定できませんが、アリスのチャーリーへの同情がだんだん本物の愛になっていく過程がさすがヤンさん!だと思いました。微妙な変化が素晴らしかったです。ラストはヤンさん自身も泣いてたね。笑顔のシーンなのにね。それも良かったです。

アルジャーノンの森君は、基本はダンスで表現されるんですが、シーンによってはチャーリーの分身になるので、これはオギーの演出が素晴らしかったから必然的に森君も良かった。

良知君のニーマ教授とギンピィの二役が、それはそれはくそ生意気な役柄で大変素晴らしかったです!腹黒い役はこれくらいやってもらわないと主役が引き立たない。完璧でした。

チャーリーの母親役でもあり、成長した妹役の彩音ちゃんは、拝見するのは退団公演以来ですが、チャーリーの不審行動で情緒不安定になる母親役を本意気で演じられていてこれまた素晴らしかったです。

良知君の同僚の高木君は、良知君と対象的な優しい人物が好演でした。癒し系ですね。

チャーリーの妹役の吉田さんも母親同様情緒不安定になるシーンが迫力があって良かったです。妹は妹で葛藤があるもんね。子供だったら尚更やね、が上手かった。

チャーリーの恋人役の秋山さんは、第二部の存在感が圧巻でした。秋山さんがちょっとした道化の役割を担っていて、第一部が全体的に暗かった分、秋山さんの天然で明るい役柄が第二部の重要なアクセントになっていて舞台が良くなった印象。第一部も笑いの要素が欲しいね、脚本的にね。

トラウス博士役の宮川さんはラストの歌が素晴らしかったです。博士もアリス同様、チャーリーの葛藤により自己責任を感じる役どころ(多分)で、脇を支える安定した演技でした。

チャーリーとアリス以外は何役も掛け持ちしてますが、ごちゃごちゃせずとても自然な見せ方でオギーの演出力が冴えてました。

この作品、美術次第でもっと良くなると思うな。

チャーリーは架空の人物だけど、チャーリーのような人間はたくさんいる。知的障害者じゃなくてもね。向き合わなくてもいい過去もあるけど、ちゃんと向き合わないといけない過去もあるのも確か。

記憶の向こうに隠れた過去が原因で、人間関係で悩んでいる人は多い。私が思うに、人間関係にトラブルが多い人は、大概家族間のトラブルが生じていて仲が良くないことが多い。一番身近な人間と仲良く出来ないなら、他人と仲良くできる訳がないやん。自分を知らない人間は他人を理解できないのと同じ。

この作品、たくさん人生哲学が描かれていて、本当に脚本は素晴らしかった。第二部が見応えあります。特にラストだけでも、東京に行っただけの価値はありました。もちろんラストだけじゃないですが…。

今日のまとめ:じゃないけど。新宿の花園神社に行ってきました。パワースポット神社らしいよ。そこになんと月組のマギーさんの名前が!!!(笑)

「アルジャーノンに花束を」

2014-09-26 01:18:14 | うらけん
感想を書く前に、田代君へ。

首の骨折で舞台を降板されて悔しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだと思いますが、私は、今回の舞台降板は、神様がくれた時間だと思ってます。働き過ぎ!いろんなことやりすぎ!事務所もやらせすぎ!今は完全治癒と療養を兼ねて身体を労って下さい。まだ代役が立てられて良かったよ。これが完全公演中止になってたらもっと責任重大やで。不本意だと思うけど、今は神様がくれた時間をゆっくり、時に哲学して過ごしてください。元気に完全復帰されることを首を長~くして待ってます。お大事に!

では、感想を書きます。

ぶっちゃけ書くと、舞台美術と第一部のひたすら暗い展開を除けば、とても素晴らしい脚本と演出でした。

そう、美術がイマイチだったんだよね…。もう少し照明映えする美術だと良かったのにな。パンフレットに載ってる初演の美術がいい!ぶっちゃけ、tptみたいに美術にもう少し贅を尽くすか、それこそ松井るみさんが手掛けたら、トータル的に素晴らしくなったと思うよ。

それ以外は、いくら原作があるといえども、オギーがこんなにピュアな作品を創れるとは思ってもみなかったくらい…、

良く出来た脚本でした!

