あー、オッサンの目にも涙涙!
周りは間違いなく20代の若者たちだらけの中、ええ歳したオッサンが鼻水をすすったり涙を拭ったり、恥ずかしいから泣いたらアカン!と自分に言い聞かせて我慢していたのに、キャスト陣の熱演と脚本の素晴らしさに涙が止まらなかった。
ぶっちゃけ、素人さんの集団なのかな〜と高を括っていましたが、
いやいやいやいやいやいや、とんでもなかった!
確かに素人っぽい雰囲気はありましたが、物語が進むにつれて熱量が上がり、役に同化してきているのがリアルに伝わってきて素晴らしい表現でした!
これぞ、美内すずえ版「奇跡の人」と言ってもいいくらい人間の尊厳がテーマになっていて、どちらも主人公が人間らしく生きる選択を自らの力で獲得することを描いているわけですが、
圧倒的にこちらの方が哲学的、生物学的、人類学的、そしてスピリチュアル的に描かれていたので、脚本がめちゃくちゃ素晴らしかった!
ということで、ガラスの仮面の劇中劇の中で最も再現が困難だと思われていた「狼少女ジェーン」を観てきました。
東京のみで上演していそうな内容なのに大阪で上演してくれるなんて!
って以前に、美内先生がオーナーのシアタースタジオが大阪難波にあるだけでも不思議なくらい。ガラかめファンには堪らないね!
キャパ60人ほどの小さなスタジオですが、北島マヤが人形役を演じた「石の微笑」を上演した劇団つきかげの専用劇場の雰囲気にめちゃくちゃ似ていてた。
「狼少女ジェーン」は、漫画の中では、紫の薔薇の人が速水真澄だとバレるめちゃくちゃ重要な物語でもあります。
「奇跡の人」は、ヘレンとサリバン先生のメインの物語と同時進行でヘレンの家族の物語がサブストーリーとして描かれており、人間の尊厳というより家族愛やヒューマンドラマの要素が強いのですが、
脚色演出の金哲義さんが創り出した狼少女ジェーンの世界観には、人間の思考や思想と対照的な動物的本能が描かれており、より人間の尊厳が強調される内容になっていました。
狼に育てられた四足歩行の狼少女が、二足歩行を学び、手を使うこと学び、言葉を学ぶ。ここまではヘレンと同じ。
でも狼少女ジェーンの学びは、言葉の意味を学ぶのだけでなく、人間の心を学ぶ。愛を学ぶ。
周りの人間からは狼として動物としてしか見られていなかった、扱われていなかった、恐れられていたジェーンが、次第に一人の人間として認知?されるようになる。
ジェーンに人間らしさを強制的に教えるスチュワートよりも、召使いたち?スチュワート邸の住人たちの方がジェーンに心を開いていき愛を教えている。ごく普通の自然な関係において。
ジェーンは、言葉を学ぶ以上に笑顔を見せる方法学んだり、そして愛という心を学ぶ。
スチュワートは、ジェーンに人間らしさを教えようと教育しているようで、実は、人間として関わっていないことに気づいていなかった。スチュワート自身がジェーンを実験道具として、人間になるための訓練を施しているに過ぎなかった。
そんなスチュワートもまた人間として大切なものを学び始める。物理的な動作や言葉よりもっと大切なことを。
この作品では、人間として生きていくことの方が幸せなのか?それとも狼のまま生きていく方が幸せなのか?思想は本能に勝てるのか?といった問題提起をしつつも、本当の人間らしさとは何かを追求している。
いくら姿型は人間であっても本能は狼である。逆に、いくら本能が狼であっても肉体は人間である、つまり少女が大人になる瞬間を表現していたのがめちゃくちゃ度肝を抜かれたし、めちゃくちゃリアリティーがあった。
脳は狼であっても身体は人間である。少女が大人になるということは、人間も動物も変わらないことはあるが、明らかに違うのは、異性を動物的(本能的)に好きになるのか?それとも愛情からなのか?である。
ジェーンはスチュワート邸に住む住人によって愛を学ぶ。そして、スチュワートもまた愛を学ぶ。
その過程の描き方が秀逸だった!
物語はガラスの仮面の劇中劇なのに、まるでスチュワートが真澄で、スチュワートの婚約者が詩織様のような登場人物が出てくるのも脚本の妙でした。
スチュワートは正しく真澄に他ならず、マヤに対する想いがいつしか愛情に変わっていったように、スチュワートもまたジェーンに対して愛を感じるようになる。
ちゃんとガラかめワールドとシンクロさせた金さんの脚本が絶妙でした。
まるで、マヤと真澄の今後を予見させるようなラストシーン。
ジェーンが人間になる過程を描いた物語のようで、実は愛を学ぶ物語に涙涙でした。
ジェーンの生い立ちやその他の登場人物の生い立ち中に戦争の犠牲者的な背景があり、
人間は嘘をつく生きものでもあるといった人間の傲慢さもメッセージとして描いていると同時に、世の中思い通りにならないことは神の試練として、神様のせいにすることで精神の均衡を保つことも大事なのではないかといった、神様は人間の罪を背負う役目を果たしているといった宗教観には目からウロコの考え方でした。
確かに万能の神や天災といった自然には人間は無力だけども、生かされているのは誰かの導きでもあることも描いているのでスピ要素もあって、金哲義さんの脚本演出は本当に素晴らしかったです。
今日拝見させてもらったジェーン役のKANAEちゃんは、本能に狼少女としての動きが大変だったと思いますが、めちゃくちゃ柔軟性があって狼少女にしか見えない時が何度あり、言葉を学ぶ様、愛を学ぶ様、別れを寂しいを学ぶ様、動物的本能の表現の仕方などどれも丁寧で一生懸命に演じられていて、リアルジェーンでした。
スチュワートを演じられた光岡紗良さんがあまりにもリアル青木麗にしか見えないくらいイケメン男子でした。KANAEちゃんもそうでしたが、役に同化しているのが伝わるくらいリアルに表現されているシーンが沢山あり、泣かされまくりでした。
エレン役の方がめちゃくちゃ良い存在感でした。まるで詩織様のような嫉妬深さがあり嫌な役なんだけど逆に人間らしさを上手く表現されていてジェーンとの対比する役なのでとても良かったです。
話が進むにつれて、スチュワート邸の住人たちの存在が愛おしくなりました。
登場人物のキャラ設定が個性的で上手かったです。
最初は素人さんの集団なのかな?と思って観てましたが、段々と物語の世界に引きずりこまれて、まさかの涙涙でした。
脚本演出キャスト陣だけでなく、音楽の選曲も良かった!
なんと!ニコールの「めぐりあう時間たち」の曲も使われていて、
いつものごとく、
めちゃ導かれてる!!
(笑)
それはさておき、
今回上演されたリアリティ編の公演は終わりましたが、配信があるそうです!
これ、まじガラかめファン必見!!