優柔不断な男の顛末…。上手く描けてるわー。
柴田先生版ドストエフスキーの「白痴」…。
チャーリーさんこと匠ひびきさんのクロードと代役公演のオサさん(春野寿美礼さん)のクロード2002年版以来の琥珀鑑賞。
大人のドラマやったー。
ちなつ様の公爵…、
良く言えば純粋無垢、悪く言えば優柔不断。
貴族のしきたり?慣わし?約束ごと?と本能の狭間で揺れ動く、いや、単純にまだまだ自我に目覚めていないなダメ男…、
めちゃくちゃ良かった!!
せやねんな、特に昭和生まれ男子は、社会のルールや風潮、親の躾に縛られて自由意思による自由選択ができなかったりするんよね。男は結婚して家庭を守るのが義務みたいに、あれはダメ、コレにしろ!みたいに育てられてるんよね。ま、女性もそうだけど。女性は結婚して子供をつくるのが義務みたいな…。今も変わらないか…。
そんな社会の束縛の中で運命の人にであったらどないしますか???
地位や名誉や華々しき未来の約束を放棄してまで、運命の人との人生を選ぶことが出来ますか??
本当に運命かどうかも分からない相手を選ぶことが出来ますか??
琥珀のクロードとシャロンとルネとフランソワーズの関係性は、「白痴」のムイシュキン公爵とナスターシャとロゴージン、そしてアグラーヤの関係性と同じ。
貴族とマヌカンの身分違いの恋愛、同じ貴族同士の恋愛、マヌカンとジゴロの似た境遇の二人の駆け落ちは、そんな簡単に説明できるありきたりな恋愛ものと違うねんな。
私に言わせれば、琥珀も白痴も、52 ヘルツのクジラたちの言葉を借りるなら、魂の番(つがい)との出会いやねんな。
クロードとシャロンの関係性、ムイシュキン公爵とナスターシャの関係性は、純粋無垢な者同士の一目惚れの恋愛関係ではなく、前世の契りのように、魂が求めあう関係性やねん。
こればっかりはどうしようもないねん。
現世のしがらみを捨てて魂が求める相手を選べるか?
そもそもそんな相手に出会ったことがありますか?ってことですよ。
政治家や芸能人の不倫スキャンダルとは訳がちゃうねん。
相手を強奪して、配偶者に慰謝料を払うくらいの覚悟で不倫しろよ!ってことですよ。あ、だから「イングリッシュ・ペイシェント」が好きなんやと今気付いた…。
別れる気はない、強奪する気がない不倫は、私に言わせれば、それはただの浮気。
中途半端に浮気するなら、お金払ってしろよ!とついつい思ってしまう。ま、セフレという関係性もあるからなんとも言えないが…。
それがクロードなんよ。
魂が求めている相手なのに、内輪のしがらみに捉われて、いざという時に決断出来へんねん。
シャロンの気持ちが今ならよく分かる!
あそこで無言は…、ないわ!
ホンマ、クロードはまだまだ坊やに過ぎない!
でも、クロードの気持ちも今なら分かる!
しょうがないねん、まだ自分のことが分かってないから。自我に目覚めてないから。自分のことが分からないのに、シャロンやフランソワーズの気持ちが分かるか?ってことですよ。
私も、偉そうに書いているけど、クロードと変わらん。ええ年したまだだガキですわ!
2002年に琥珀を見た時は、ぶっちゃけ面白い、良く出来た作品とは思わなかった。ましてや柴田先生版「白痴」だとも気付かなかった。
m(__)m
けども、
あれから私も年をとって経験と学びや気付きを得たことで、
琥珀の世界観が身に沁みてよく分かる。
今ならクロードの優柔不断さも理解できる。というか、同情する。
シャロンの喜びと絶望感も理解できる。
あ、トッププレお披露目の初日なのに、めちゃ琥珀を語ってしまった。
それくらい完成度が高かった証です。
ということで、
ちなつ様、じゅりちゃん、
トップコンビ就任とプレお披露目初日おめでとうございます!
開演アナウンスから客席大拍手!最後まで凄まじい拍手だった。それだけ皆、チナツ様のトップ就任を待ち望んでいた証ですね。
元々今日は、仕事だったのが勤務変更で休みとなり、「正三角関係」の当日券狙いで東京に行く予定にしていたのですが、有り難いことに知人から初日チケットを譲って貰えるということで、東京は諦めて初日を観てきたわけであります。
梅芸はチケットが取れなかったので、地方に飛ぶつもりでいましたが、必要なくなった。
っていうか、まさか初日を観ることが出来るなんて!!