最初の浦井氏の白痴の台詞回しにもウルッときたけど、ラストの“僕はかしこくなりたい”のリフレインには泣けました。思い出すとまた泣けてくる(涙)

知的障害者のチャーリーが手術によって天才になる。だが…。

プロットは至って単純なんだけど、チャーリーを実験に使うには彼の複雑な家庭環境が悪影響を及ぼしたって感じですね。

一応、この作品、原作はSFの分野に入るそうで、確かに脳科学の実験を扱っているから、サイエンス・フィクションであることには違いないけど、私に言わせれば、これは完全に精神世界、いや精神疾患を扱った作品ですね。

原作を読んでないから断言はできませんが、オギーの脚本・演出、そして浦井氏の演技を観て判断する限りでは、描かれている世界観は、科学の実験の成功と失敗を描いているようで、一人の精神分裂者、または二重・多重人格者、またはお年寄りの認知症のような脳機能低下による精神疾患をテーマにした、いくら科学が進歩してもまだまだ科学だけでは解決出来ない精神世界を描いた作品だと思った。

スピリチュアルとは微妙に違うかもしれないけど、結果的には人生には愛が必要だ!を訴えているには変わりないので、スピの世界とも言える。

その精神世界を象徴するかのように、オギーの演出の良さでもあるんだけど、森君演じるネズミのアルジャーノンの使い方が上手かった!

ただ人間がネズミの扮装をして演じて見せるだけでなく、チャーリーの子供時代であったり、もう一人のチャーリーであったり、チャーリーの心の闇の象徴であったり影であったりと、ミュージカル「モーツァルト」の子役アマデのような見せ方が素晴らしかったです。

チャーリーの方がモーツァルトよりもっと複雑な家庭環境だっただけに、アルジャーノンがリアルにチャーリーの心とリンクする演出だったので、分かりやすくかつ丁寧な見せ方でとても効果的でした!

ということで、

今年三度目の東京に行ってきました。明日が仕事でなかったら、何か他の作品のソワレを観たかったのですが、明日は仕事なので、夜行バスで行って、新幹線で帰ってきました。

この「アルジャーノン~」、大阪公演があるのに、まさかのm(__)mチケット完売で残念ながらチケットゲット出来ずでした(涙)この作品は浦井氏が賞を獲った作品だし、何より、ヤンさん!!!との共演なので、何が何でも観たかったので、東京まで行く決心をしました。はい、この作品のためにフレディ・ケンプ氏のピアノリサイタルの希望休が取れなかったんですよ。結局は偶然の休みで行けたから良かったですが…。

これは新幹線代を払ってでも東京まで観る価値はありました。それくらい浦井氏のチャーリーがピュアで素晴らしかった!「シャーロック・ホームズ」の二役とかぶる見せ方になっていたけども、知的障害のチャーリーの演技は新鮮でした。浦井ファンは必見ですよ。初演時の演技がみたくなった。

チャーリーは手術をしたことで、顕在意識と潜在意識の間で苦しんでしまう。浦井チャーリーはその葛藤を上手く表現してました。世の中、知らなくてもいい真実もたくさんある。でも知ってしまう現実もある。その中で人間はどう対処し生きていくかが重要になってくるわけですが…。あ~、よく書けた脚本。

彩音ちゃんの台詞にあるように、具体的な台詞は忘れたけど、神様は背負えるだけの負荷を与える…、言い換えれば、越えられない壁は神様は与えない…になるけど、皆何某の障害を持って生まれてくると思うんよね。身体であったり心であったり環境であったり。その試練は一個人の問題じゃなく、関わる人間皆の問題でもあるわけで。一緒に乗り越えるのが理想だけど、現実はチャーリーみたいな環境が多いと思う。

虐待もそうだけど、この作品にはそういった人間の心理も描かれてい素晴らしかった。自分を責めたり誰かを恨む必要もない。与えられた環境でどう生きていくか?それがホント重要だと思う。

ネタバレしまくってますが、天才になったチャーリーが元に戻っても、愛する心だけはちゃんとチャーリーの心の中に生きているあのラストがもう涙もんでした。

ヤンさん演じるアリスに最初に出会った時のセリフをもう一度言うんよね。アリス自身も経験から学びを得たし、チャーリーも愛や勇気を学んだから同じセリフのやり取りでも全く違うんよね。マジ泣けた。もし明日交通事故で意識不明になっても愛した気持ちは忘れない…みたいな。涙涙でした。


