モンパルナスの奇跡

2024-06-23 00:24:00 | うらけん
スゲー、浦井氏と稲葉友君、めちゃくちゃ演技バトルしてるやん!?

熱くて温かいバトルに涙涙でした!

G2さんが浦井氏のために書いたという気鋭の色男画家モディリアーニと彼の作品をこよなく愛している画商ズボロフスキーとの友情と、彼らを取り巻く恋人と妻、そして友人の物語。

生きている時は日の目を見ず、亡くなった途端に作品の価値がバク上がりするという絵画世界の暗黙のルールが背景にあって、

才能があってもお金がないと生きていけない世の中で、本当に大切なものは何かを問うた素晴らしい作品でした。

脚本も演出も演技も音楽も美術も照明も素晴らしかった!全く文句なし!

めちゃくちゃ良かった!!

やっぱさ、G2さんの作品には主人公と対になるライバル的存在が絶対不可欠だね!

好敵手の存在あってこそ主人公の存在か際立つ。逆もしかり。

ガラスの仮面なら、北島マヤと姫川亜弓。スワンキングなら、ルートヴィヒ2世とワーグナー。

姫川亜弓も天才少女だから、北島マヤよりも演技が劣ったらガラスの仮面じゃないんだよ。

対照的な2人だが、天才同士のバトルだから面白いねん。

今作だと、浦井氏演じるモディリアーニと稲葉友君演じるズボロフスキー。

マジで魂と魂のぶつかり合いの素晴らしいバトルだった!

いや〜、G2さんにライバルの関係性を描かせたら右に出る者はいない!言っても過言でないくらい脚本がピカいち!

本当に素晴らしかった!

モディリアーニもズボロフスキーもそれぞれ対照的な存在で相反する人間同士なのに、モディリアーニが描く作品が2人を結びつける。



自分の運命を悟りながらも絵を描き続けようとするモディリアーニ。

彼が生きているの間になんとか絵を売って彼と家族の生活を守りたいと奮闘するズボロフスキー。

最初は、ズボロフスキーに心を開かなかったモディリアーニが、ラスト、ズボロフスキーの真剣な想いに応えようと歩み寄る姿に涙涙。

画商としては、作品を高く売ってナンボの世界。情にほだされたら商売あがったり。

だけど、ズボロフスキーは、モディリアーニへの報酬を払うために自分たち(ズボロフスキーと妻)の衣類を売ったり内職をしてお金を工面する。

同業者との取引も、私情ゆえに上手くかず、モディリアーニと約束したにも関わらず、モディリアーニが生きているうちに必要なお金が入ってこない始末。

色男のモディリアーニが宮澤佐江ちゃん演じるジャンヌとの出会いによって、真実の愛が芽生える。これから幸せな生活を送ろうとする矢先に戦争が始まって絵を買ってくれそうな富裕層がパリから南フランスへ南下してしまったり、病が彼の時間を奪い始める。

ジャンヌがモディリアーニの子供を身籠り、これから本当に幸せな時間が訪れようとしていたのに、運命に逆らうことが出来ず、ジャンヌもまたモディリアーニを追うように…。

まじで切な過ぎる!

ズボロフスキーは全ての事情が分かっているのに2人を助けられなかったことに悔やみきれないでいる…。

そんなことない!そんなことない!君は良くやった!

拝金主義がはびこる資本主義社会の中で、

お金を生み出すことが本当に幸せなことなのか?

お金ではなく、作品を、その人間を愛することの方が、お金よりも何百倍も価値があるんじゃないのか?

本来の人間のあり方を示唆しているのがズボロフスキーやと思うねんな。

このズボロフスキーの人間性をより引き立たせるために、資本主義の象徴となる同業者を登場させた点がめちゃくちゃ良かった。

さすが、G2さんの脚本やわ!



浦井氏のモディリアーニが、めちゃくちゃ良かった!