知人様々。勤務変更様々です。
2002年の時は、チャーリーさん、オサさん、みどりさんには申し分ないですが、面白い作品とは思わなかった。そもそも、魂の番とか前世の契りという概念で演じてなかったと思う。こういう恋愛もあるかもね〜と思って演じていたと思う。偉そうに書いて申し分ありませんが…m(__)m
やはり、年を重ねることで見えてくる世界観もあるから、今の月組で観ることが出来たのは、偶然ではなく必然だったと思う。
少なくとも、劇団内部でチナツ様がトップに決まってからこの作品の上演も早々に決まっていたと思うけども、
それにしても、
やはり芝居の月組だけある!
どっぷりお芝居に浸からせてもらった!
チナツ様のクロードは、子供のように純粋すぎ!自己犠牲出来ない優柔不断さがめちゃくちゃ上手かった!
あのクロードなら、同性目線でも仕方ないと思う。基本、男は優柔不断やねん。優しい人間は特に。誰も傷つけたくない気持ちは、既に誰かを傷つけている。そのことすら分かっていないクロードなのである。
チナツ様のクロードは、学年的に熟年度が増してダンディー化しているはずなのに、優柔不断な青年にしか見えない!なのに決して若作り感がない!自然なクロード像だった。ムイシュキン公爵を見てる感覚にもなった。めちゃくちゃ「白痴」がちらついたよ。
じゅりちゃんのシャロンは、マジ完璧!
歌はアレでしたが、シャロン像は文句なし。
2002年に観た時は、シャロンって大人の女性で、クロードとは火遊び程度の関係だと思っていましたが、
じゅりちゃんのシャロンには、特にクロードとのシーンや会話で、純粋な乙女感が出ていたのがめちゃくちゃ良かった!
好きな男の子に会うと緊張して声が変わったり、無意識によそよそしくなるような少女のような純粋さが垣間見える表現だった。
以前なら、台詞でシャロンは純粋な女性と伝えることで、観客にそう思わせていた感が強かったが、じゅりちゃんのシャロンはクロードといる時の本当に純粋な乙女感が滲み出ていた。
今まで全くシャロンに共感したことなかったのに、じゅりちゃんのシャロンにはめちゃくちゃ共感した。
いざというときに、シャロンを選ばないクロードって…。マジいけてない!
ふと、「激情」のホセとカルメンが浮かんできて、運命の相手ならホセくらい貫けよ!と思った。
カルメンはシャロンみたいにピュアな純粋さではなく、腹黒い純粋さだから、ホセが身を滅ぼすのは不憫でならないが…。
ルイのマイティーも良かった。「白痴」のロゴージンの役割を担った役なので、シャロンと駆け落ちする流れや別れは納得。さすが、柴田先生!
たしかに似た者同士は惹かれ合うのはめちゃくちゃ分かるが、生い立ちなのか?過去世や魂の記憶なのか?で惹かれ具合が変わる。本能なのか理性なのかでも大いに異なる。
やはり、魂の番には誰にも太刀打ちできない。
なのに、クロードは!
個人的には、チナツ様のバウ初主演作「スターダム」で、今回と同じようにマイティーと主演2番手の関係で絡んでいたのが激萌え!
あの時は、チナツ様目当てではなく、別の生徒さんの生徒席だったから、今思えば運命の出会いですね。
だから、初日が観れたことがめちゃくちゃ嬉しい!!
ルイは、クロードよりも早く自我に気づく役なので、粗野で粗忽な性格かもしれないが、実は、人間としてめちゃくちゃカッコイイ役。クロードにもあれくらいの積極性があればね…。
フランソワーズのりりちゃんが、私の想像を裏切るくらいめちゃくちゃ良かった!
今までのりりちゃんは、前回のメアリー・スチュアート役もしかり、大人な役が多かったから、フランソワーズ役はりりちゃんではないような…と思っていたら!!
めちゃくちゃフランソワーズだった!
自然な少女?感、というか穢れを知らない乙女感が出ていて、それだけで月組イチオシ娘役になった。
クロードに対する一途感がめちゃくちゃ好感が持てた。
2002年の時は、演じたあすかちゃんには申し分ないですが、腹黒感が見えた。嫉妬に狂ってるイメージが強い。
りりちゃんのフランソワーズは、理性と嫉妬のせめぎ合いのさじ加減に共感した。クロードの気持ちも分かるけど自分の感情も抑えらない的な。
だけど、ちゃんと感情より理性が優ってる感が出ていたので、めちゃくちゃ上手いやん!?めちゃ共感できる!!と思ってしまった。
その他のキャストでは、ミッシェル役の礼華はる君の安定さ。ラストの捨て台詞的な一言に説得力があった。
やはり、さち花姐さんの圧倒的な存在感が素晴らしい!
