スゲー、浦井氏と稲葉友君、めちゃくちゃ演技バトルしてるやん!?
熱くて温かいバトルに涙涙でした!
G2さんが浦井氏のために書いたという気鋭の色男画家モディリアーニと彼の作品をこよなく愛している画商ズボロフスキーとの友情と、彼らを取り巻く恋人と妻、そして友人の物語。
生きている時は日の目を見ず、亡くなった途端に作品の価値がバク上がりするという絵画世界の暗黙のルールが背景にあって、
才能があってもお金がないと生きていけない世の中で、本当に大切なものは何かを問うた素晴らしい作品でした。
脚本も演出も演技も音楽も美術も照明も素晴らしかった!全く文句なし!
めちゃくちゃ良かった!!
やっぱさ、G2さんの作品には主人公と対になるライバル的存在が絶対不可欠だね!
好敵手の存在あってこそ主人公の存在か際立つ。逆もしかり。
ガラスの仮面なら、北島マヤと姫川亜弓。スワンキングなら、ルートヴィヒ2世とワーグナー。
姫川亜弓も天才少女だから、北島マヤよりも演技が劣ったらガラスの仮面じゃないんだよ。
対照的な2人だが、天才同士のバトルだから面白いねん。
今作だと、浦井氏演じるモディリアーニと稲葉友君演じるズボロフスキー。
マジで魂と魂のぶつかり合いの素晴らしいバトルだった!
いや〜、G2さんにライバルの関係性を描かせたら右に出る者はいない!言っても過言でないくらい脚本がピカいち!
本当に素晴らしかった!
モディリアーニもズボロフスキーもそれぞれ対照的な存在で相反する人間同士なのに、モディリアーニが描く作品が2人を結びつける。
自分の運命を悟りながらも絵を描き続けようとするモディリアーニ。
彼が生きているの間になんとか絵を売って彼と家族の生活を守りたいと奮闘するズボロフスキー。
最初は、ズボロフスキーに心を開かなかったモディリアーニが、ラスト、ズボロフスキーの真剣な想いに応えようと歩み寄る姿に涙涙。
画商としては、作品を高く売ってナンボの世界。情にほだされたら商売あがったり。
だけど、ズボロフスキーは、モディリアーニへの報酬を払うために自分たち(ズボロフスキーと妻)の衣類を売ったり内職をしてお金を工面する。
同業者との取引も、私情ゆえに上手くかず、モディリアーニと約束したにも関わらず、モディリアーニが生きているうちに必要なお金が入ってこない始末。
色男のモディリアーニが宮澤佐江ちゃん演じるジャンヌとの出会いによって、真実の愛が芽生える。これから幸せな生活を送ろうとする矢先に戦争が始まって絵を買ってくれそうな富裕層がパリから南フランスへ南下してしまったり、病が彼の時間を奪い始める。
ジャンヌがモディリアーニの子供を身籠り、これから本当に幸せな時間が訪れようとしていたのに、運命に逆らうことが出来ず、ジャンヌもまたモディリアーニを追うように…。
まじで切な過ぎる!
ズボロフスキーは全ての事情が分かっているのに2人を助けられなかったことに悔やみきれないでいる…。
そんなことない!そんなことない!君は良くやった!
拝金主義がはびこる資本主義社会の中で、
お金を生み出すことが本当に幸せなことなのか?
お金ではなく、作品を、その人間を愛することの方が、お金よりも何百倍も価値があるんじゃないのか?
本来の人間のあり方を示唆しているのがズボロフスキーやと思うねんな。
このズボロフスキーの人間性をより引き立たせるために、資本主義の象徴となる同業者を登場させた点がめちゃくちゃ良かった。
さすが、G2さんの脚本やわ!
浦井氏のモディリアーニが、めちゃくちゃ良かった!
以前なら、役柄で声や歌のトーンを変えるのは当然としても、役名は同じなのに意味不明に歌唱チェンジする時があって、役のイメージが定まらなくてイラっとすることがありましたが、
今回はちゃんと役の感情に合わせて歌い方を変えていて、起伏が激しいモディリアーニなだけに歌い方の変化は非常に効果的でした。
やさぐれ感から優しさや愛を学ぶ変化が、台詞にも歌にも表れていて丁寧に役作りをしていたのが伝わった。表現力としてはアルジャーノンに匹敵する。
私は1回しか観てない浦井氏のチャーリーの役作り、ライト、ヘドウィグの役作りもマジで素晴らしかったからね。
作品をお金としか見ていない世間において、唯一ズボロフスキーと妻と友人が魂を感じてくれたんよね。
作品の価値は死んでからバク上がりする社会の常識に対して、もはや作家は人間としての価値はなく、死が価値を上げるなんて何たる皮肉なことか?
モディリアーニは、口には出さないが、たとえ売れなくても、売れると信じているズボロフスキーの応援は本当に嬉しかったと思うんよ。
そりゃさ、生活をするためにはお金は必要。だからといって、絵も観てない人に高く買ってもらえればそれでいいんか?そこに芸術家としてのプライドはないんか!ってことやん。
描きたい絵を書くことがモディリアーニのポリシー。誰にも口出しはされたくない融通が利かない男。だからこそ、あの独特な、目に瞳がなく、首は長く、顔は無表情、ヌード画に陰毛を描くという大胆なスタイルが物議を醸しだし、それがモディリアーニの唯一無二のスタイルなのである。
頑固なモディリアーニが、ジャンヌの深層心理を突く言葉に心がゆれ、次第に心を開いていく。そしてズボロフスキーにも信頼を寄せるようになる。その過程を、浦井氏は情熱的かつ丁寧に演じられていた。
役者浦井健治の本気を久々に観させてもらった感覚。
っていうか、浦井氏のためにわざわざ、G2さんがオリジナル脚本で浦井氏に当てて書いてくれたなんて、ほんま役者冥利に尽きるな!