以前なら、役柄で声や歌のトーンを変えるのは当然としても、役名は同じなのに意味不明に歌唱チェンジする時があって、役のイメージが定まらなくてイラっとすることがありましたが、

今回はちゃんと役の感情に合わせて歌い方を変えていて、起伏が激しいモディリアーニなだけに歌い方の変化は非常に効果的でした。

やさぐれ感から優しさや愛を学ぶ変化が、台詞にも歌にも表れていて丁寧に役作りをしていたのが伝わった。表現力としてはアルジャーノンに匹敵する。

私は1回しか観てない浦井氏のチャーリーの役作り、ライト、ヘドウィグの役作りもマジで素晴らしかったからね。

作品をお金としか見ていない世間において、唯一ズボロフスキーと妻と友人が魂を感じてくれたんよね。

作品の価値は死んでからバク上がりする社会の常識に対して、もはや作家は人間としての価値はなく、死が価値を上げるなんて何たる皮肉なことか?

モディリアーニは、口には出さないが、たとえ売れなくても、売れると信じているズボロフスキーの応援は本当に嬉しかったと思うんよ。

そりゃさ、生活をするためにはお金は必要。だからといって、絵も観てない人に高く買ってもらえればそれでいいんか?そこに芸術家としてのプライドはないんか!ってことやん。

描きたい絵を書くことがモディリアーニのポリシー。誰にも口出しはされたくない融通が利かない男。だからこそ、あの独特な、目に瞳がなく、首は長く、顔は無表情、ヌード画に陰毛を描くという大胆なスタイルが物議を醸しだし、それがモディリアーニの唯一無二のスタイルなのである。

頑固なモディリアーニが、ジャンヌの深層心理を突く言葉に心がゆれ、次第に心を開いていく。そしてズボロフスキーにも信頼を寄せるようになる。その過程を、浦井氏は情熱的かつ丁寧に演じられていた。 

役者浦井健治の本気を久々に観させてもらった感覚。

っていうか、浦井氏のためにわざわざ、G2さんがオリジナル脚本で浦井氏に当てて書いてくれたなんて、ほんま役者冥利に尽きるな!

それに応える素晴らしいモディリアーニ像でした!

ズボロフスキーヤ役の稲葉君もめちゃくちゃ上手かった。モディリアーニの作品に対するピュアな想いが全面に溢れていて何度泣かされたことか。役に、浦井氏に、ぶつかっていく様は、これぞ演劇の醍醐味を味わわせてもらった。

一見、ズボロフスキーが主役なのでは?と思わせるくらい主役を食う勢いがあったが、稲葉君もまた情熱的にかつ温かく、感情をむき出しに演じられていて本当に浦井氏との演技バトルは凄かった!

浦井氏も本気でぶつかっていき、またぶつかってこられるお芝居が出来て嬉しかったかもしれないね。

モディリアーニのモデル兼恋人のジャンヌ役の宮澤佐江ちゃんは、ただのモデルでも恋人でもない。モディリアーニを一番近くで見ているから彼自身が気づいてないこともちゃんと理解している女性。モディリアーニにとっては、施錠した心を鍵で開け丸裸にすることが出来る唯一の女性。唯一心をゆるせる気が置けない女性。

時には彼のことは何でも知ってる理解してると勝ち気に振る舞いながらも、身籠ったことでモディリアーニに拒絶されるのではないかと一人苦しんでもいる。

誰よりも深く彼を愛しているジャンヌ像を、感情の揺らぎも丁寧に演じられ、役と同一感も感じられ素晴らしい演技でした。

ズボロフスキーの妻役の福田えりさんは、歌が上手かった。歌だけでなく、夫かいる身でモディリアーニにヌードモデルの依頼をされ引き受けてしまう。それをズボロフスキーに相談するのだが、2人のやり取りがコメディー要素で攻めてくるのが、ある意味意表を突いたアプローチだったのが逆に良かった。2人の会話にはコメディー要素とシリアス要素があってとてもメリハリがあってよかった。コメディー要素はとても和む。