「ミス・サイゴン」二回目

2014-09-18 00:17:51 | ミュージカル
う~ん、普通だった…。

あくまで私の感性なので、それを前提にお読み下さい。

明日から7連チャン勤務なので、舞台鑑賞で英気を養おうと思い、今日が水曜日でないなら「エリザベート」当日券を並んでましたが、前回の知念キム&ミス・サイゴンworldに感化されて、結局笹本キムを観てきました。

ぶっちゃけて書くと、笹本キム以外は前回と同じキャスト陣なのに、感じた印象は前回と140度くらい違ってた。どっちかというと、初演時に感じた思いが甦ってきた感じ。ま、初演時の怒りはなかったですよ。

笹本キムを見させてもらって、やはり私が想像通りのキムだったのがぶっちゃけ残念だった。知念キムのように裏切って欲しかった。やはり笹本キムは逞しい。

あんなに強く魂を込めた歌を響かせたら、自殺する必要あらへん。一人でも十分生きて行ける。そんなキム像でした。知念キムは綺麗な透明感のあるソプラノだったのも要因でしたが、笹本キムはメゾソプラノくらい低いソプラノだったから、知念キムより力強さが引き立った印象。

知念さんがリアル・ママさんという偏見を持って観たせいもあって余計知念キムに感情移入したと自分でも認めるけど、でも、笹本キムを見ていたら、笹本さんだけでなくきっと昆ちゃんや、新妻さんや、松っちゃん、ソニンちゃん、誰がキムを演じても陥りやすそうな演技パターンが見えた感じがした。

これは天国の美奈子さんに対しても悪口になってしまいますが、♪命をあげよう♪をあんなに力強く歌ったらアカン。しかも低音を響かせたらもっとアカン。コンサートで歌うならいいけど、舞台ではNGだと思った。

命をあげるのは、タムにであって大勢の観客にじゃないんだよ。タムの人生の選択をキム本人が導いてしまうくらい、キムは純粋にバカやねん。愚かやねん。そりゃ、エンジニアのような人生を歩むかもしれない恐れもあって、タムをクリスとエレンに託したい気持ちもあったのも分かる。

でも、本当はちゃうやん。たとえ両親が離婚したり死別したりして片親であっても、どんなに貧乏であっても、強い愛を持った親(今回は母親)と一緒に暮らすのが一番に決まってるやん。裕福な暮らしをすることが一番の幸せな訳がないやん。なのにキムはそこを間違えた選択をし、クリもエレンも間違った選択をしてしまう。

この「ミス・サイゴン」、普通に見たら、お前らふざけるな!って内容ですよ、はっきり言って。最低な脚本ですよ。♪ブイ・ドイ♪でも子供たちを“ゴミクズ”呼ばわれですよ。

このふざけるな登場人物に共感を与えるには、本当に純粋さが必要なんですよ。いかに真っ白な魂で演じるかなんですよ。

笹本キムも、美奈子キムも、力強く歌ってやる!母親の強さを知らしめてやる!を訴えるようなパワーがありすぎて、純粋さを見失ってる。

知念キムはそこはパーフェクトでした。っていうか私が知念キムによって新しい発見をさせてもらったって感じですね。

私は、笹本キム、美奈子キムに尋ねたい。どうして自殺したの?と。自分でも、自殺しなくても、タムと一緒に暮らしたいと思ってない?そこに演技に矛盾を感じる。

あ、決して批判しているわけじゃないですよ。笹本さんや、美奈子さんを嫌ってるわけじゃないですよ。ただ、キムを演じると皆陥りやすいパターンを私なりに分析しているだけなので悪しからず。

キムの相乗効果で、クリスとエレン、そして、ジョン、ジョンはまだマシかな…。少なくともクリスもエレンも腹が立つくらいバカに思えてしまう。でも、今回は初演時よりかなり良い。初演時は怒りが半端なかったからね。今回、キムの印象だけで周りの印象も変わるのをリアルに感じました。

改めて知念キムのリアルキムを観ることが出来たことで、これからまた「ミス・サイゴン」が再演されることがあれば、私の理想の「ミス・サイゴン」を観れる可能性もあることを期待させてもらいました。その時は知念キムが卒業していても、きっと誰かが演じて魅せてくれてることを期待してます。ぶっちゃけ、キムを演じるならソプラノの方が理想。