それに応える素晴らしいモディリアーニ像でした!
ズボロフスキーヤ役の稲葉君もめちゃくちゃ上手かった。モディリアーニの作品に対するピュアな想いが全面に溢れていて何度泣かされたことか。役に、浦井氏に、ぶつかっていく様は、これぞ演劇の醍醐味を味わわせてもらった。
一見、ズボロフスキーが主役なのでは?と思わせるくらい主役を食う勢いがあったが、稲葉君もまた情熱的にかつ温かく、感情をむき出しに演じられていて本当に浦井氏との演技バトルは凄かった!
浦井氏も本気でぶつかっていき、またぶつかってこられるお芝居が出来て嬉しかったかもしれないね。
モディリアーニのモデル兼恋人のジャンヌ役の宮澤佐江ちゃんは、ただのモデルでも恋人でもない。モディリアーニを一番近くで見ているから彼自身が気づいてないこともちゃんと理解している女性。モディリアーニにとっては、施錠した心を鍵で開け丸裸にすることが出来る唯一の女性。唯一心をゆるせる気が置けない女性。
時には彼のことは何でも知ってる理解してると勝ち気に振る舞いながらも、身籠ったことでモディリアーニに拒絶されるのではないかと一人苦しんでもいる。
誰よりも深く彼を愛しているジャンヌ像を、感情の揺らぎも丁寧に演じられ、役と同一感も感じられ素晴らしい演技でした。
ズボロフスキーの妻役の福田えりさんは、歌が上手かった。歌だけでなく、夫かいる身でモディリアーニにヌードモデルの依頼をされ引き受けてしまう。それをズボロフスキーに相談するのだが、2人のやり取りがコメディー要素で攻めてくるのが、ある意味意表を突いたアプローチだったのが逆に良かった。2人の会話にはコメディー要素とシリアス要素があってとてもメリハリがあってよかった。コメディー要素はとても和む。
そして、秋本奈緒美さん演じる、モディリアーニの理想のモデル相手ルニア。決してヌードモデルには、本人が希望してもなることはなかったが。
ズボロフスキー夫妻同様にモディリアーニの作品販売に手助けする人物。そしてユーモアセンスもある女性。
秋本さんが、まー、歌の表現が素晴らしい!歌唱力があるというより、ニコールみたいに気持ちで歌えるひと。時々技術がともなう歌い方をされていましたが、気持ち優先だったし、変に裏声を使うことなく地声で歌われていて、本当に魅力的な歌い方だった。もっとミュージカルに出てほしい。
モディリアーニの数奇な運命を描いた作品ではなく、彼を取り巻く人物にも焦点を当てることでモディリアーニ像を浮き彫りにさせる見事な脚本演出だった。
なにより、貧乏画家の超悲劇物語ではなく、ちゃんと登場人物各々が気付きと学びを得る脚本になっていたのが良かった。
死んでから作品価値が上がるなんて、ホンマアコギな商売やな!
美術に関しては、額縁の使い方やモディリアーニの作品群も゙出して来て、彼のセンスは唯一無二であることを証明できる見せ方なのが良かった。
個人的には、吊り下げる演出がついついG2さんの「NINE」思いだしたよ。
また襲撃勃発シーンでは、作品には全く関係無いが、カンディンスキーとミャンターの関係性がフラッシュバックされた。ナチスからの没収を避けるために地下にカンディンスキーの作品を隠した逸話を思い出して泣けてしまった。
戦争は、無差別虐殺だけでなく文化の破壊も厭わない残虐性がある。
指導者よ、先陣切って出陣せーや!
たった2時間強の物語なのに、メインの登場人物の背景がみえる役作り、
かみむら周平さんのジャズテイストな音楽も凄く良かった。あえてアーコデオンを使わない音楽アレンジも良かった。
タイトルのモンパルナスの奇跡。
死んでから絵が売れた奇跡ではなく、
モディリアーニの絵が売れたのは、間違いなくズボロフスキーや妻のアンナ、そしてジャンヌ、それから、ルニアが絵の価値を分かっていたから。モディリアーニ一人では間違いなく絵は売れていなかったであろう。彼らとの出会いによって、彼らの信じる力がモディリアーニを天才画家へと導いたのだと思う。
それにしても、G2さんの舞台は結構観てますが、どれ一つとして、同じテイストの作風がないのがビックリ!
今作も私が想像するG2さんの作品だとは思えないくらい大人の上質なミュージカルに仕上がっていて驚いた。
新しい大手町よみうりホールは、木の温もりを感じ、本作にピッタリな空間だった。客席も素晴らしく音響も良かった。ぶっちゃけ、PARCO劇場と良い勝負。
東京まで観た甲斐ありました。やはり、地方で上演するなら劇場選びは大事。キャパで選ぶなら、大阪にこなくていいよ。
やはり、劇場空間に合わせて演出された舞台が一番安心して観られる。
ま、上演期間が短いのがもったいないくらい。
ほんと、めちゃくちゃ見応えがある素晴らしい作品でした!
ぶっちゃけ書いて申し分ないが、客席にG2さんがいらっしゃってましたが、前回の花ちゃんの舞台よりも客席の手応えを感じたとことでしょう。