そして、秋本奈緒美さん演じる、モディリアーニの理想のモデル相手ルニア。決してヌードモデルには、本人が希望してもなることはなかったが。

ズボロフスキー夫妻同様にモディリアーニの作品販売に手助けする人物。そしてユーモアセンスもある女性。

秋本さんが、まー、歌の表現が素晴らしい!歌唱力があるというより、ニコールみたいに気持ちで歌えるひと。時々技術がともなう歌い方をされていましたが、気持ち優先だったし、変に裏声を使うことなく地声で歌われていて、本当に魅力的な歌い方だった。もっとミュージカルに出てほしい。



モディリアーニの数奇な運命を描いた作品ではなく、彼を取り巻く人物にも焦点を当てることでモディリアーニ像を浮き彫りにさせる見事な脚本演出だった。

なにより、貧乏画家の超悲劇物語ではなく、ちゃんと登場人物各々が気付きと学びを得る脚本になっていたのが良かった。

死んでから作品価値が上がるなんて、ホンマアコギな商売やな!

美術に関しては、額縁の使い方やモディリアーニの作品群も゙出して来て、彼のセンスは唯一無二であることを証明できる見せ方なのが良かった。

個人的には、吊り下げる演出がついついG2さんの「NINE」思いだしたよ。

また襲撃勃発シーンでは、作品には全く関係無いが、カンディンスキーとミャンターの関係性がフラッシュバックされた。ナチスからの没収を避けるために地下にカンディンスキーの作品を隠した逸話を思い出して泣けてしまった。

戦争は、無差別虐殺だけでなく文化の破壊も厭わない残虐性がある。

指導者よ、先陣切って出陣せーや!

たった2時間強の物語なのに、メインの登場人物の背景がみえる役作り、

かみむら周平さんのジャズテイストな音楽も凄く良かった。あえてアーコデオンを使わない音楽アレンジも良かった。

タイトルのモンパルナスの奇跡。

死んでから絵が売れた奇跡ではなく、

モディリアーニの絵が売れたのは、間違いなくズボロフスキーや妻のアンナ、そしてジャンヌ、それから、ルニアが絵の価値を分かっていたから。モディリアーニ一人では間違いなく絵は売れていなかったであろう。彼らとの出会いによって、彼らの信じる力がモディリアーニを天才画家へと導いたのだと思う。


それにしても、G2さんの舞台は結構観てますが、どれ一つとして、同じテイストの作風がないのがビックリ!

今作も私が想像するG2さんの作品だとは思えないくらい大人の上質なミュージカルに仕上がっていて驚いた。

新しい大手町よみうりホールは、木の温もりを感じ、本作にピッタリな空間だった。客席も素晴らしく音響も良かった。ぶっちゃけ、PARCO劇場と良い勝負。

東京まで観た甲斐ありました。やはり、地方で上演するなら劇場選びは大事。キャパで選ぶなら、大阪にこなくていいよ。

やはり、劇場空間に合わせて演出された舞台が一番安心して観られる。

ま、上演期間が短いのがもったいないくらい。 

ほんと、めちゃくちゃ見応えがある素晴らしい作品でした!

ぶっちゃけ書いて申し分ないが、客席にG2さんがいらっしゃってましたが、前回の花ちゃんの舞台よりも客席の手応えを感じたとことでしょう。



ヤマトタケル

2024-06-15 21:05:44 | 古典芸能
同じ作品なのに、演者が変わっただけで(もちろん、観るタイミングや環境や体調 も左右する)感じ方が変わるなんて!

めちゃくちゃ良かった!

正直、全く期待してなかった。團子君と壱太郎君コンビが観れたらいいと思っていただけだったので、本当に本当にめちゃくちゃ良かった!