本当に笹本さんの批判をしているわけじゃないから許してねm(__)mちなみに、私の初笹本さんは、ミュージカル「マリー・アントワネット」でした。その時から笹本さんは力強い役が似合う人だと思ってました。去年観た「ジャンヌ」もそうですが、笹本さんは勝ち気な役が本当に似合う。笹本さんには不本意かもしれないけど、カルメンがピッタリだと思う。

今日は、筧エンジニアが面白かった!前回より遊びまっくっていて、心の中で笑いまくってました(笑)いい意味で調子に乗ってましたね。てっきり今日で終わりだからなのかと思ってましたが、明日もあるんですね。

やはり、今回も原田クリスのキムと叫ぶ声にウルッときました。

びっくりするくらい今回は涙はしませんでしたが、前回の私を夢心地にさせてくれて、そして今日は現実に戻してくれたって感じでした。明日からちゃんと現実と向き合って7連チャンを乗り切ろうと決意しました。夢も大事だけど現実も見ることも大事からね。

今日のまとめ:気を悪くしたら本当にごめんなさいm(__)m


宙組「SANCTUARY」

2014-09-12 23:15:17 | TAKARAZUKA
めちゃたくさん書いたのに、間違えて全部消去してもうた(涙)なので、同じことを書く気力を失ったので端的に書きます。それでも長い(笑)

見終えた率直な感想は、田渕先生は「ベルばら」好き?特にフェルゼン編が…。と思った。

それくらい描いていることがフェルゼン編と似てた。なーちゃんのフェルゼン編じゃなく、最近のフェルゼン編ね。

ぶっちゃけ、私には満足がいく作品ではなかった。

見終えたあと、何かが足りない、足りない…と、ずっと何が足りないのかを考えてました。

足りなかったのは、真実の愛の描ききれてないこと、と思っている。作品の記憶が台詞が曖昧になってるから断言出来ないんだけどね…。

フェルゼン編もそうだけど、第一部ラストのフェルゼンの台詞、あれは真実の愛じゃないからね。オスカルからの愛や王妃様からの愛それらは、ただの憧れと、心の隙間を埋めてるだけの小我の愛です。フェルゼンは勘違いしてるんだからね。あれを真実の愛と思ったら大間違いやで。

でも、フェルゼン編にはちゃんと真実の愛は描かれている。それは、フェルゼンが王妃様の名誉と将来を考えてスウェーデンに帰国する決意をしたこと。そして、ラスト、牢獄にいるアントワネットを救い出そうとしたこの二点。そこには真実の愛はある。オスカルからアントワネットからは真実の愛はないから。ただの恋愛。そもそも、フェルゼンとアントワネットの間に真実の愛があるなら不倫はしない!


同じことをアンリにも言える。マルゴがアンリを助けた理由は、確かに愛ではあるけど、真実の愛じゃないから。あれは罪の贖罪が大部分を占めてる。マルゴはアンリを信頼出来る人物だと希望を持ち始めただけである。アンリに言う“生きて!”は真実の愛の言葉じゃないよ。

この“生きて!”の言葉の中には、私のために生きて!の気持ちが入っている。これは真実の愛じゃなく、要求です。

真実の愛は、自分のことより相手のこと第一に考えられる心。見返りを求めないひたすら与えっぱなしの無償の愛。無意識に沸き上がる相手への無償の愛じゃないといけない。

マルゴの愛は見返りを求めてる。

見返りを求めない真実の愛を描くなら、“生きて!”の中に、あなたはフランスを変える力がある。あなたは生きてこの国を救わないといけない。今のヴァロア朝は冷血な血で染められている。今のフランスにはあなたのような温かい太陽の光が必要なの!くらいの気持ちがないとアカンよね。残念ながらナイ!

アンリは、そのマルゴの“生きて!”の言葉を真実の愛から出た言葉だと勘違いしてるに過ぎない。

確かに、マルゴはアンリに生きるための一筋の光を照らしてくれた。でも、これは真実の愛じゃないから!真実の愛はもっとピュアで崇高じゃないといけない。

マルゴは、親からの愛を受けずに育ったきた。何が正しくて何が間違っているのかも分からなくなっている。そこにアンリが現れた。政略結婚ではあるけど、ひょっとしたらアンリが私に一筋の光を照らしてくれるかもしれないと期待してるだけ。

そこに真実の愛を描くなら、もっとマルゴの心の闇を描いて、アンリが“俺がお前の光になる!”くらいの気持ちを描かないとアカンね。残念ながらこれもない。アンリからマルゴへの真実の愛は全く描かれてない。