お母さん的お姉さん的な役柄がピッタリだった。
前回の月組公演では休演されて観れなかったチナツ様と同期の凛城きらさんも、役柄は対照的ですが、同期のサポーター的な存在感があり観ていて微笑ましいかった。初舞台以来の共演って凄いね!数少ない同期だからチナツ様も嬉しいよね。
ショーは、レイコちゃんの時とは中盤以降がガラリと変わった印象。
私の大好きな戦闘モノミュージックシーンが健在でよかった。
あと、大地真央さんソングも健在で安心した。
チナツ様とじゅりちゃんのデュエダンがめちゃくちゃ微笑ましかった。
笑顔でじゅりちゃんを見つめるチナツ様。
じゅりちゃんは、チナツ様とトップコンビを組んで踊れることの幸せ感というより、チナツ様をお慕いしてます感が滲み出ていて、その表情を見てウルっときた。
二人で名作を作り出して欲しいと素直に思えたね。
マイティーはもうダンスがカッコよすぎ!
パレードを観て、そのまま月組の2番手になって欲しいと思ってしまったよ。
今日は初日ということで、初日挨拶だけでなくカーテンコールも多く、最後は大劇場みたいにチナツ様が袖から緞帳前に登場。
御当地紹介の時は、大阪府出身者が多く、羽を背負ったお三名さんが客席に見えるように動かれていたのが微笑ましかった。愛情たっぷり!
マイティーも大阪出身だから歓声が上がってた。みと組長さんも大阪出身だから、謙虚に自己紹介されてましたね。客席空間がとってもいい雰囲気だった。
カーテンコールの時は、普段なら回数的にスタンディングになるはずが誰も立たないから、立とうとされた方が座る有り様だったようで、チナツ様もガッカリされた様子。
私は2階席だったので、1階席の方が立ったら立とうと待ち構えてましたが、2階席も誰も立とうとはしなかった。
でも、次のカーテンコールでは、客席総立ちで緞帳が上がるのを待ち構えている状態でチナツ様や組子たちをお迎えして、チナツ様も安心された様子。
チナツ様が挨拶されている時の、マイティーとじゅりちゃんがウルウル眼でチナツ様を見つめていたのが印象的だった。
チナツ様のブレお披露目初日挨拶よりも、じゅりちゃんのウルウル眼にマジこっちもウルっときたね。
ちなじゅりコンビで「カサブランカ」再演切望します!!!
劇団様、宜しくお願いします!!!
追記:
久しぶりにオサさんの代役公演の琥珀をビデオで観ました。チャーリーさんのは見つからなかった…。
で、
月組全ツを観た時に、私が年をとったからクロードやシャロン、フランソワーズやルイに共感したのかな???と思っていましたが、
いやいやいやいやいや、
演出というか、見せ方が全く異なっていた。
花組の琥珀は、一言で言うなればスタイリッシュ。
ダンスの花組だけあってダンスに統一感があり美しい。
後々にトップや2番手になる方々が揃っているだけあってキャストが本当に華やか!
月組の時は、ぶっちゃけ、古臭さがあって違和感があった名曲たちが全く違和感なく聞けた。
花組版は、琥珀を上演するために選抜されたキャストであり演出だと思った。本当に、スタイリッシュという言葉しか出てこなかった。
はい、感想はそれだけです。
正直に書きます、
全ツを観た後なのに、台詞もシチュエーションも全く同じなのに、台詞が全く響いてこない。誰一人として登場人物に共感することがない。
明らかに、想像したり思考する間がない。感情移入する隙がないんだよ。それくらいテンポよく話が進み、ヴィジュアルが美しすぎて言葉を咀嚼する暇がない。
ぶっちゃけ、「琥珀色の雨にぬれて」というショーを観させられている感覚だった。
ダンスの統一感もさることながら、台詞の口調もめちゃくちゃThe宝塚調だった。誰もが同じ喋り方。コレ、CDで聴いたら区別できないかも。
今のタカラジェンヌは、台詞回しもナチュラルに近づけているのが分かるくらいの違いがあった。
全ツが良かったのは、私が年を取ったからじゃなくて、明らかに樫畑亜依子先生の演出力と月組生の芝居力だということが花組版を観て分かった。
改めて観た花組は、本当にスタイリッシュで華やかだった。が、残念ながら感想はそれだけしか思い浮かばなかった。
あ、だからといって退屈感はないよ。スター揃いだし、テンポよく話が進むし、スタイリッシュな演出だから、それはそれで目の保養になった。
全ツ版は、登場人物に普遍性がある。琥珀の世界だけに登場する人物ではなく、世の中にリアルに存在するであろう人物だった。これは大きな違いだったな。
これはマジ、全ツ組アッパレだよ!