第一幕は全く眠たくならなかった!演舞場の時は、夜行バスの疲れもありほとんど寝てしまってたからね…。

第二幕も良かったし、第三幕は、さすがに間で芝居されると眠たくなるが…、

トータルでは、新橋演舞場で観た時よりも遥かに良かった。

演舞場の時は、ストーリー、スピード、スペクタクルが謳い文句のスーパー歌舞伎のはずなのに、スピード感がなかったんよね。間で芝居をしていたから余計眠たかったm(__)m

ストーリーも、ファザコンの主人公が父帝に裏切られ続ける物語に、神話?日本書紀?の物語なのに下世話過ぎて全く面白みを感じなかったんよね。

今回、團子君のヤマトタケルを観させもらって、

寝てたとはいえ2回目の鑑賞だったし、演舞場では感じなかったことや別の視点で観ることが出来たので、

決して下世話なストーリーでなかったことに気付かさせられた。

古き伝統も大事だけど、新しいことや試みをしていかないと国(歌舞伎)が衰退するかもしれない憂いをヤマトタケルに託し、そして、次期天皇の我が子ワカタケル(後世)に、その想いを引き継いでもらいたい想いが込められている脚本になっていることに全く気付かなかった。ぶっちゃけ、取って付けた感はあるが…。

なぜ新しい歌舞伎スタイルを取り入れようとしたのか、猿翁さんの想いがビンビン伝わってくる内容だった。

猿翁さんが残したスーパー歌舞伎は、ちゃんとちゃんと今も生きているし、ちゃんと引き継がれている。

ケレン味たっぷりだし、現代語だから歌舞伎初心者にはもってこい。

私も、歌舞伎お初また2回目が猿翁さんが三代目猿之助時代の「新・三国志」だった。めちゃくちゃ分かりやすくて迫力があって面白かった!

それはさておき、

團子君がヤマトタケルを演じ、中車さんが父帝を演じることで、実の親子だからこそのリアリティーがあった。

團子君のピュアさがヤマトタケルの父帝の愛を求める様とめちゃくちゃリンクしていて、めちゃくちゃリアルだった。

っていうより、中車さんのご子息だけあって、本当にお芝居が上手い!

お兄ちゃんとの演じ分けがマジでアッパレだった!

歌舞伎って、型を重要視して感情が置き去りにされることがあるけど、團子君は、型だけじゃなくちゃんと感情も大事にしているのが伝わってきた?まだまだ若いのに、代役公演の「不死鳥よ波濤を越えて」の時もそうだったけど、大舞台でもしっかり主役を張れる役者さんになっていて、

マジ、恐るべし!!

本当に本当に素晴らしいヤマトタケル像だった!

演舞場の時は、父親に愛されなくて可哀想な主人公の、マザコンならぬファザコン設定が正直受け入れられなかったが、

今回二回目を観させてもらって、

決してファザコン主人公の悲しい顛末の物語でも勧善懲悪ものでもないこと、天皇や皇族が善で敵が悪であるとも描いていないことに気付いた。

歌舞伎スタイルだと、赤顔であったり青色の隈があったらついつい悪役だと思って観てしまいますが、

よくよく台詞を聞いたら、むしろ朝廷側だって悪ではないのか的な台詞もあって、

必ずしも主人公が善だとは限らない。見方によって悪にもなる。

ヤマトタケルや朝廷は、敵国にとっては悪なのである。

そこもちゃんと台詞で伝えていた。

善人の役だから善人だとは限らない。他者にとっては悪人になりえる。

今までの歌舞伎の伝統では、勧善懲悪こそが正しい歌舞伎の表現だと思っていたけど、悪人にもちゃんと五分の魂があること、悪人にも正義あることをこの作品ではちゃんと伝えている。

歌が演じる熊襲弟タケルも、猿弥さん演じる山神も間違ったことは言ってない。むしろ、朝廷の行いは、熊襲にとっても山神にとっても悪行なのだ。

そもそも、正当な理由があっても兄殺しは重罪なんだよ。

神様を襲うなんてもっと重罪。

熊襲が、山神がヤマトタケルに何をした?朝廷を嫌うことが悪事か?

いつ襲ってくるか分からないから、先手を打つことが善か正しい行いか?

昨今の戦争もしかり、話し合いはないんか?

なんで戦争をしないといけない事態に陥るん?

なぜ暴力で解決しようとする?無実の人間の命を取り引きに使う?

決して、自分たちの手を汚すことはしないのに!

一体何を求めてるん?

自国の利益か?命を犠牲にしてまでも、それが国民の利益に繋がることか?裏で私腹を肥やそうとしてないか?