だから、ラストの大広間で語るアンリの台詞はまさにフェルゼンと同じ。間違った愛だからカットして欲しい。

早い話が、アンリとマルゴの関係は、「あかねさす紫の花」の中大兄皇子と額田女王と同じ。この二人は真実の愛で結ばれたわけじゃないでしょ?打算と憧れですよね。

アンリとマルゴの関係は、単純にお互いがお互いを必要としてるだけに留めておくべきでしたね。

それ以外では、田渕先生のアイデアが冴えた脚本でした。

私も、田渕先生同様、映画「王妃マルゴ」大好き人間で、もし、私が宝塚の演出家なら私が舞台化したかったね。ま、脚本力ないから無理だけど(笑)

今回はアンリが主役に練り直されているんですが、映画とはほとんど異なる内容でしたね。プログラムの先生のコメントにあるように、確かに史実は大幅に省略されている部分もあるけど、結果的には辻褄があうように上手く脚色してた。

映画でも本作でも、毒薬がキーアイテムになっているんですが、映画とは全く違う使い方・見せ方で上手かった。今回はアンリのお母さんが重要人物になっている。映画では本ですね。

サンバルテルミの虐殺の過程では、シャルルがキーパソンになっていてこれも見せ方が上手かった。シャルルを扇動する過程が冴えたアイデアでした。

映画では、マルゴの母親のカトリーヌが冷血な人間として描かれていて、結果的には自業自得な出来事が起こるのが見所でしたが、本作では、どっちかというと、母親の愛や優しさが垣間見れる人物描写だったのが意外と良かった。

逆に、映画ではあまりキーパソンでないアンジュー公が非道な息子として描かれていたのが良かった。ちなみにアンジュー公は、ケイト・ブランシェット主演映画の「エリザベス」に出てきます。

ギーズ公もアンリのライバル的存在で、マルゴに執着している役どころで美味しい役でした。あ、アンジュー公もシャルルも美味しい役でした。見所たくさんあった。演じ甲斐あると思う。

映画「王妃マルゴ」って、シェークスピア劇みたいに起承転結とどんでん返しがあって良く出来た作品なんですが、田渕先生は上手くオリジナルにアレンジされてました。特に、マルゴによってアンリが生かされる様が映画と違って一番の見せ場になっているが良かった。

真実の愛さえちゃんと描かれていたら完璧なんだけど、そうでないから本当物足りなかった。田渕先生のセンスはいいので次回作に期待!


アンリを演じた愛月君は、ポスターのイメージのワイルドさとは異なって、とても純粋な青年像を作り上げてました。真実の愛さえ描かれていたら男らしい素敵な役だったのにね…。

マルゴを演じたうららちゃんは綺麗!この一言に限る。これまた、マルゴの心の闇が描かれていたらもっと魅力的な役になったのにね。アンリ同様残念だった。歌は地声で歌う曲で良かったね。

ギーズ公の凛きら君は、ウザイくらいマルゴに執着する役で、しかも悪役で美味しい役でした。とても良かったです。

カトリーヌの純矢さんは、化粧や雰囲気は、映画に近いけど、人間像は子供や国家に対して深い愛がある方で、見せ方がお上手でした。悪女じゃないのがミソでしたね。

アンジュー公の春瀬君、コリニーの松風君、シャルル9世の秋音君、ジャンヌの花音さんなどなど、今回初めて存じ上げた方々が多くて、しかも皆さんとても演技が上手くてびっくりでした。こんなに才能豊かな方々が大劇場公演では埋もれてしまっている現実が残念でならないですね。

でも、バウ作品だからこその新しい発見があり、観ることが出来たのは良かったです。

今日のまとめ:ぶっちゃけ、脚本テコ入れしたい(笑)m(__)m

「ミス・サイゴン」

2014-09-12 00:08:45 | ミュージカル
天国の美奈子さん、ごめんなさいm(__)m

知念キム、私の想像を遥かに越える素晴らしいキムでした!!!まさにリアル・キムでした!!!