タケルが父帝に愛を求める様は、ただのファザコンを意識した振る舞いではなく、何をするにも愛が必要であることを訴えていると私は解釈した。

愛があったら戦争なんてする必要はないねん。

愛国心で特攻させることは愛故か?愛と強制を一緒にしてないか?都合よく愛を強要してないか?

「オッペンハイマー」や「関心領域」を観たあとだけに余計、戦争の虚しさや人類愛の大切さを感じる作品だった。

あ、話が脱線しまくり…。ま、いつものことですが…。

團子君は、ほとんど出ずっぱりで、早替えや立ち回りもあり、汗が凄かった。これを1日2公演は本当に大変だと思った。

それにしても、素顔はまだまだ少年のように若さに満ち溢れているし、お父さんにもおじいちゃんにも似てるとは思ったことないのに、化粧したら、めちゃくちゃ猿翁さんとソックリで驚きを隠せない。

喋り方も猿翁さんに似せてきているのか、元々そうなのかは分からないが、猿翁さんを細くしただけでそれ以外は猿翁さんの分身にしか思えなかった。面影ありまくり!

こればかりは、どんなに素晴らしい与兵衛を演じた隼人氏でも表現できない。

猿翁さんの血筋ならではの凄みを味わわせてもらった。

本当に本当に素晴らしいヤマトタケル像だった。

中車さんの帝は、存在感が半端ない。親子共演は大正解やね!

そうそう、團子君は化粧した時だったが、中車さんは、素顔が猿翁さんに似てきたね。

壱太郎君の兄橘姫と弟橘姫の演じ分けもお見事だった。米吉君も良かったけど、やはり、貫禄が違う。声音や衣装だけでは演じ分けられない表現の巧みさがあった。

台詞は変わってないはずだけど、海のシーンでのヤマトタケルを助けんがための嘘のお芝居がお見事でしたね。本心と見せかけてそうじゃない演技にウルッときた。海に飛び込むシーンでは演舞場ではなかった衣装替えがありましたね。

歌の熊襲弟タケルもめちゃくちゃ良かった。演舞場では違う方が演じ、熊襲のシーンはほとんど寝ていたからねm(__)m

ヤマトタケルと名乗る理由が語られる重要なシーンだったので、熊襲弟タケルは兄タケルよりも゙美味しい役だったね。

もう1役のヘタルベは、ぶっちゃけ、演舞場の方が良かった。感情を全面に出していて良かったのに、今回は毎回二役だったからか感情を抑えてた印象。

タケヒコの福ちゃんは、演舞場の時よりめちゃ色気があってビックリ!ホンマ歌舞伎顔やな!化粧がめちゃくちゃ良い!

今回の松竹座の公演、御園座公演があったからか、尾張シーンでの嵐橘三郎さんの尾張弁?名古屋弁?がめちゃくちゃ愉快だった。奥さん役の笑也さんとの関係性もめちゃ和む。短い登場シーンなのが残念。

やはり、大阪公演だからか、新橋の時よりも笑いが多かったね。橘三郎さん、笑也さん、笑三郎さん、めちゃ攻めてきてたね。

演舞場の時は、チケットが余っていたのに、御園座も松竹座もまさかの完売。間違いなく博多座も即完売でしょう。

本当は、ヅカ友さんと観る予定にしていましたが、観たい日のチケットが完売だったので、一緒に観ることが出来なくなってしまいました。結局、ひとりで違う日に戻りチケットで観てきました。

本当に本当に戻りチケットゲット出来て本当にラッキーでした!

團子君、ほぼ毎日2回公演がありますが、お身体に気をつけて千秋楽まで頑張って下さい!

関心領域

2024-06-12 01:48:40 | 映画
先ずは、

アーサ、雪組次期トップおめでとうございます!

順当でトップになってくれて安心した。

アーサで、ポーの一族をお願いします!!今の雪組なら絶対可能!


では、本題。

とても斬新で素晴らしいアプローチだった!