二幕目ラスト、まさかの半号泣でした(涙)思い出すとまた涙が出てくる…。ラストに関わらず、たくさんのシーン&曲で涙がこぼれました。初演時の美奈子さんを思い出して涙が出るとは思ってましたが、実際は、それ以上に知念キムがあまりにもリアル・キムで、どの曲も涙涙でした。それくらい説得力とリアリティーがありました。

実況CDを聴いている時は、第一幕はヘビロテしてましたが、第二幕は、舞台もCDも全く感情移入が出来ず、キムやクリス、そしてエレンにも怒りを覚えたくらい嫌いでした。

でも今日、知念キム・原田クリス・三森エレンを観させてもらって、めちゃくちゃ説得&納得させられました。

キムもクリスもエレンも皆、純粋にバカ過ぎて、その純粋過ぎるほどの純粋さに泣かされました。

知念キム、知念さん自身がリアル・ママさんだけあって、タムが登場してからの知念キムはめちゃくちゃリアリティーのありました。タムと戯れるあの仕草や雰囲気は、実際に子供を産んで育てたことがないと出来ない表現だと思いました。

タムを演じてる子役君は本当は知念さんのお子さんじゃないの?と疑わせるくらいリアル親子にしか見えなくて、タムの中にクリスを視ているのも伝わったし、タムとキムは一心同体で、タムがいたから貧乏生活でも乗り越えられたのも伝わってくるキム像でした。

タムを失ったら、自分の肉の一部を剥ぎ取られるのと同じ思いだから、そりゃ生きていけないわな…というのがひしひしと伝わってくるくらい、キムがバカが付くくらい純粋過ぎて、ラストの自殺は納得させられて涙が止まりませんでした。

キムの純粋さ、キムの一途さ、人の話が聞けないくらいキムの真っ直ぐさを知念さんはリアルに表現されていたので、本当にまさかの涙涙でした。美奈子さんには申し訳ないですが、初演観劇時はどこにも全く泣けなかったもんねm(__)m 知念キムは本当に素晴らしいリアル・キムでした!

今回初めて拝見させてもらった原田クリスは、優等生な歌い方をされる人でしたが、キムの名前を叫ぶ声がめちゃくちゃ素晴らしくて、その叫び声にも何度もウルッときました。

原田君もクリスの純粋なまでのバカさ真っ直ぐさを見事に演じられていて、素晴らしかった。

三森さんも同じです。単純でない純粋なエレンを演じられていて、エレンにもウルッときました。

休演された市村さんの代役の筧エンジニアには全く泣かされてはいませんが(笑)歌が上手くてビックリしました。こんなにミュージカルの歌い方が出来る方だとは思ってなかったので、たくさんミュージカル作品に出て欲しいと思った。


上原ジョンも素晴らしかった!若いのに貫禄と説得力があって本当に素晴らしかったです。

やはりフェスティバルホールは音響がいいな~と思ったくらい、ホールの音響と相乗効果でアンサンブルのコーラスに臨場感と迫力があってマジ圧巻でした!

ジジを演じられた池谷さんもとても説得力のある歌声で、♪我が心の夢♪も大好きな曲なので一曲だけですがとても素晴らしかったです。

全体的に本当に歌が上手くて、めちゃくちゃ聞き応えもあって、テンポも良くて、見応えもあって、今日のメンバーで初めて「ミス・サイゴン」の素晴らしさを実感しました!

演出も初演とほとんど変わってしまった印象ですが、歌詞も微妙に変わったし、新曲もあったね。とてもリアリティーのある舞台美術になっていて、初演時に感じた違和感を解消する素晴らしい舞台美術&演出でした。キムがタムを産んでの三年間の生活もあの舞台セットなら納得。

バンコクに行ってからのキムの生活ぶりも説得力がある演出になっていたのも良かったです。

ヘリコプターのシーンは映像を使ってましたが、リアル・ヘリコプターよりこっちの方が臨場感がありました。

エンジニアのキャデラックのシーンも見事な群舞を取り入れていて新鮮でした。

まさかのまさか、こんなにも泣かされるとは思ってなかったくらい、素晴らしい出来でした!

「ミス・サイゴン」を観るなら絶対知念キムで!と思っていたので、知念キムが観ることが出来て良かったです。去年の公演では来られてませんでしたが、今回大阪に来て頂きありがとうございました!

今日のまとめ:せっかくなら笹本キムも昆ちゃんキムも観てみたいと思ってましたが、知念キムを観たらもう観れません。ごめんなさいm(__)m

実は今日は、もう一作品観てきました。こちらは感想を書くのに悩む。頑張って明日アップします。