アウシュヴィッツ強制収容所の塀の外の物語。

塀の中の出来事は一切描かれていないのに、たったこの1文だけで、悲惨な状況が想像できるという見事な演出でした。

塀の外の幸せと裏腹に、塀の中から聞こえてくる不況和音。列車の音、銃声、叫び声、鳴き声、怒鳴り声…。

煙突から吹き上がる煙や炎。

観客には一切伝わってこない臭い。

ホロコーストの悲惨な現場は一切描かれていないのに、胸がざわつく。 

それにしても、「関心領域」のタイトルは素晴らしい。

誰が?どれだけ?ホロコーストに関心を持っているのか?いや、無関心なのか?

この作品において、ホロコーストに無関心なのは間違いなく主人公の奥さん。

実のお母さんですら、逃げ出す有り様なのに…。

奥さんが関心を持っているのは、家と、プールや温室がある広い庭。塀の反対側には都会にはない豊かな自然。ここには奥さんの理想がある。

だから、夫が転身になっても一緒に付いていこうとしない。むしろ、今の生活を維持するために夫に単身赴任することを勧める有り様。

ユダヤ人から搾取した毛皮や化粧品に興じる姿は、もはやナチスの加担者に他ならない。

塀の外の平和な日常を延々と見せられ、どういったラストになるのか、そもそもオチがあるのか、と想像していたら、

この奥さん、夫が戻ってくると連絡を聞いても、全く喜ぶ様子なし。夫に対しても無関心、関心領域狭狭だった。

そこがピカ一だった!

小さな伏線が生きる演出になっていて、主人公は愛妻家と思わせておいて実はそうでなかったり、

妻もまた召使い?と良い仲になっているのでは?と想像させるような演出になっていたり、

塀の内と外の温度差の見せ方が本当に斬新だった。

ユダヤ人は皆強制収容所送りになって虐殺されているだけではなく、労働力として使われている。

そして、主人公の家庭においても召使いとして雇われている。

最初は全く説明がないのでモヤモヤさせられたが、徐々に登場人物の関係性が分かる見せ方も上手かった。全て台詞だけどね。

一つだけどうしても分からない演出があって、夜中少女が、まるで蛍光塗料でも塗られていたのか白光りするシーンがあって、ずっと何をしてるのか分からなかった。

ついついパンフレットを購入して読んだら、ちゃんと説明されていて、めちゃくちゃスッキリした。と同時に、気付けなかったことにショックだった…。凄く重要なシーン。

あと、主人公が子供たちにヘンゼルとグレーテルを読み聞かせるシーンにおいても、物語がまるどホロコーストを正当化してるようにも見受けられたが、逆もしかりで、戦後処理の正当化にも思えた。これは上手く掛けてると思った。

映画の序盤はまだ焼却炉がなった(と思われる)が、後半に焼却炉建設の説明をするシーンがあって、台詞だけだけど、状況を想像させる演出になっていて、「オッペンハイマー」もそうだったけど、映像になっていないシーンを連想させる演出はお見事としか言いようがない。

グロいシーンもエロいシーンも一切ないのに想像を掻き立てる見せ方はマジ秀逸!

ラスト、主人公側の視点で、ついさっきまでパーティーで賑やかだった建物が何も無い虚無感漂う空間に様変わりしたり、その途中、戦後を表現してか今は博物館となっているかつての強制収容所を挿入シーンとして加えていたり、

まるで観客に、今起こっている戦争に関心ありますか?と問われているようにも思えた。

今だに終わることがないロシアとウクライナの戦争。そして、イスラエル戦争。戦争が終わる気配なんて一切なし!

最初イスラエルがテロ攻撃で被害者側で、イスラエルは悪くないとイスラエルの人たちは言っていたのに、今では加害者側になっている。第二次世界大戦では、ユダヤ人はホロコーストの犠牲者だったのに、今はガザ地区のパレスチナ人に対して虐殺を行っている。

ネタニアフ首相もハマスも、指導者が陣頭に立たない戦争なんて本当に馬鹿馬鹿しくて仕方ない!なんでお前らのために無関係な人間が死ななあかんねん!?

ぶっちゃけ、世界情勢に無関心の平和ボケも悪いことだと私は思っていない。

だが、巻き込まれてしまうなら話は別。巻き込まれてしまったら元も子もない。

そもそも、武器を製造するから使いたいなるねん!

親が子供にゲームをするなと叱っても、目の前にゲームがあったら、友達がゲームを持っていたら、子供はやりたくなるねん!と同じ。

目の前に人参をぶら下げたら、馬だって走りたくなるねん!ホンマかどうかは知らんけど…。

名だたる鉄鋼メーカーや企業よ、武器を製造するなよ!国も製造させるなよ!と言いたい。

かつて、政治家が、日本が外国に攻められたらどうする?とテレビの討論会で自衛隊を軍隊にするべきだと言っていたが、

だったら、お前が陣頭に立って戦ってくれ!と言いたくなった。

それよりも先ずは平和外交に努めろよ!外国の言いなりになるなよ!

かつて先進国が行った植民地政策に日本も便乗して真似し、結果、戦争が始まった。挙句の果ては原爆投下されて敗戦したやん。

また同じことの繰り返すんか!?

日本は、原発攻撃されたら終わりやねん。

やられる前にやり返すってか??

やられた者はいつか報復してくる。その繰り返し。イタチごっこや!

政治家より国民の方が平和外交しとるっちゅうねん!

って思うと、兵隊よ、武器を持つなよ、放棄してくれ!

と切に願いたくなる。

だが、目の前にあったら使いたいなる…。

これだと、悪循環は永久に終わらない。

色々想像と思考が働く素晴らしい作品でした。

そうそう、日本語字幕が松浦美奈さんたった!

言語はドイツ語だったので、英語翻訳からの日本語字幕だと推察しますが、まさか美奈さんだとは思わなかった!

途中、文字も台詞もないピアノを弾いているシーンで、字幕があった。まるでユダヤ人の教えのような。音楽には言葉はないが、メロディーには歌い継がれた歌詞がある、埋められたリンゴと同じように、ユダヤ人への哀歌かメッセージだと推察。

叢を間違いなくユダヤ人が連行されるシーンは、脱走して捕まったと推察。

説明がないから推察でしかないが、あの夜中の少女の行動の意味が分かると一つ一つの点が線になる。めちゃくちゃ良く出来てる!


悪は存在しない

2024-06-06 00:24:06 | 映画
体感時間、1時間もない。あっという間に終わり、そこで終わる!?的なラスト。

自然との共存と調和をテーマにした、とても現実味があり、リニア新幹線工事問題ともめちゃくちゃリンクしていた。

環境破壊という環境問題だけでなく経済を回すという意味でも社会問題を扱った作品だと思って観ていたら、

それだけに留まらず、未来の大人たち(今の子どもたちやこれから生まれてくる者たち)を憂う監督の警告にも感じた。

ほんと、現実的なストーリー展開だと思いきや、ラストのファンタジックな展開、いや、メタファーと解釈、は圧巻としか言いようがない。

そう、これはドキュメンタリー映画ではなくエンタメ要素がある映画作品であることを痛感させられるラストだった。

ということで、やっとこさ濱口竜介監督最新作を観てきました。

世界の映画祭や映画賞を席巻した「ドライブ・マイ・カー」の濱口監督の最新作なのに、なぜ大手のシネコンじゃなく、単館系、しかも単館系でも大きなテアトル系列ではない更に小さな単館系の映画館での上映であることに違和感しかありませんでしたが、

配給のことは全く分かりませんが、人を選ぶ作品であることには間違いないと思った。

あと、これは私の勝手な想像ですが、ま、どれも私の勝手な想像、というか、感じたことですが、単館系の映画館を盛り上げたいという意図を感じました。

なんせ、客層が全然違う。根っからの映画ファンが集ってる印象を受けた。

それはさておき、

作品としては、本当に、昨今のリニア新幹線着工問題とめちゃくちゃリンクしていて、めちゃくちゃリアリティーがあった。

私はてっきり、開通は間もないと思っていたので、まさか最近になって、前静岡県知事の発言だけなく、井戸水枯渇など急に問題が明るみになって驚いた。2030年開通も怪しくなっている。

リニア新幹線の問題は、まさに映画の中で住人が提起していることと何ら変わりはしない。

映画ではまだ着工すらしていないが、現実社会では、着工後に問題が発覚している。

映画では、グランピングの施設建設を巡って、生活排水が井戸水に混じり飲料水が汚染するのではないか問題が取り上げられている。舞台は長野県ではあるが、この長野県の川や地下水の水は愛知県や他県の生活用水になっているから、もはや長野県だけの問題ではないのではある。

関西なら琵琶湖の水と同じなのである。

水に限らず、観光客による山火事が起きるのではないか問題も提起されている。

生活用水を汚染させてまでグランピング施設を建てる必要性があるのか?都会からの客を呼んでまで経済を回す、潤す必要性があるのか?トンネルを掘るだけ掘って但し駅はなし、地元住民の経済はどうやって潤すの?と同じ。めちゃくちゃリアルな問題として描かれている。

なのに! 

もう片方では、ラストで明白になるが、鹿が作品の鍵を握る存在になっていて、

野生の鹿は人間を襲わない、絶対に。だが、仔を守るためなら親鹿は人を襲う。それを専門用語を使って言ってましたが聞き取れなかった…。

それがラストの伏線になっていた。

映画内では、主人公親子が住む土地では鹿狩りが行われている。彼らも、土地に住む住人もそこで生活しているわけだから排泄もすれば、生活排水も出す。

経済を回すためにグランピング施設を建てるのと何ら変わりはしない。見方によっては、住民の意見には矛盾が生じている。

そこを踏まえた上でのファンタジックなラストだと思うんですよ。

住民は、野生の鹿と同じ。この土地だから生活(生存)しているモノたちなのである。たとえ移住者であっても。

もはや、花ちゃんの失踪からのラストの展開は、濱口監督のメッセージとしか解釈できない。

あそこにリアリティーを求めたらただの理解不能作品になってしまう。え゙っ、そこで終わり???はぁ??!!ってなってしまう。

そういう意味でもエンタメ要素を感じて、私は凄く好き!

ま、濱口監督の意図はさっぱり分からんけどね…。

役者陣は、地元の方なのか素人ぽい演技が地元感が出ていて良かった。プロの役者さんだったらマジ天才!芸能事務所のマネージャー?役の方だけがプロっぽかった。あえて検索してないけど…。

あと、あんなに長回しを多用していたのに、体感時間がめちゃくちゃ短く感じた。「ドライブ〜」もしかり、これは濱口監督の映像マジックやね。マジ凄い!

この作品、確かに、人を選ぶ。いや、映画館を選ぶ(シネコンしか知らない人には先ず到達しない場所という意味)

だけども、多くの方が観るべき作品であることには間違いない。

タイトルの、悪は存在しない、

確かに見方によっては、鹿目線(自然目線)なら、本能であったり自然現象であったりと、悪は存在していないかもしれないが、

人間目線だと、間違いなく悪は存在している

と私は解釈した。

追記:

昨日、YouTubeでLiLiCoさんがオススメしていたスウェーデン映画の「幸せなひとりぼっち」を配信で観た。

精神が弱っていたのか、最初から泣きっぱなし。

めちゃくちゃ良かった!

出会いと別れは必然。

人生は死ぬまで学びと成長を繰り返し。

そう、人間は、お役目と課題があって生まれてくるんだよ。そう簡単には死なせてはくれない。

何気ない登場人物や猫やアイテムが作品を盛り上げる伏線になっていて、伏線の意味を凄く考えさせられた作品でもありました。

トム・ハンクスの「オットーという男」のオリジナル版とのことですが、

オリジナルであんなに泣いたら、リメイク版なんて観れるかな~って感じ。

超オススメ!!

追記2:
浦井氏で「天保十二年のシェイクスピア」再演決定!!

初演の大阪公演は中止になって観られなかったからな~。でも、DVDで拝見済…藁

今度は、初演で高橋一生君が演じた三世次!

おー、悪役か!?

めちゃくちゃ楽しみ!!